【本紹介】NHK俳句 夏井いつき俳句道場

【はじめに】
この記事では、2018年9月20日に発売された夏井いつきの著作『NHK俳句 夏井いつきの季語道場』をご紹介していきます。

1.「季語の六角成分図」(対談:岸本葉子)

この本で主に紹介されている「季語の六角成分図」については、前回、私の記事でご紹介していますので、そちらをご覧ください。

この「季語の六角成分図」について、思いつくキッカケがあると語ります。

それが、『カラー図説日本大歳時記』(講談社)での飯田龍太さんの季語の解説が、他の方と違うことに気がついたところです。

夏井:他の方はその季語を辞書的に解説されているんですけど、飯田龍太さんは季語の現場に立ったときにどんなことを感じ取るかという「感覚」を書いていらっしゃる。例えば、「早春」は、
「……雲のたたずまいにはかすかな光をふくみ、水のひびきには明るいリズムを、そして飛翔する鳥影にもきらめくものをおぼえるころ」とあります。
岸本:目や耳で捉えたことが、解説に入っていますね。

この経験を踏まえつつ、前回もお話しした「忌日」から「連想力」の指標を追加。そうすることで、『龍天に登る』、『龍淵に潜む』、『雀蛤となる』などの五感に乏しい季語も網羅できるようになったと語ります。

2.「六角成分図」の作り方

ではどうやって「六角成分図」を作るのか、その作り方について組長は、

夏井:まずは、季語を見に行ってほしいですね。五感情報を体に入れておくことが大切です。……歳時記の例句などを参考にするのはずっとあとです。
岸本:ずっとあと?
夏井:ずっとあとですよ!(笑)。例句は季語の捉え方の確認に使ってくださいね。
岸本:季語の現場に立って自分の五感で受け止めるというわけですね。

動画でも話題になっていた「麦」(と「麦の秋」)についての話題が。

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岸本:みんなで季語の現場に行ってから情報を持ち寄ると精度が高い成分図ができますね。
夏井:六角成分図を句会でも利用して、みんなで季語の理解を深めるために活用してほしいですね。

3.六角成分図を作句に生かす

成分図をどう作句に生かすのか? という問いに対しては、

(1)へこんでいる所を補う

夏井:季語の成分にあることは季語に語ってもらいましょう。季語意外の部分には、季語の成分にない要素を入れることで一句の世界が立体的に広がってきます。例えば「麦の秋」の成分図は触覚のところがほとんどありません。
岸本:六角成分図の色の塗られていない、へこんでいるところを一句に詠み入れて補うといいということですね。

(2)出っ張っている要素をさらに強化する

夏井:二つ目の方法としては、成分図の出っ張っている要素をさらに強化する、という攻め方もあります。

(1)で示したものは、どちらかというと「二物衝撃」ですが、こちらは、季語の持っている要素を取り合わせによってシナジー的に高めたり、季語が元々持っている五感の要素を研ぎ澄ませることにより「一物仕立て」とすることを示しています。

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いずれにしても、「六角成分図」を作ることによって季語の持っている要素を特定・図示して、その前提を意識した上で発想を戦略的に広げる・攻めることが出来るようになりそうです。

4.立体的な「六角成分柱」!?

数学ではないですが、平面の図形(である「六角成分図」)を、立体空間上(「立体成分図」)に拡張してみましょう。

実はこの「立体成分図」が、季語が兼題となっているような場合に役立つのです!

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