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「バカ塗りの娘」:よくあるような伝統産業跡継ぎもののネアカっぽい雰囲気がないのが逆に良い!

<あらすじ>
津軽塗職人の父・清史郎(小林薫)と、スーパーで働きながら父の仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)の二人暮らしの青木家。母は、家族より仕事を優先し続けた清史郎に愛想を尽かせて出ていき、兄・ユウ(坂東龍汰)は家業を継がずに自由に生きる道を選んだ。美也子は津軽塗に興味を持ちながらも、継ぎたいと堂々と言うことができなかった。不器用な清史郎は津軽塗で生きていくことは簡単ではないと、美也子を突き放す。それでも周囲の反対を押し切る美也子の挑戦が、バラバラになった家族の気持ちを動かしていく……。

KINENOTEより

評価:★★★☆
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

漆塗り。木工品に料理などの汁物を入れるとき、水分をはじめ、酸やアルコールなどによる腐食を防ぐために、樹液を木工品の上に塗り固める作業。腐食だけではなく、漆を塗ることで耐久性や断熱性、強度なども増すので、器やお盆などの食器類だけではなく、道具箱や仏壇、建築物などにも漆が使われることもある、古くからの知恵が詰まった伝統産業ともなっています。また、単純に実用面だけではなく、本作に登場する津軽塗にもあるような文様を塗りの表面に工夫して施すことで、芸術品にも仕上がることは、漆塗りの魅力の一部です。この伝統的な技術は、実用性と美的要素を結びつけ、日本の工芸品や文化に欠かせないものとして長い歴史の中で根付いてきました。

こうした漆塗りの文化を継承している全国地方都市の1つ、青森県弘前市を中心に広まっている津軽塗を舞台にした本作。予告編を見る限りは、よくある衰退産業モノの父娘(おやこ)文化継承物語なのかなと思ってみてましたが、意外にそんなにネアカなお話ではなく、どちらかといえば根暗なタイプ(笑)の主人公が様々な周りの環境変化に流されながら、気づいたらずっとやっている父の手伝いを素直に、でも確実に未来に向けて発展させていくお話になっています。話の画一的な形にしていないところが新鮮味を感じるし、作品も引っ込み思案な主人公に合わせて地味に作られているところが逆に良き。いろいろな意味でグローバルなアートや文化の流れをも意識して、そこに向けても、日本のこうした伝統産業が発展していかないといけない危機感も逆に感じる作品になっています。

うん、地味なのがよいのです(笑)

<鑑賞劇場>アップリンク京都にて


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