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月またぎレビュー「4月→5月」

今回も【アート】は東京から離れたものが続きました。もちろん近くのものも行っているのですが、どうしても遠出のほうが印象が強くなります。【テレビ】は新クールで一番見るものが多い時期ですが、中でも傾向として印象に残ったものをまとめました。【本】は他にも読みたいのがたまっています、、、これから出るのも。。。スピードアップしたいところ。。。

【アート】
小泉明郎「捕われた声は静寂の夢を見る」 @アーツ前橋
作品、作家、出演者、鑑賞者などの「関係性」を扱うものの、その「持たなさ」「分からなさ」「繋がらなさ」を捉えた作品郡は、現在のアートシーンでも重要だ。小泉明朗のまとまった個展を見るこの機会に、前橋まで足を伸ばす価値はある。是非、駅前の温泉も予定に入れて。6月7日(日)まで。

PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 2015 @京都市美術館 他
今年京都で始まった芸術祭は、「観光アート」にポイントを置かずともその場所の文脈の読解を必要とする本格的な美術展だった。メインの展示場の京都市美術館はもちろん、ヘフナー・ザックスの作品がある河原町塩小路周辺(崇仁地区)は行くべし。そのすぐそば、元崇仁小学校でやっている特別連携プログラム「still moving」も見るべし。いずれも5月10日(日)まで。

**浅田彰さんのレビュー「パラパラソフィア——京都国際現代芸術祭2015の傍らで」も必読。

高松次郎「制作の軌跡」 @国立国際美術館
高松次郎の作品を年代を追いながら見ていく展覧会。展示内にほとんど解説がなかったが、国立東京近代美術館での高松次郎展の続編として見ると(高松次郎に関する予備知識があれば)、作品同士の繋がりや変遷に思考が向くような、よく練り上げられた展覧会だった。7月5日(日)まで。


【テレビ】
「マツコとマツコ」
阪大の石黒浩教授が手がけたマツコ・デラックスのアンドロイドが本人と共演。いかにもバラエティな構成だが、けっこうちゃんとした実験的な要素も入っていておもしろい。石黒教授(本人)も出演。マツコロイドの声はモノマネ芸人のホリが担当している。

「攻殻機動隊 ARISE」&S.O.C再放送
昨年までに劇場で公開された同名シリーズの、新たなシリーズ構成によるテレビ版。音楽はコーネリアスで、ヘッドホン視聴激推奨。さらにテレ玉ではS.O.Cの再放送も、これは教養なのでこの機会に必ず。夏に控えているARISE劇場版に向けて期待が高まる。

「プラスティックメモリーズ」
アンドロイドが普及した社会が直面する、モノとしての耐用年数をテーマとするアニメ。昨年メーカーメンテナンスが終了したアイボの実情と照らすとリアリティには欠けるが、アンドロイドやロボットを描くフィクションの蓄積の上で、人間との「心」の交流が描かれているかと思うと感慨深い。

**アンドロイドのいる社会というのが、そろそろ現実に想像できるようになってきたのだろう。上記3作品には、その反映がラインナップされているように思う。

「不便な便利屋」
ドラマの中でも比較的よく見ているテレ東の「ドラマ24」枠から。脚本家志望の青年(岡田将生)が、富良野に行く途中に行き倒れた「謎の」村から始まるこのドラマ。古畑任三郎「灰色の村」や映画「ディア・ドクター」(西川美和)などに通じる、村の共同体的な不気味な閉塞感がコミカルに描かれていておもしろい。話中で直接引用されてもいるが、宮沢賢治「注文の多い料理店」のようでもあり、今後の展開にも注目だ。


【音楽】
「雪風」スピッツ

前述のドラマ「不便な便利屋」のエンディングテーマ曲。やっぱりスピッツはいいなぁ、なんて曲だっけ?、と思ったら新曲だった。既聴感が尋常ではないが、これはもはや安定感といっていいのだろう。今のところ配信のみだということ。

「ジョンとポール」 ジョンとポール

ジョンとポール(広島)といえば「高丘親王航海記」が最高すぎるのは言うまでもないが、ふと検索したらこの4月に新作が出ていた。しかもタイトルがアーティスト名というなんというやる気!この動画ではじめて聞いたけど、なかなかいい感じ(「高丘〜」とは全然違うけど)。


【ライブ・舞台】
ローザス「ドラミング」 @東京芸術劇場
機械的(黄金比に基づいているようだ)に制御されるダンスと、プリミティブに立ち返るスティーブ・ライヒの楽曲とが併走。「ポストヒューマン」を身体の機械的な拡張と原始的な外在化という両義性から検討する試みとして読めるのではないか。(参考:ポストヒューマン)公演は終了してしまったが、DVD付きの書籍は出版されている。
また、同じくスティーブ・ライヒが音楽を手がける「FASE」も比較的容易にDVDで購入可能。舞台上とはまた違った、映像ならではの作品としておすすめ。


【本】
『アウトサイダー・アート入門』 椹木野衣
半分くらい読んでひとまずポイントが2点。著者が「アーリュ・ブリュット」ではなく「アウトサイダー・アート」という呼称にこだわるということ。前者には「生」「無垢」「純粋」などのニュアンスが強く残り福祉や教育と結びつけやすいのに対し、後者には「悪」「外道」「異端」という国家としては容認しがたい「負の痕跡」が色濃く残るのだという点。
次に「アウトサイダーたちの芸術は、一方では社会から忌み嫌われ、遠ざけられる傾向を持つものの、他方では良心の呵責からか、ひとえに「善きもの」「贖罪の営み」として無批判に誉めそやされ、周囲から妙な同情を買う傾向を持つ。」(同書 p138)という点。
どちらも芸術批評では、アウトサイダー・アートを見る時に限らず予め備えられるべき視点のことを言っているのではないだろうか。

『現代思想 2015年5月号 特集=精神病理の時代 -自閉症・うつ・普通精神病・・・』 
アスペルガー症候群、自閉症スペクトラムのことに関心がありこちらも併読中だったが、「精神科医はアートに熱心な関心を持つ傾向があるようである」(『アウトサイダー・アート』p136)という記述からも、「精神病理」の特集が同時期に刊行されたことに必然性を感じる。(日本の現代アートコレクターの草分け、精神科医の高橋龍太郎氏のコレクション展が現在東京オペラシティギャラリーで開催中である。)

『神罰 1.1』 田中圭一
漫画の神様の絵柄で下ネタギャグが展開される短編集。想像以上にひどかった(笑)絵柄の再現度の高さに胸がアツくなったかと思えば、下ネタで股間がアツ(ry

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