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月またぎレビュー「5月→6月」

5月は映画をもっと見るつもりだったのですが、結局見れたのはこの2本くらいでした。「ハント・ザ・ワールド」を楽しみにしていましたが、公開は6月に。また、展覧会の入れ替わりが多かったように思います。後半にはいくつか新しい展示が始まっていて、夏休みに向けてそろそろ盛り上がりを見せている感じがあります。
6月は映画シリーズ「ハント・ザ・ワールド」のほか、山縣太一×大谷能生による舞台公演「海底で履く靴には紐が無い」、山本寛斎による「日本元気プロジェクト 2015「スーパーエネルギー!!」」、森美術館「MAMリサーチ001:グレイト・クレセント 1960年代のアートとアジテーション――日本、韓国、台湾」の関連イベント、などを予定しています!


【アート】
「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」
 @東京オペラシティ アートギャラリー
同時代的に見てきたものが多いので新たな発見は期待していなかったが、過去のコレクション展よりもその重要さが読み取れたように思う。改めてコレクションの質の高さに舌を巻く。これらを見せる常設の美術館は必要だ。国内だけでなく、海外からの需要も高そう。あと、購入金額は無理にしても、購入年とかわかるとおもしろいのだが。

「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50年の軌跡」 @原美術館
トゥオンブリーは企画展で断片的に見てはいたけれど、これだけまとまって作品が見られる機会は貴重。作品群で見ていると、視線を誘導するストロークを追うものの、どうしても視点が定まらない箇所がでてくる、というようなことに気づいたりする。グルーブと違和感がせめぎ合う「画面の緊張感」というのはこういうことなのだろう。
「紙の作品」といっても、けっして小品というわけではなく見応え十分。


【映画】
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」 監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ

いつこの叙述トリックは明らかになるのだろうというくらい、存在感あるカメラワークは圧巻。それは劇中劇の舞台上でも観客からカメラが見えていたに違いないと思うほど。告知文があおるテーマのシリアスさから離れても、エンターテイメント的な要素がすばらしい。

「ゼロの未来」 監督 テリー・ギリアム

待ちに待ったテリー・ギリアムの新作。プロットにことさら新しさは感じなかったが、いくつも登場する魅力的なガジェットをはじめ、端々にちりばめられた悪意のメタファーはさすが。それらが(作中ですら)現実ではなくメタファーとして置かれていた可能性が残る撮り方ではなかっただろうか。観客にフィクションとの距離を測らせない不気味な作品。

【テレビ】
「100分で名著 ソポクレス『オイディプス王』」
@Eテレ
読んでおきたい名著を25分×4週の100分で紹介してくれる番組。今年2月にたまたま『フランケンシュタイン』の回を見ていたら、全然別のところで聞いた話の理解の助けになることがあって、それ以来見ることにしている。
昨日から始まった6月期で取り上げられるのは『オイディプス王』。演劇の周辺にいると三回に一回は言及される名著なので、未読の人(←自分)は必見。第一回目は6/10(水)に再放送も。

「響けユーフォニアム」
ぼくにとって「吹奏楽部の〜」というのはさほど引きにはならなかったが、さすがの京アニクオリティで見させる。キャラクターの設定とマイクロスリップの導入が絶妙。そして5月最後の放送がなんといってもネ申回なのでみんな見ればいいと思う。


【ライブ・舞台】
サエボーグ 「HISSS」 @岡本太郎記念館
昨年(2014年)の岡本敏子賞受賞アーティストによる特別展が、岡本太郎の作品が見守る中開催されている。展示はもちろん、今回は「火ぐるみ」を着てのパフォーマンスを見に行ったのでこちらでご紹介。「火ぐるみ」は丸木夫妻の「原爆の図」に出てくるような姿で衝撃的。展示の火を吐く蛇も含めて、解釈の多様性に富んでいた。


【本】
ブックデザイン 2015

勝手に選書、第2弾。代官山蔦屋書店で開催中の「代官山BOOK DESIGN展」にあわせ、2014年に刊行された国内外の書籍の中からブックデザインが秀でたものを10冊選んだ。入手が難しいものもあるりますが、書店で見かけた際にはぜひ手にとってご覧ください!

『ユニコ』 手塚治虫
珍しい横書き右開き。というのも、もともと連載していたサンリオのコミック誌「リリカ」(1976〜1979)が、海外で英語版を出版すること計画していたため。さらに全ページカラーでコマ割りも斬新なのだ。このタイトルに限らず、これほど漫画の「コマ」に自覚的な漫画家は他にいないのではないだろうか。(伊藤剛『テヅカイズデッド』では、「ユニコ」ではないが手塚漫画のコマ割りについて分析されいてる)

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