【参加録】村上健志の俳句実況(月百句Vol.17)《自作句あり》
【はじめに】
この記事では、2021年10月9日に「フルーツポンチ村上の俳句の部屋」で、行われた俳句実況「月百句」の第17回放送に参加した記録を、私の添削句や自作句を交えてご紹介していきます。
0.オープニング
木曜日から2日後の俳句実況、気づけば残りは「25句」となり、『月百句』も4分の3が完成しました。土曜日ということで、深夜のラジオ放送があるため、1時間程度で打ち切る予定。出来れば5句目標という第17回です。
私のコメントで思い出された様ですが、前回(2021/10/07)の俳句実況の終わった直後に強い地震がありました。村上さんの所は特に被害はなかったそうですが、村上さんも仰る通り、「もし何かあれば、まずは身の安全を」というのが大事です。皆さんにお怪我がなくて、ひとまず一安心です。
1.席題「何かが終わった後の景」
1つ目の席題が、少し捻った感じで「何かが終わった後の景」というもの。このテーマを送ってくれた、高橋寅次さんが、
8:40 高橋寅次 林道の朽ちし廃バス額の花
これも何かが終わった景だと思うんです
と、村上さんが作ってプレバト!! で披露し、後に「教科書」にも掲載されることとなった俳句を例にご紹介してくれました。
コメント欄では早速、俳句のタネになりそうなものが満載で来てて、
「焚き火の後」「スポーツ選手の引退会見」「文化祭」「電子レンジで温め終わった」などと来る中で、村上さんの目に止まったのは、「パーティーが終わったあと」というコメント。確かに、お祭り事の終わった後の「落差」というのは、非常に複雑な心境になりますよね。
ただ正直言って、月の俳句のテーマとしては非常に難しいかと思いますww 拘って作ろうとするも、結果的に俳句の形にならず、停滞した所で見つけたのがこちらのコメントでした。
14:47 y r 写真撮った後に真顔になる瞬間、好きです
「記念撮影」を止めようかと言った瞬間のコメントに、一気に発想が膨らみます。ただ、撮影が昼間なので、季語をどうするか迷い、午前中の「月」の季語が無いか歳時記を繰りますが、結局は「昼の月」に着地をしてこちら。
【 1句目 】
『昼の月記念撮影後の真顔』 村上健志
中七から下五に掛けてが「句またがり」になって、独特のリズム感を生んでいます。詠んでいても楽しい句だと思いますねー
ただ、「記念撮影」よりも『大人数での撮影』であることが分かる言葉の方が映像としての迫力あるなー と思っていた所、皆さんも同様の意見だったようで、幾つか「記念撮影」に代わる単語も来ていました。
【 コメント欄の添削案 】
・『昼の月集合写真後の真顔』
・『昼の月クラス撮影後の真顔』
一番正確に描写できているのは「クラス撮影」かなと思いました。「記念撮影」だと、例えば七五三とかそういう撮影のシーンかも知れないという風に詠みが広くなりすぎちゃうかなって思いました。
こういう所に「具体性」を持たせる方が個人的には好きですねー でも確かに「真顔」になるなぁ、良い所を見つけてくるなぁ、と感心しましたww
《 Rx自作句① 》地震&すぎやまさん追悼句
私もコメント欄に幾つか投句しましたが、「終わる」ことへの寂しさだったり感情の揺らぎを、モノに託すというのは個人的には好きでしたねぇ。
①-1『地震やんで茶黒き街や星月夜』 Rx
一昨日の地震では幸い、大規模停電とはなりませんでしたが、大規模な地震ともなるとかなりの確率で「停電」が起きます。2011年の震災の時に、震源から離れた当地も半日は停電をし、その日の夜に見た「天の川」が強く印象に残っていました。
これに対して、コメントを良く寄せてくださっている方から、
12:14 みづちみわ
Rxさんの取り合わせなのに季語が動かない!すごい!上手い!
とお褒めの言葉を頂き、大変嬉しかったです。現代社会において「星月夜」という季語が「成立する環境」はかなり限られていると思うので、それを『季語が動かない』と表現してもらえるのは自信になりましたー。
< すぎやま忌・追悼句 >
①-2『全クリし響く『序曲』や降り月』 Rx
2句目は、先月末に亡くなった「すぎやまこういち」先生への追悼句です。
勝手に「すぎやま忌」などという『忌日の季語』も提案させてもらいましたが、すぎやまこういち氏の名前が無くても、全クリと『序曲』ならば何とか連想してもらえるかなと期待しての1句です。
ちなみに掲句の季語を「降り月」としたのは、すぎやまこういち先生の命日が「2021年9月30日(旧暦8月24日)」だったことを受けたものです。
【どこでも和歌】梶間和歌の和歌チャンネル Rxさん、沁みます。
と、梶間和歌さんにもお褒めの言葉を頂き嬉しかったです。
『序曲』は、本来「ゲームの最初」に流れる音楽ですが、ゲームクリアしてタイトルロゴに戻ってくると何かしらの達成感と虚無感にさいなまれます。これが席題に合うんじゃないかなと思った次第です。
2.席題「何かが始まる景」
1句目の席題を受けて、2つ目も連続する形のテーマ「何かが始まる景」。
コメント欄、流石でいらっしゃって、こんな漠然としたテーマなのに、非常に魅力的なアイディアが寄せられました。例えば、「鬼ごっこの前のじゃんけん」なんてのは、正直「月」と合うかは別にして、なかなか着想できないと思うので、テーマ様様だなって思いました。
言葉の遊びというのは「何かが始まる景」が分かりやすく描ける気がしますね。村上さんは、ここに着目して句を作りました。なるほど!
【 2句目 】
『しりとりのりからと仕切り月明り』 村上健志
『り』の韻を多用し過ぎな感は確かに無くはないですが、でも素敵な句だと思います。言葉遊びを兼ねた句と捉えれば季語も問題ないと思います。
31:32 たろりずむtarrorism 旅の車中のイメージもあります
というコメントに対し、『あっ、そうそうそう!』と村上さんも仰ってましたが、この句のオリジナリティは「仕切り」という動詞にあると思います。
子どもと捉えても良いですが、例えばデートとか長旅の道中とか、そういう場面設定で「大人」を中心としたしりとりの『仕切り役』が居る方が、情景としては作者の意図に近いんだと思いました。
《 Rx自作句② 》舞台のオーバーチュア
私の2句目は、ある単語が冒頭から出てきてそれに寄せた句を作りました。その単語というのが「オーバーチュア(overture)」です。
②『繊月のオーバーチュアやマンハッタン』 Rx
以前、NHK-FM・ミュージックラインという番組に、声優アーティストの「坂本真綾」さんが出演された際に、この『オーバーチュア』という単語を知りました。
序曲は、本来フランス語で開始を意味する ouverture の訳語で、オペラや劇付随音楽、古典組曲などの最初に演奏される音楽である。……前座の音楽という位置づけではなく、全体の開始にふさわしい規模と内容を持つのが一般的である。(by 日本語版ウィキペディア)
舞台などが始まる直前に流れる壮大な「音楽」ですよね。この音楽が流れて『いよいよだ!』という感情の高ぶりを、『繊月』という季語と取り合わせてみました。繊月は「新月」の次の日(旧暦2日)でして、「繊月のオーバーチュア」という詩心があるっぽい言葉を装ってみました。
着地は「ブロードウェイ」から「マンハッタン」としてみました。もちろん広く知られる「ブロードウェイ」は演劇の聖地でありますが、直接的過ぎるかなとも思い、(ニューヨーク市)マンハッタンとすることで、少し詠みを詠み手に委ねられるかなと思った次第です。
まあ多少、先程のドラクエの『序曲』に引っ張られてる感はありますがww
3.席題「途中の景」
2句目まででかなりの時間を要していたことに焦りを覚えた村上さん、3つ目は席題決めから苦労してしまい、結局これまでの流れから「途中の景」に決定。
ただ、俳句を描くにあたっては、かなりの割合で「何かしらの途中」を描写する作品が多いので、そこをテーマに意識するのは難しいですねーww
ただ、席題的に助かるのは、『◯◯中』とすれば、全て何かしらの状態が「途中」になる所でしょうか。これはある種の発明ですねww
そして、村上さんは『故障中』というコメント欄から発想を広げて、ここに目を付けて作句されました。
【 3句目 】
『月影やエアータオルに使用不可』 村上健志
コ口ナ禍の始めの頃から「使用不可」が続いている“エアータオル”ですが、何かの記事で「エアータオルが感染を拡大するのは極めて限定的」とかいう記事を見た覚えもあります。何が本当に「感染を拡大」しているのかは情報を精査していく必要があろうかと思いますね。
俳句的には、助詞「に」とあるので意味は伝わりますが、コメント欄にもあった通り「使用不可」に鉤括弧を付けた方が親切かなとは思いました。私は一瞥して分かったのですがねー
あと、個人的には俳句の一つの型である「や→は」の構文から、『張り紙』であることを理解した上で、敢えて、
【 Rx添削案 】
『月影やエアータオルは使用不可』
とする手もあるのかなー なんて思いました。一長一短ですね。
《 Rx自作句③ 》旅の途中
「途中」と聞き、アニソン好きとしては、『旅の途中』という清浦夏実さんの楽曲しか浮かびませんでしたww アニメ『狼と香辛料』の主題歌です。
楽曲の話は置いておいて、俳句に戻りますが、「終わりが始まり」であり、何かしらの「途中」である事は、『方丈記』や『おくのほそ道』などの古典でも取り上げられていることかも知れません。
そこで、音数的にめっちゃくだけた表現を取りましたが、私の言いたいことをこの俳句に託したいと思います。
③『月の宿に着くのも旅の途中かな』 Rx
旅の目的地である「旅館」に到着。しかし、目的地である所の旅館に入った瞬間にその旅館での宿泊が始まり、それらは正に「旅の真っ最中」である。
この難しい時間軸を、『月の宿』という季語に託しつつ、月の満ち欠けも描いてみましたが、如何でしょうか。どう詠んで頂いても結構ですww
4.席題「ピアノの鍵盤」
何とか1時間で4句目を作りたいと急ぐ村上さん。既に貰ってる「◯◯中」という中から、テーマと俳句を作ろうと試みます。
そんな中で、3つ目の席題を貰った直後にコメントから来ていた、「ピアノの鍵盤」という話題を思い出します。具体的にいうと、
41:26 エクセルギー田中
いままさにピアノの鍵盤が凹んでいきます的な
↓
村上「ああー、その細かいディティールは面白いよねー それそのまま行けんじゃない? 包丁に何かが沈んでいく的な。月との相性も良さそうだし」
と太鼓判を押した(新しいお方かな?)エクセルギー田中さんのコメントを拝借する形で、村上さん今日最後の句が出来上がりました。
【 4句目 】
『夕月日デモ演奏中のピアノ』 村上健志
ピアノだったりキーボードだったりに搭載されている「デモ演奏」。高級なヤツだと、音が鳴るだけでなく、ちゃんと鍵盤が沈んだりしますよね。
ピアノというもののデモ演奏に、無機質なはずのものに新しいものを感じるのは非常に面白みがありますね。この着眼点、村上さんも素晴らしいです。個人的に一点気になったのは、
「ゆうつきひ でもえんそうちゅうの ぴあの」(17音)
は確かに足して17音ではあるのですが、「5・9・3」という音数が、少し気になったので、下五の座りを良くしてみたくなりました。それがこちら、
【 Rx添削案 】
『夕月日デモ演奏中なるピアノ』
これだと、「ゆうつきひ でもえんそうちゅう なるぴあの」と指折り数えると「18音」で字余りとはなりますが、中八のリズム的にはあまり気にならないのと、着地の下五が5音と定型になるメリットはあるかなと思います。
そして皆さんからもう一点寄せられたのは、『デモ演奏』だと、人間が練習に弾いているのかもという詠みが生じる点です。言葉としては「自動演奏」の方が正しいんじゃないかのことでした。これは確かにそうですね。
《 Rx自作句④ 》
さて、今日最後となる私の句はこちらです。
④『月白や鍵盤戻りくる時間』 Rx
「時間」を俳句に詠み込むのが難しいと重々承知で作ってみました。敢えて体言止めにしてみましたが、果たして成功しているのかは微妙ですねww
【おわりに】
という訳で、今回は世の中の情勢も踏まえつつ。村上さんは4句、私は5句作らせてもらいました。皆さん、お気に入りの句はございましたか?
村上さんご本人の「月百句」の記事も合わせてお楽しみ下さいませ~
①-1『地震やんで茶黒き街や星月夜』
< すぎやま忌・追悼句 >
①-2『全クリし響く『序曲』や降り月』
②『繊月のオーバーチュアやマンハッタン』
③『月の宿に着くのも旅の途中かな』
④『月白や鍵盤戻りくる時間』