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「ピアノ・レッスン」:マイケル・ナイマンの美しい曲に彩られた叙事詩。中身は結構セクシュアルな内容なんだけど、、

<あらすじ>
スコットランドからニュージーランドへ、エイダ(ホリー・ハンター)は入植者のスチュワート(サム・ニール)に嫁ぐために、娘フローラ(アンナ・パキン)と一台のピアノとともに旅立った。口がきけない彼女にとって、ピアノはいわば分身だった。だが、迎えにきたスチュアートはピアノは重すぎると浜辺に置き去りにする。スチュワートの友人で原住民のマオリ族に同化しているベインズ(ハーヴェイ・カイテル)は、彼に提案して自分の土地とピアノを交換してしまう。ベインズはエイダに、ピアノをレッスンしてくれれば返すと言う。レッスンは一回ごとに黒鍵を一つずつ。初めはベインズを嫌ったエイダだったが、レッスンを重ねるごとに気持ちが傾いていった。2人の秘密のレッスンを知ったスチュワートは、エイダにベインズと会うことを禁じる。彼女はピアノのキイにメッセージを書き、フローラにベインズへ届けるように託すのだが。。

KINENOTEより

評価:★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

「ある貴婦人の肖像」(1996年)や「イン・ザ・カット」(2003年)で知られる女流監督ジェーン・カンピオンが、ホリー・ハンターやサム・ニールなど90年代を代表する俳優陣と組んだ「ピアノ・レッスン」(1993年)が4Kリマスターでのリバイバル上映。94年のアカデミー賞監督賞も受賞している重厚感のある作品ですが、僕は本作を長年観たいと思って観れていなかった作品なんですよね。というのも、昔本作のサウンドトラックを結構よく聞いていて、マイケル・ナイマンの素晴らしい楽曲で心癒されることが多く、彼の代表作ともいえる本作のトラックも結構聞いていたのです。それでも肝心の映画本編は今回まで見たことはなかったのですが、結構描いていることは衝撃的でびっくりしたというのが第1感想でした。

本作の話は基本的には男女の三角関係を描いたもの。政略結婚なのか、ニュージーランドに入植してきたニール演じるスチュアートに嫁いできたハンター演じるエイダ。彼女は口がきけないという障害を抱えている中、彼女の唯一の心の癒しが幼き頃から使ってきたピアノ。当然、嫁入り道具としてもってきたものの、ピアノという楽器を何たるかを知らない粗野な男たちによって、打ちあがった海岸から動かしてもらえない。そこにスチュアートとともに現地民マオリ族を統率し、入植活動をしてきたベインズに、ピアノ自体も彼の土地と交換されてしまうという出来事が発生する。自宅に何とか持ち帰ったベインズは、ピアノを教えてもらうことで、1鍵ごとエイダに返却することを約束する。しかし、ベインズはエイダに対して、レッスン以上の感情をもっていた、、、という結構なドロドロメロドラマになっています。中世、特に大航海時代であろう時代描写も結構適格に描いていて、元貴族が掘っ立て小屋のような家に押し込まれながら、奴隷のマオリの人たちにも冷淡に扱われていく様も、ドロドロさに輪をかけた人間臭さを描いているなと思いました。

それでも印象的なシーンは結構あって、僕が特に好きなのは冒頭で波打ち際に打ち捨てられるピアノに、海岸で音を紡いでいくシーン。この映画、結構楽器愛好家にとっては、人間の思惑によって、ある意味ボロボロに扱われるピアノが観ていても痛々しいのですが、そのピアノから美しい響きが(人間のドロドロドラマを知らずに)ニュージーランドの自然に溶けていくのは、どんなシチュエーションでも音楽というのは(ある意味)普遍であることを感じてしまいます。逆に言うと、この音楽がないと結構痛さとか、蒸し暑さとか、暑苦しさがスクリーンからリアルに伝わってくるだけに、音楽に助けられる作品でもあるかなと思っちゃったりします(笑)

<鑑賞劇場>京都シネマにて


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