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「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」:人気チョコレート工場ができる前日譚。バートン版のブラックさを期待するとかなりガッカリする。。

<あらすじ>
発明の天才にしてチョコレートの魔術師、ウィリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)が夢見たのは、亡き母との約束を果たし、一流のチョコレート職人が集まる有名な町に、世界一のチョコレート店を開くこと。ところがその町は、チョコレート店の新規開店はご法度の、“夢見ることを禁じられた町”だった……。そんなある日、ウォンカのチョコレートを盗む小さな紳士・ウンパルンパ(ヒュー・グラント)を発見。そして、誰も想像できない物語が始まる……。

KINNOTEより

評価:★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

1964年にイギリスの小説家にして、児童文学家のロアルド・ダールが著した子ども向け児童小説「チョコレート工場の秘密」を原作とした作品。正確には、子どもたちにチョコレートを作り・配る謎の男ウィリー・ウォンカが、自身のチョコレートを大量生産する夢のチョコレート工場を作るまでの前日譚となっています。映画ファンとしては、2005年にティム・バートン監督&ジョニー・デップ主演で製作された「チャーリーとチョコレート工場」が有名で、主人公ウィリー・ウォンカの自己偏愛ぶりや、本作でもヒュー・グラント(彼は、最近やけにこうした役回りが多いが笑)が演じる、チョコレートにこだわる謎の妖精ウンパルンパのきも可愛さが話題となり、バートン作品でもかなり大ヒットになる作品となりました。本作を観る人の大半は、原作小説の前日譚というよりは、2005年の「チャーリーとチョコレート工場」の前日譚として観る人が多いと思いますが、その観点で観るとかなりがっかりな作品だと思います。。

いや、本作の良さをまず言っておくと、健全な児童向けファンタジー映画としてはかなり良い出来だと思います。2005年版映画ではデップが演じたウォンカの若き日を、本作では「君の名前で僕を呼んで」や「デューン 砂の惑星」で確実なキャリアを積んでいるティモシー・シャラメが上手く演じています。2005年映画と同じくミュージカル作品の体裁となっている本作で、シャラメの美形もさもなん、彼の歌声も驚くほどうまいので、ミュージカル部分でグイっとお話に惹きつけられるのはさすがだし、出てくるキャラクターは敵側になるモールの高級菓子店主たちや、ローワン・アトキンソン演じる教会の神父まで、一癖も二癖もあるのですが、みな愛らしく描かれるのは、さすが「パディントン」のポール・キング監督らしいハートフルな感じを醸し出してくれます。

ただ、このポール・キングの上手さの部分が、2005年映画のティム・バートン監督とは真逆なので、そこがファンにとってはとてももどかしいのです(笑)。映画「チャーリーとチョコレート工場」にハマった人は、子どもたちにチョコレートを上げるという幸せを届けるチョコレート職人であるウォンカではあるのですが、その行為とは真逆にどこか偏屈で、人を見下すような目線を持ち合わせるところが、バートン映画らしいブラックな内面をもつキャラクターにハマり、そこにウンパルンパなり、チョコレート工場の面白トラップ、はてまた奇抜なアイディアが盛り込まれるチョコレート製品に反映しているところにウケたと思うのです。それが本作では、だいぶブラックさが抜けて、普通なハートウォーミングな作品になってしまっている。もしかしたら、本作にも続編があって、そこでウォンカが偏屈になるような事件を描く予定があるかもですが、本作でブラックな部分って、ウォンカがつくるヘンテコチョコレートくらいかな。ウォンカがなぜチョコレートづくりがそもそも上手いのかもイマイチよく分からないし。。世界観はファンタジックでよいのですが、この方向を期待してなかったんだよな、、と思ってしまう作品でした。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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