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エッセー

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#セクシャルマイノリティ

レズという言葉

 この間、大学でカミングアウトをした。自己紹介ならぬ「他己紹介」をするという課題で、ペアになったクラスメイトに自分の作品を見せていく中で、自分の作品は、私のアイデンティティの中でも特に、ゲイである、女の子が好きであるというところに深く根ざした、プライベートなものが多かったから、説明しておいた方がわかりやすいかと考えた。最初はゲイという言葉を使わずにいた。なんと言えばいいかわからなかった。カタカナ語

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「レズビアンさん」

 私は、文筆家のまきむぅのファンだ。彼女を知ったきっかけは覚えていない。気がつけばメモを片手に本屋で「百合のリアル」を探していた。友達に誘われて、とある大学で行われた講演も聞きに行った。その講演中、私は大学の講義室でずっと泣いていた。髪の毛を毎日綺麗に結わいて登校する、眩しい女の子への初恋。「愛のかたまり」みたいな女の子を、容易に想像できた。堅苦しくなくフレンドリーにわかりやすい言葉で語られる彼女

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距離の近い女性二人を「姉妹」って注釈つけるのもう疲れた

 母が働いているクリニックの医師の話を聞いていた。母が倒れた時に家に来て対応してくれた女医さんである。「命の恩人」が、もうすぐクリニックをやめるそうだ。理由は、「パートナーが仕事の都合で東京を離れる、私もそれについていきたい」からだという。大きな病気から奇跡的な回復を遂げた母は、小馬鹿にしたように笑いながら言う。「って言うか、パートナーって言いかた、なんなのかしらね。普通に旦那さんって呼べばいいの

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こどものせかい

「きもいんだよ」「こいつオカマなんだぜ」「オカマ言葉言えよ」「触んな」

都内の駅のホーム。近くに私立の小学校があり、制服姿の小学生の甲高い声が響いていた。ホームドアがない上、線路までの距離も十分にあるとは言えない。混み合っている時に黄色い線の外側をやむなく歩く時、もしよろめいて落ちてしまったら、と慎重になる。急行に無視されるどころか、1本逃せば10分は次の電車が来ない。東京なのに単線で、車体も古

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