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「明日を綴る写真館」:ベテラン俳優・平泉成の初主演ドラマ。初主演なのだから、もっと彼の人間性に迫るべきでは、、

<あらすじ>
気鋭の若手カメラマン・太一(佐野晶哉)はさびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島(平泉成)の写真に惹かれ、華々しいキャリアを捨てて弟子入りを志願する。家族とすらコミュニケーションを避けてきた太一だったが、鮫島は訪れる客と丁寧に対話を重ね、カメラマンと被写体という関係を超えてまで深く関わっていく。太一はそんな鮫島の姿勢に驚きを隠せない。人々の心残りや後悔と向き合い奔走する鮫島に振り回される一方、太一は自分に足りないものに気付き始め、さらには鮫島とその家族にも目を背けてきたある思いがあることを知る。

KINENOTEより

評価:☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

映画・ドラマに出てくる俳優たちの中でも長年名脇役、名バイブレータと呼ばれる人たちは数多くいます。平泉成さんもそんな一人。あるときは刑事だったり、あるときは近所のおじさんだったり、彼氏彼女のお父さん(最近はおじいさんかな)だったり、、、と、それこそ映画だけでなく、TVドラマでも必ずスクリーンのどこかに登場している人というイメージが僕ら世代では強いと思います。そんな彼の実は初主演作品となる本作、、とはいいつつも、これは主演作なのかなーと観ていて思ってしまいました。

まず、この映画、話の流れはとりあえず単純です。若手カメラマンとして活躍してきた主人公・太一(そもそも主人公が別なだけに主演といえるのかというのもあるのですが)は、近年の作品でも高い評価を受けるものの、小さい頃に出会った心揺さぶる作品のような表現が未だにできないというもやもやした壁にぶつかっていた。そんな中、ひょんなことから訪れた写真館に飾られた作品に心奪われる。早速、写真館の館主である平泉成演じる鮫島に弟子入りを申し出るが、あっさりと断られるのだったが、、、という流れの、まぁよくある師弟もののお話として進んでいきます。ここから始まる各エピソードはまぁ想定の範囲内ではあるものの、一番ノレないのが、師であるべき鮫島に素晴らしい写真を生み出しているような師匠感がないこと。口少ないとか、家族を顧みずとか、、仕事に身をささげてきた働きマンエピソードはあるものの、それがよくあるようなお師匠感につながってないように思うんですよね(この辺り、昨年見た同じ師弟&父娘ものの「バカ塗りの娘」(2023年)を観ると違いが一目なんだけどなー)。もっと鮫島が作品作りと通じて、どれだけプロフェッショナルかを描くシーンがないと(川べりでシャッター切らせるだけじゃなく)、太一が尊敬するに値する人物には見えないのが結構作品にとっては致命傷になっていると思います。

なので、お話として絡んでくる佐藤浩市演じる遺影を撮ろうしている牧のエピソードだったり、過去の家族写真を探している女の子のエピソードもいいお話ではあるものの、鮫島の人生観を映す形になっていなく、ラストの結婚式エピソードも何だか作り手の自己満を見せつけられているようで非常に心地悪い。それよりも、ケーキ屋を成功させようとする父娘と協力していく太一の話が唯一、地に足がついていて、太一目線でじっくりと物語を積み上げたほうがまだ見られたかなと思います。全く同じキャスト陣・スタッフ陣で作られた「20歳のソウル」(2022年)が非常に良かっただけに、本作で感じる空虚感は残念ですし、平泉成さんも本作を最後の作品にせず、まだいろいろな作品でいぶし銀なところを魅せて欲しいなと思います。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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