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「その鼓動に耳をあてよ」:ERに勤める医師たちに焦点が当たったドキュメンタリー。医療最前線の苦悩が見えて面白い。

<あらすじ>
全国屈指の荷揚げ量を誇る名古屋港から北へ3km地点にある名古屋掖済会病院のER(救命救急センター)は、愛知県内随一となる年間1万台もの救急車を受け入れている。耳の中に虫がいると泣き叫ぶ子ども、脚に釘が刺さった大工職員、自死を図った人など様々な患者が、24時間365日運び込まれてくる。“断らない救急”をモットーに、身寄りのないお年寄りから生活困窮者まで、誰でも受け入れているのだ。医師は、「救急で何でも診るの“何でも”には、社会的な問題も含まれる」と語る。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックで、救急車は連日過去最多を更新する。他の病院に断られた患者が押し寄せ、みるみるベッドが埋まっていき……。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

医師というのは高給取りだというイメージがどうしてもある。いわずもなが、小さい頃から病院通いが多かった僕にとって、病院のお医者さんや看護師さんというのは親と同じくらいに(幸か不幸か)身近な存在な存在でした。そんな医師への見方が少し変わったのが大学の時。高専から某総合大学に編入したのですが、そこには県内では結構有名な医学部があり、同い年くらいのサークルの医学部の同級生(?)をみているとやっぱり結構賢そうな雰囲気をいつも醸し出してくる。もちろん、総合大学の医学部というのはたいていどこもそうだと思うのですが、他の学部に比べて、偏差値が1ケタくらい違うくらいの頭のいいやつが集まっていて、その中には親なり、兄弟なりもずっと医師みたいなサラブレットもいたりして、医学部は凄いなーというのが構内では常識みたいなところがありました。ただ、医学部自体は僕のいた学部とは違うキャンパスにあったので、実際に彼ら彼女らで普段の勉学なり、実習なりでどれだけ苦労していたのは知らず、勝手なイメージでしかないのかもしれないですが、患者として関わってきた医師とは少し違った目線となった1つのきっかけでもありました。

要するにお医者さんも人だということ。ここ数年は医療介護の分野で仕事をしていることもあって、医師が高給取りというイメージはまだ未だにあるものの、その高給に見合うくらい(もしくはそれ以上に激務だと)思うようになっています。大きな病院の勤務医だったら、研修医のターンを終われば一人前の医師としてチームに組み込まれ、もしかしたら24時間365日のクールに巻き込まれるかもしれないし、運よく独立したとしても、地方に行けば、その地域の医療圏を任されるわけで、仕事のペースは調整できるかもしれないけど結局大きな休みは取りにくくなる。結局、楽なのは東京みたいな大都会でどこか街中でひっそりとクリニックをやりながら、どこか大きな会社の産業医なりになるか、美容形成のような局所的にお金が動く分野を選ぶしかないのかなと思います。こうした限定的な高給取りというのは、医師に限らず、どの分野にもいると思っていて、そうした職につけるのはごく一部の限られた人しかいないっていうのが現実じゃないかなと思います。

だいぶ、映画からそれた話をしてしまいましたが(笑)、本作はドキュメンタリーで秀でた東海テレビが送る医療ドキュメンタリー。名古屋の掖済会病院というのは東海地方の医療業界を知る人はちょっと有名(僕も知ってた)なのですが、ここのER(緊急救命室)に働く医師・コメディカルと、そこに患者として集っていく人たちの姿を描いていきます。医療ドキュメンタリーはそれこそテレビでも定期的にやるところだと思いますが、本作でポイントになっているのは医師たち(特に、救命医という職業)にスポットが当たっていること。映画の中でもあるのですが、救命という分野はそれこそ24時間という激務とともに、内科・外科も含めた総合医的な知識が求められる。それでも、救命というところまでは手を付けるものの、実際の傷なり、病気なりの主軸はそれぞれの分野の専門医が手がけることになる。患者と向き合うのが医師であるはずなのに、こうした医師間でのコミュニケーションという部分が実は重要というところがちょっと大きめに描かれています。医師の世界は結構現場でも学識的な色合いが強い(これも医学の進歩では重要なのですが)ので、現場の患者をどれだけ救うのかも重要なのですが、それ以上にどれだけ論文を発表しているとか、学会や病院という閉じられたところで重要な位置づけを確保していくかというのが重視されるという不思議な業界だったりもするのです(これは病院だけど、大学っぽいですよね)。そこで緊急救命という最前線で苦悩する現場医、そしてこれから育っていく若き研修医たち、、こうした人たちによって、地域医療というところが支えられることを私たちは忘れてはいけないと思います。

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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