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「数分間のエールを」:MV制作に全力を注ぐ高校生の青春劇。何事も体当たりは必要ということを教えてくれる。

<あらすじ>
石川県の高校に通う男子高校生・朝屋彼方(声:花江夏樹)。日々、MVの制作に没頭していた彼はある夜、映像のモチーフを探して街を探索していたところ、雨の中でストリートライブをする女性と出会う。その歌声と、感情をぶつけながら歌い上げる姿に心を突き動かされた彼方はこの歌のMVを作りたい、と強く思うのだった……。翌日、彼方は教壇に立つ新任教師の姿を見て驚愕する。そこにいた織重夕((声:伊瀬茉莉也)は前夜、彼方の心を突き動かしたミュージシャンだった。モノづくりを始めてその楽しさを糧に次に進む彼方。そしてモノづくりを諦め、その苦しさから別の道に歩き出した夕。そんなふたりの作った作品は、それぞれに何をもたらすのだろうか……。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

MV(ミュージックビデオ)制作に青春をかける高校生の群像劇。アニメ映画というスタイルながら、3DCGソフトである「Blender」というフリーソフトをメインの制作で作られているという異色作品で、かつ作品の中の主人公・彼方のMV制作も「Blender」っぽいソフトで作られているという劇中とも連動している作品。形としては先日観た「バジーノイズ」(2024年)と同等にも(おじいちゃんな)僕には見えるのですが、あちらはあくまでDTMで音楽制作がメインなのに対し、本作は既存の歌にCGなり、手書きのペイントで絵を紡いでいくという動画制作がメインとなっているのかなという印象になっています。自分自身の制作熱にかける青春っぽい味と、大人への初恋っぽい感情、支えてくれるクラスメイトや同級生たちのまなざしと、すべてが甘酸っぱい青春劇になっています。

青春って昔からある言葉だと思うのですが、学生の本分である勉学以外で、部活・バイト・サークル・趣味に恋愛など、本分であるところ以外に目いっぱい時間を使えるのは学生なり、青春なりの特権だなと思います。まぁ、心意気は社会人になっても、家庭を持っても、高齢者になっても、いつでも青春ということを胸に秘めるのは大事なのですが、結局仕事なり、家庭なりに労力をかけないと生きていけないところがあるので、時間を無限に使ってもあとで取り返しがつくのが若いってことの優位さだと思います。僕も自分の学生時代を振り返っても、もちろん学校のテスト勉強なり、レポートなり、ゼミなり、研究・論文なりで幾度徹夜を繰り返した苦労はあったものの、それ苦労以上に、勉学以外のことで頭がいっぱいだったなと思います(笑)。社会人になって、なかなか若い世代にどうこう言える立場にはないですが、いつの時代の若者には自由に挑戦できる環境を作っていくことが、大人なり、お年寄りの責任なのかなと強く思います(笑)。

と、映画本編に戻ると、冒頭に書いたCGなり、音楽づくりに意欲的なところが予告編を観ても感じるのですが、映画本編を観ると、そうした作品作りの意欲的な部分が必ずしも作品の感動に繋がっていないのはちょっと残念だなと思います。もちろん、夕の感じるモノづくりの限界への想いだったり、それに対する彼方の全力に次へ次へと未来に突き進む姿が若者っぽかったり、その周りの友情なり、恋心なりが短い上映時間の中にもギュッとつまっていることは分かるのですが、なぜかちょっと心を掴まれるという部分にはいかずに表面をなぞっている感しかしなかったというのが、個人的な感想でした。でもでも、学生時代を生きた石川県の風景が背景に流れるエモい体験ではありましたけどね。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズなんばにて


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