「競馬の歴史」を学ぶ ~平成・令和の牡馬3冠馬編 ~(№673.4)

【はじめに】
2020年の日本競馬では、史上8頭目となる「牡馬3冠馬」が誕生して話題となりました。今回の記事は、サラブレッドの名前を詳しく知らない方を対象に、馬名を覚える入り口としてピッタリな牡馬3冠馬を紹介していきます。

5.(1994年)ナリタブライアン

前回の記事では、昭和最後の3冠馬・シンボリルドルフまでご紹介しましたが、その後、昭和から平成に時代が移る中で、幾多の名馬達が競馬ブームを巻き起こしました。その時期に顕彰馬に選出されたのは、メジロラモーヌ、オグリキャップ、メジロマックイーン、トウカイテイオーの4頭です。

特に「トウカイテイオー」は、父・シンボリルドルフと並んで「親子で無敗2冠」を達成しましたが、直後に骨折をし、無敗での3冠を達成することは出来ませんでした。

トウカイテイオーが有馬記念で『奇跡の復活』を遂げた翌年(1994年)に、平成初となる3冠馬が誕生します。競馬人気が絶頂を迎えた1990年代唯一の3冠馬です。

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【 問題 】20/01/17「0.5択クイズ」 改作
南井克巳騎手を鞍上に1994年、史上5頭目となるクラシック三冠を達成し、『シャドーロールの怪物』と呼ばれたサラブレッドの名前は【 何 】?

異名として定着した「シャドーロールの怪物」のシャドーロールとは、写真にもある白い馬具です。
(デビュー当初、自分の影を恐れたので着用したら、成績が安定したとか)

《 3冠ハイライト 》
①皐月賞  3馬身半差 コースレコードで快勝5連勝
②ダービー 5馬身差  単勝1.2倍で堂々6連勝
③菊花賞  7馬身差  前哨戦2着惜敗から大圧勝

兄・ビワハヤヒデが、菊花賞前の天皇賞(秋)で屈腱炎を発症し引退した事を踏まえた、杉本清アナウンサーの『弟は大丈夫だ』というフレーズの連呼は、弟が後続馬を広げる直線のひとときをドラマチックなものにしました。

ナリタブライアンは、三冠達成の次走の「有馬記念」も(現)3歳馬にして制します。古馬になってからは、(マヤノトップガンとのマッチレースが語り草になっている5歳時が印象的な)阪神大賞典(GⅡ)を連覇しますが、GⅠを制することは出来ず、高松宮杯(1200m)での4着を最後に引退。

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種牡馬となった翌年(1998年)、7歳の若さでこの世を去りました。

6.(2005年)ディープインパクト

サンデーサイレンス産駒が中央競馬を席巻し、日本馬が徐々に世界とも互角に戦うようになった平成の時代。平成中期(平成17年)に3冠馬を達成し、社会現象ともなったのが、言わずと知れた「ディープインパクト」です。

デビューの「新馬戦」も、2戦目のオープン戦「若駒S」も、3戦目で僅差に詰められた「弥生賞」も。3冠獲得まで全レースにドラマがあります。

《 3冠ハイライト 》
①皐月賞
  パーフェクト、走っていると言うより飛んでいる感じ。
②ダービー 前年のキングカメハメハと並ぶダービーレコード(2分23秒3)
③菊花賞  7戦7勝、21年ぶり史上2頭目の「無敗での3冠馬」
【 問題 】19/10/11「秋華賞」
【 実況穴埋めクイズ 】です。
空欄に入る競走馬名は【 何 】でしょう。
馬場鉄志アナウンサー(2005年「菊花賞」)

「世界のホースマンよ見てくれ、これが日本近代競馬の結晶だ!
 【 何 】ー! ・・・三冠達成!」

『日本近代競馬の結晶』や『英雄』との異名に相応しいパーフェクトな成績で、7戦7勝、シンボリルドルフ以来21年ぶり、史上2頭目にして平成唯一「無敗での3冠馬」達成となりました。

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そして、無敗の3冠馬は、シンボリルドルフがそうだったように、「敗戦」の方が取り上げられることが多くなります。14戦12勝、敗戦は2度のみ。

8戦目:3歳時・有馬記念 ハーツクライの2着
12戦目:4歳時・凱旋門賞 3位入線 → 失格

両方、「ディープインパクトが負けたレース」として歴史に残っています。

ただし、古馬となっても、天皇賞(春)、宝塚記念、ジャパンC、有馬記念とGⅠを4勝するなど、『近代競馬の結晶』に相応しい成績を残し、馬名も広く知られた中で、2年あまりの現役生活を終えて引退します。

2007年の種牡馬入り時から、平成の馬産を席巻した父・サンデーサイレンスの後継者となることが期待されていましたが、毎年のように国内外のGⅠ馬を輩出し続け、その期待をも大きく上回る様な活躍を見せました。

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2019年7月、17歳で亡くなりましたが、産駒や孫たちは、令和になった現在も活躍を続けています。(2012年からはリーディングサイアー連続1位。)

7.(2011年)オルフェーヴル

ファンの多かった「ステイゴールド」産駒は、シルバーコレクターだった父と違い、次々、GⅠウイナーとなっていきます。
平成後期唯一、史上7頭目の3冠馬となったのが「オルフェーヴル」です。

「スプリングS」で重賞初勝利をあげるまで、新馬戦勝利後4連敗。2歳戦ラストでは10着と大敗を喫していた「オルフェーヴル」は、皐月賞こそ4番人気でしたが、それ以降は1番人気を守り続け、6連勝で三冠&有馬記念を制覇します。

《 3冠ハイライト 》
①皐月賞  東日本大震災の翌月、東京開催の皐月賞を制覇
②ダービー 台風の影響で不良馬場の中、堂々2冠
③菊花賞  直線突き放して最後流す余裕。レース後、騎手を振り落とす。

デビュー戦・勝利→4連敗→6連勝で「有馬記念」を制し、東日本大震災で沈んでいた2011年の中央競馬における「年度代表馬」に選出されます。

古馬になっての春緒戦「阪神大賞典」は“逸走”による大きなロスを招いて、2着と敗戦しますが、周囲の騎手も驚く「規格外の強さ」が印象的です。↓

「スタート再審査」に合格して出走に漕ぎ着けた天皇賞(春)は11着と大敗するも、初夏の宝塚記念で古馬になっての初勝利。

当初の予定どおり、秋は凱旋門賞に挑戦。前哨戦・フォア賞を制し、続く「凱旋門賞」では、一旦、突き抜けて先頭に立ち、日本馬初制覇の夢を見せてもらいましたが、ソレミアにクビ差の2着惜敗となりました。

そして翌月、牡・牝3冠馬対決の「ジャパンC」では、道中の有利・不利もありましたが、後輩牝馬3冠馬の「ジェンティルドンナ」とハナ差の接戦、2着と敗れます。

5歳になった「オルフェーヴル」は、国内に専念。大阪杯を優勝しますが、天皇賞(春)、宝塚記念を回避して、春1走のみで、秋・ヨーロッパ遠征に挑むこととなります。

4歳時と同様、前哨戦・フォア賞を制して挑んだ2度目の「凱旋門賞」は、昨年と同じ2着という結果ではあったものの、勝ち馬との着差は…5馬身。

【 問題 】18/10/06「スポーツ大賞」
3歳時にはクラシック三冠を達成し、
「凱旋門賞」で2年連続2着となった
日本馬の名前は【 何 】でしょう。

そもそも、並の日本の一流馬では1桁着順も難しいのが「凱旋門賞」です。特に2013年の同レースで、日本馬が2・4着に入ったために、誤解しがちですが、5着どころか10番手にも入れないことの方が多いレースなのです。

そんな「凱旋門賞」を優勝こそ出来なかったものの、2年連続2着という成績は歴史に残る快挙だと断言できるでしょう。

そして、引退レースとなる2013年の「有馬記念」。
3冠時と同じく「ウインバリアシオン」が2着に入る結果となりましたが、その着差は実に「8馬身」の大差が付く劇的な引退の花道となりました。

「21戦12勝(2着6回、3着1回、2桁着順2回)」という生涯成績ですが、「スプリングS」以降に限れば「16戦11勝2着4回」という安定感です。

菊花賞後や阪神大賞典などでの迷走などの破天荒なエピソードを持ちつつも、凱旋門賞2着2回、GⅠ6勝などの実績からも、その強さは明らかで、そのキャラクターが上記の両面から愛される3冠馬だったと言えましょう。

8.(2020年)コントレイル

平成時代にディープインパクトとその産駒が旋風を巻き起こしますが、令和に入って間もない2019年7月、ディープインパクトが亡くなります。
史上2頭目の「無敗での3冠馬」たる父亡き時代に、父を追うようにして、史上3頭目の「無敗での3冠馬」となったのが「コントレイル」です。

(※)ちなみに馬名は英語で「飛行機雲」を意味するんだそうです。こういうことを知るだけで、知らないよりも、少し愛着が湧いてきませんか?
【 問題 】20/06/06「携帯」
第87回(2020年)の「東京優駿(日本ダービー)」を制し、父・ディープインパクト以来15年ぶり史上7頭目となる“無敗での牡馬クラシック2冠”を達成したサラブレッドの名前は【 何 】でしょう。

1・2冠目が「無観客開催」だった「コントレイル」は、観客を迎えた3冠目の菊花賞で、3000mという長距離や、アリストテレス(ルメール騎乗)の猛追を凌ぎ切り、父・ディープインパクト以来、史上3頭目の「無敗の3冠馬」を達成しました。

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《 3冠ハイライト 》
①皐月賞  年明け初戦での制覇(皐月賞全体でも2頭目で3冠馬では初)
②ダービー 戦後初の無観客開催 トウカイテイオー以来の父子無敗2冠
③菊花賞  観客を迎えての無敗3冠 アリストテレスの猛追、3000m凌ぐ

トウカイテイオーの故障により、シンボリルドルフが果たせなかった父子、無敗での3冠馬という偉業を、時代を跨ぎ約30年ぶりに果たされた訳です。

( ここからの物語は後ほど )






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