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「Billboard Japan Hot 100」2021年の年間チャートを2つに分けて振り返る

【はじめに】
この記事では、2021年12月10日に発表された「Billboard Japan Hot 100」の年間チャートを私(Rx)なりに振り返っていきたいと思います。

1.2021年の年間チャートの概要について

まず、私(Rx)の私見を述べる前に一般的な見方のおさらいから行きます。

Billboard Japan Hot 100は、Billboard JAPANによって発表される日本の音楽チャート。米国の週刊音楽雑誌『ビルボード』の刊行会社より独占ライセンスを得て阪神コンテンツリンクが集計しており、週単位で楽曲の総合チャートを公表している。……
楽曲の売上・配信数でランキングを作成するオリコンチャートとは異なり、多様な音楽の視聴スタイルを反映した複合チャートが特徴である。

チャート時代は2008年に正式に始まり、特に注目されるようになったのは、2017年頃から。2016年12月のチャート・リニューアルによって、その存在感が急速に増してきています。
各種報道でも、媒体によってはオリコンチャート以上に大きく取り上げられることも目立つようになってきていて、それが極まったのが、2020年の年間チャート。CD未発売で年間1位に輝いた『夜に駆ける』だったでしょう。

◎年間チャート1位:『ドライフラワー』/優里

1位が何だったか、音楽チャート好きならば、ニュースなどで目にしたのではないでしょうか。優里の歌う『ドライフラワー』です。

ただ、2位以下を大々的に報じる様子はあまり見かけませんでした。勿論、1位が最も大きく取り上げられるのは当然なのですが、やや2位以下の扱いが小さく感じたので、今回はもう少し下まで見ていきましょう。

△「年またぎ」のヒット曲の比重が高い

俗に、「新語・流行語大賞」は、上半期が不利で、選考間近の事柄が選ばれやすいと言われることがあります。一方、単純な数字の積み重ねでは、フラットな状態で……集計されるのが理想です。

しかし、目に見える形でロングヒットが増えてきた令和において、Billboard JAPANのチャート設計において、素人目でやや「△」を付けたくなるのが、「年またぎ」のヒット曲の比重の高さです。

もはや「52週」近く得点を計上できる楽曲も出てきている中、最初の週から得点を計上できる楽曲が実は有利なのかも知れません。即ち、「年またぎ」のヒット曲が、その年に発売された楽曲よりも強くなりかねないのでは? という観点です。

「総合カラオケチャート」ほどでないにせよ、年間チャートのラインナップが『ちょっと前』に感じられてしまうというのは、やはり、もったいないと感じました。そこで、今回はこういった分類の仕方で見ていきましょう。

「前年からのヒット曲」と「今年のヒット曲」

細かく分析するつもりはないですが、「肌感覚」に近いものにしたいという思いから、ざっくりこの2つに分類して見ていきたいと思います。


2.「前年からのヒット曲」で年間チャート

米Billboardや昔のオリコンのように、この12月の時期に発表されている年間チャートは、暦年からひと月ほど前倒しで集計期間が取られています。

しかし、素人目線でいえば、やはり「NHK紅白歌合戦」などを迎えた後の、暦年ベース(1月から)で判断したいというのが正直なところです。

それと同様にもう1点。厳密には前年の秋にリリースされた新人の楽曲などについて、「リリース年」でいえば前年になってしまうのですが、ヒットの時期からすれば、実際は翌年というギャップが出ることも往々にしてありますよね。今回はそこも加味して分類させてもらいました。

1位(総合2位):Dynamite/BTS

2020年8月21日にリリースされ、本家アメリカのHot 100で1位を獲得したことも日本で報道されたBTSの『Dynamite』が、「前年からのヒット曲」での年間1位となりました。

2位(総合3位):夜に駆ける/YOASOBI

配信限定シングルのリリースは2019年12月という『夜に駆ける』は、2020年に年間1位を獲得、『NHK紅白歌合戦』でテレビ初歌唱を果たしてから民放のテレビ番組への出演が増え、年を大きく跨いでのロングヒットです。

3位(総合4位):炎/LiSA

日本レコード大賞を受賞したLiSAの「炎」も、リリースは2020年10月。映画のヒットも含め、基本的に2020年のヒット曲と捉えたいところです。実際、年を超えてから(2021年)のチャートアクションは上の2曲に若干劣って、勢いも一段落したという印象が多少は否めません。

とここまでの3曲は総合でも2~4位にランクインしています。ですから、優里の「ドライフラワー」こそヒットしたものの、その他の楽曲は前年からの厚い壁を越えられなかったとも言える年間チャートの構成となっているのです。(“2021年”の年間チャートとして、些か気になるのがこの部分です)

4位(総合8位):群青/YOASOBI

2020年9月1日リリースではありますが、RIAJの認定時期などを見る限り、ヒット時期がちょうど狭間の辺りというのが率直な感想です。ただ、2020年からのヒット曲という分類に今回は便宜的にさせてもらいましょう。

5位(総合9位):虹/菅田将暉

映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌である菅田将暉の『虹』は、2020年11月にリリースされています。映画の公開も同月です。ただ前作までの大ヒット曲の流れを受け、リリース前から注目を集めていたことを考慮し今回はこちらにランクインさせました。YouTubeのPV1億回再生目前です。

6位(総合10位):廻廻奇譚/Eve

2020年秋クール『呪術廻戦』の主題歌。話題作ではあったものの、まさか、Billboard Japan Hot 100の総合チャート年間10位に入るとまでは想像していませんでした。こちらも、アニメでのオンエア時期よりもチャートでの反応は1クールほど遅れてきていた感じがしますので、こちらにランクイン。

7位(総合12位):Step and a step/NiziU

昨年、「Make you happy」でブレイクしたNiziUですが、昨年の12月に発売されたこの「Step and a step」が正式デビュー曲。「Make you happy」は、プレデビュー曲の位置づけでした。

Billboard Japan集計対象期間的には2021年のチャートの領域ですし、ヒット時期……というかプレデビュー曲が凄まじくて、この曲も年末にヒットが埋もれてしまった感がありました。発売時期を加味して「昨年から」に分類。

8位(総合14位):猫/DISH//

8位には“DISH//”の『猫』がランクイン。昨年よりもランクを上げました。

しかし、着目すべきは、この曲が『猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜』ではなく、オリジナルVer. の方だということです。日本レコード大賞で優秀作品賞を受賞し、今年、同チャンネル初の1億回再生を突破しましたが、Hot 100年間チャートでは総合35位でした。

9位(総合16位):紅蓮華/LiSA

平成から令和にかけてのヒット曲という点では、この『紅蓮華』も根強く、「猫」と同様、THE FIRST TAKEの動画は1億回再生を突破しました。

10位(総合17位):Stand by me, Stand by you./平井大

隔週でデジタルシングルリリースを続けていた平井大。2020年9月リリースのこの曲は、気づけばストリーミング1億回再生を記録し、Hot 100の総合17位となりました。

さらに、2年以上が経過している楽曲も、Top100にランクインしています。

  • 総合20位:Pretender/Official髭男dism

  • 総合38位:マリーゴールド/あいみょん

  • 総合47位:Lemon/米津玄師

  • 総合51位:115万キロのフィルム/Official髭男dism

  • 総合63位:点描の唄 feat.井上苑子/Mrs.GREEN APPLE

  • 総合68位:インフェルノ/Mrs.GREEN APPLE

  • 総合80位:青と夏/Mrs.GREEN APPLE

  • 総合83位:まちがいさがし/菅田将暉

  • 総合86位:高嶺の花子さん/back number


3.「今年のヒット曲」で年間チャート

ではここからは、本題ともいうべき「今年のヒット曲」で、年間チャートを再分類していこうと思います。あくまで主観な点はご了承ください。

1位(総合1位):ドライフラワー/優里

2020年に年間1位に輝いた『夜に駆ける』の“YOASOBI”(新星)が、順調にキャリアアップを続けた一方、それに続くと目されていた“優里”は、全てが順風満帆とは行かない下半期を迎えることとなりました。

販促の面でもフルMVを非公開にし、複数の動画に再生回数が分散してしまったことで、単独の動画では1億回に達していませんが、トータルでは今年最高(累計4億超)を記録しました。
リリースは2020年秋ではありますが、ヒットの主たる時期が2021年に入ってからと判断し、こちらに割り振らせてもらいました。

賛否両論ありますが、レコ大や紅白から選外となったことは、中長期的目線で見た時にプラスとは言い難いのではないかと感じる年の瀬でございます。

2位(総合5位):怪物/YOASOBI

「前年からのヒット曲」(夜に駆ける、群青)と合わせ、年間Top10に唯一3曲もランクインさせている“YOASOBI”の強さが今年も際立ちました。

アニメ『BEASTARS』2期オープニングテーマというタイアップがどこまで浸透したか分かりませんが、アニメとコラボしたPVは1.6億回再生に到達。
2021年冬クールの楽曲ということで、純粋な“2021年発表の楽曲”としては、最高位ということになります。(それが5位というのが構成面の疑問点)

3位(総合6位):Butter/BTS

2021年5月にリリースされた「Butter」は、米・Billboard Hot100で7週連続(通算10週)1位を獲得する大ヒットとなりました。

初速の半年を終わった段階で、チャート上は「Dynamite」とほぼ同等に感じますが、体感としては市井で聴く回数は劣る印象がありました。ここからが正念場という見方をしています。

4位(総合7位):うっせぇわ/Ado

「ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン入りを果たすなど、話題性では群を抜いていた感のある『うっせぇわ』。体感での最大瞬間風速には、今年トップだったように感じます。

ただし、チャート要素的に見ると、YouTubeの再生回数は2億回に届かず、セールス面も夏以降やや粘り強さを欠いた印象があります。(いわば、飽きられるのが他の曲よりも早かったか)その結果、総合7位という成績に。

ただ、この曲が真価を発揮するかは、むしろ今から十年以上経って、この曲を1桁の年齢で聴いていた子たちがクリエイター側に回った時にどうなるかでしょう。ひょっとすると、カバー回数などでは、2020年代のうちに、上位楽曲を打ち破るかも知れません。

5位(総合11位):勿忘/Awesome City Club

「Awesome City Club」というグループ名に、「勿忘わすれな」というタイトル。そして、話題の映画の「主題歌/挿入歌」ではなく「インスパイアソング」と位置づけられた楽曲。
しかし予想を上回る形で世間に浸透し、日本レコード大賞やNHK紅白歌合戦に堂々入ってきたことには正直驚かされました。(嬉しかったですがww)

「年間Top10圏外なのかー」というのが正直な感想です。繰り返しになりますが、“2021年”の年間チャートであるならば、「2.前年からのヒット曲」で示したロングヒット曲よりもTop10に名を連ねるに適役・適任ではないかなと思ってしまいました~

※ただ、ダウンロード、ストリーミング数などを冷静に見れば、Top10圏外は納得せざるをえない水準なのですがww

6位(総合13位):Cry Baby/Official髭男dism

ドラえもん映画主題歌「Universe」に続き、アニメ『東京リベンジャーズ』の主題歌となった「Cry Baby」。この挑戦チャレンジは見事だったと思います。

ちなみに、Hot Animeでは7週連続(通算14週)1位という爆発的なヒットを遂げ、アニメ同様、今年を代表する作品の一つとなりました。

7位(総合15位):Permission to Dance/BTS

エド・シーランが作曲に参加をした、少し懐かしさすら覚えるナンバーの「Permission to Dance」。米Billboardでは「Butter」のV8を止める形で首位を獲得しましたが、MVのYouTube再生数は年内に4億というところ。

今年の下半期の楽曲としては優れた成績ですが、こちらもロングヒットとなるかは現状、不透明な情勢です。

8位(総合18位):踊/Ado

「アド」が「おど」という新曲を出す時点でついていけない方も多く居そうな感じもしますがww そのウィットさも含めてマイペースを貫いた同氏。

つい先日(2021/12/13)、YouTubeのMVの再生回数が1億回を突破するなど「うっせぇわ」の後も手堅く再生回数を稼いでいる印象です。

9位(総合19位):きらり/藤井風

Honda『VEZEL』のCMソングとして書き下ろされた楽曲でありつつ、抑えめなメロと高音が心地よいサビ。このビート感を動画で満喫させる誘導が巧く行き、チャート的にはブレイクの総合19位にランクインしました。

10位(総合21位):Take a picture/NiziU

2ndシングル「Take a picture/Poppin' Shakin'」から今年春にリリースされた同曲。「Step and a step」の扱いに迷いましたが、いずれにしても、今年もプレデビューからの固定ファンをかなり繋いで2021年の本格的な活動に挑めている印象です。

  • 総合25位:魔法の絨毯/川崎鷹也(2018年)

  • 総合28位:水平線/back number(2020年)

などは、昨年から今年にかけてヒットしました。そして、その下では、

  • 総合29位:ツキミソウ/Novelbright

  • 総合36位:CITRUS/Da-iCE

  • 総合39位:YOKAZE/変態紳士クラブ

  • 総合43位:Bluma to Lunch/BLOOM VASE

  • 総合46位:napori/Vaundy

  • 総合57位:Mela!/緑黄色社会

  • 総合75位:snow jam/Rin音

  • 総合78位:恋人ごっこ/マカロニえんぴつ

  • 総合97位:Rocketeer/INI

  • 総合98位:第六感/Reol

  • 総合99位:グッバイ宣言/Chinozo

などがランクインしてきています。雑に選んでしまいましたが、どことなく新たな潮流を感じさせるラインナップ。それがHot 100の年間チャートに名を連ねていること自体は喜ばしいことです。

【おわりに】

ここまで、私の独断と偏見で「前年からのヒット曲」と「今年のヒット曲」に分類をして、それぞれの年間Top10を出してみましたが如何だったでしょうか。

実質的に2つのヒット要素の楽曲たちが1つのチャートに並んでしまっているから、ヒット曲の構造が掴みづらくなっているのではないか? と思い、今回の記事を書かせてもらいました。

ぜひ皆さん、リンクを貼ってある各種PVから、2021年のヒット曲をお楽しみください! ではまたっ!


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