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0から始めるショートフィルム制作② YFLおすすめの照明機材編

こんにちは。ショートフィルム制作チーム「Yellow Film Labo」(以下YFL)発起人の稲垣です。今回は「0から始めるショートフィルム制作」シリーズの2本目、YFLの使っている照明機材についてご紹介したいと思います。

↓前回記事「おすすめの映像撮影機材」


↓YFLとは…?という方向けの記事

映画撮影となると、まずカメラ!!と考えますが、実は絵のクオリティに1番の影響を与えるのは照明だったりします。そもそもカメラは光を捉える機材ですから、元の光が悪いと出てくる絵も悪くなってしまいますよね。

逆に言えば照明などがしっかりしていれば、iPhoneでもしっかりした絵が撮れるようになってきました。

流石に動画撮影用のカメラを使った方がより簡単に良い絵を作ることができますが、iPhoneが得意なシチュエーションでは積極的に使ってみるのも面白いかもしれません。

さて、話は少し逸れましたがここからは実際にYFLが使っている照明機材をご紹介したいと思います。こちらも前回同様レンタルという手段もあり、購入が必須な訳ではありません。しかし、照明技術は奥が深く、習得には何度もトライ&エラーをして経験を積んでいく必要があります。それを考えると、自宅でも照明の練習ができるように最低限の機材を購入しておくというのも良いかもしれません。
これからご紹介する機材は、安価で高クオリティなものが多いので是非ご参考にしていただければ幸いです。(また、今回よりアフィリエイトリンクを導入しました。こちらのリンクからご購入いただけますとYFLの活動資金になりますので泣いて喜びます。)

YFLはいつでも金欠。最新作も再撮影が発生して監督のよちおさんがてんやわんやしております。

YFL保有の照明機材

①照明

Aputure Amaran 300C RGB フルカラー LED

Aputure Amaran 200X(リンクは最新版の200X S)

Aputure Amaran 200d(リンクは最新版の200d S)

NANLITE FS-300B

NANLITE PavoTubeⅡ6C

NANLITE PavoTube II 30X(本当はこれに似た廉価製品なんですが、流石におすすめできず...安心のNANLITEを載せておきます)

Aputure AL-MC


②ライトスタンド


Manfrotto ライトスタンド アルミ ランカースタンド AC 1005BAC

NEEWER プロ ライトスタンド 190cm

(レンタル)
アベンジャー(AVENGER) センチュリースタンドキット A2033L+D200+D520


③モディファイヤー

Aputureミニライトドーム

GODOX リフレクター & バーンドア

SmallRig RA-L65 ランタン

UNPLUGGED STUDIO 43インチ トランスルーセントアンブレラ

AMBITFUL コニカルスヌート


④その他照明関連機材

NEEWER丸レフ板

Selens 楕円背景パネル 150 x 200cm(YFL通称デカレフ)

Selens ソフトディフューザー 120x180cm(YFL通称デカディフュ)

Aosnow レフ板 三角レフ

黒布

紗幕

YFL保有の照明機材はざっとこのようになっています。照明機材はとにかくかさばるので、ご自分のチームの状況に合わせて保有・レンタルを決めると良いと思います。

YFLも車を出せる人が照明の運搬を担当することが多いですが、照明機材を全て家に置くこともスペース的に難しいですし、レンタルもレンタルショップまで取りに行ったり返しにいったりする手間とコストがかかるので悩ましく思っています。但し、レンタルショップによっては自宅まで配達・回収してくれるサービスがあったりもするので、そういったものも上手く使えると良いかと思います。

↓YFLがよく利用するレンタルショップ


照明機材のおすすめポイント

ここからは、先ほどの機材をどのように使っているのかも含めて、おすすめポイントをご紹介していきたいと思います。

①照明 のおすすめ

まず動画という事で、照明は定常光を使う必要があります。近年はLEDライトの進化が目覚ましく、仕事でも十分につかえるクオリティのLEDが安価で手に入るようになりました。

その中でおすすめする照明としては、Aputure と NANLITEのLEDです。
この2社のLEDは安価、且つ光の質も高いです。光の質が高いという言葉については、ここでは「綺麗な色が出る」という意味で使っています。

これを「演色性が高い」といいますが、これを説明すると長くなってしまいますし、私自身詳しく正確に説明できる自信がありません。なのでとても丁寧に解説されている記事を以下に貼っておきます。

難しいですね。ですが、なんとなく数値が高いと良い色が出るんだなと理解できていれば良いと思います。そして、おすすめする2社のLEDはこの数値が十分に高く、自主制作は勿論、仕事にも使えるクオリティにあります。(但し、メーカーによって違いは少し出てしまうようで、可能であれば複数のライトを使う場合は同じメーカーで揃えた方が良いみたいです。私自身はそこまで気になったことはありませんが...)

更に2社ともBowensマウントを採用している点も嬉しいポイントです。
このマウントが一緒だと、リフレクターやソフトボックスなどのモディファイヤーが共用できるため、荷物的にもコスト的にも抑えることができます。また、この2社は非常に汎用性が高い形状のLEDライトも販売しており、そちらもおすすめです。

まず、NANLITEはPavoTubeというシリーズの棒状のチューブライトがあります。このライトは、バッテリー駆動ができ、フルカラーで使うことができます。棒状ということで、スタンドに固定する以外にも手で持ったり、カメラから見えない位置に仕込みで使ったり、実際にライト自体を映してプラクティカルライトとして使ったり、非常に使い勝手が良いです。(YFLでもとりあえず持っていこうという声が出るので毎現場に必ずあります)

公式さんが分かりやすい紹介動画を出されていたので、以下にリンクを貼っておきます。

AptureはAL-MCという小型のライトを販売しています。こちらもバッテリー駆動でフルカラー。更には磁石もついているため、仕込みライトとして非常に便利です。(ちなみに、PavoTubeも短い小型のチューブライト、PavoTubeⅡ 6Cにも磁石がついてます。これも便利。)
サイズも小さいためとりあえずカバンに入れとくと吉です。

この2社の200W~300WのLEDライトで大体の室内撮影のライティングは足りるかと思います。これで足りない場合(太陽光に負けない光を作る時や、大規模なライトセッティングを組む時など)はよりワット数の高いライトをレンタルするという形が良いと思います。ただ、そうなるとそれなりに予算も、撮影規模も大きくなり、我々のような小規模現場では難しくなってしまうため、自然光を活かしてライトセッティングを組み立てていくのが現実的かもしれません。

②ライトスタンド のおすすめ

嵩張って鬱陶しい機材ランキングで常に上位の存在、それがライトスタンドです(筆者個人的な見解)。

現場での運用だけを考えるのであれば、全てセンチュリーで固めてしまうのが間違いなく楽なのですが、これがいかんせん重くて大きくて運搬するのが非常に大変です。というわけで、運搬まで考えると Manfrotto ライトスタンド アルミ ランカースタンド ACシリーズが私はおすすめです。このスタンドは折りたたむとライトスタンド同士をくっつけることができるため、省スペースで運搬ができます。また、耐荷重もそれなりに高く、長さも出すことができます。



YFLでも安価なライトスタンドなどを使っているのですが、やはり華奢なため大型のライトなどを取付ける際には適しません。事故を起こすことが最もダメですので、メインライト用にしっかりとしたライトスタンドはやはり持っておく必要があると思います。
尚、以前センチュリースタンドの逆ネジがSNSで話題になっていました。照明機材は重いものが多く、落下すると非常に危険です。演者さんが怪我をするなどの事態を絶対起こさないためにも、機材の使い方はしっかりと確認しておきましょう。以下にセンチュリーの使い方をわかりやすく解説している方のYouTube動画を貼っておきます。


③モディファイヤー & ④その他照明関連機材

モディファイヤーとは、ライトの前などにとりつけて光の質感を変えるアクセサリーのことを言います。身近なものでは、アンブレラやソフトボックスなどが想像しやすいかと思います。

このモディファイヤーを使うと、直接光を透過光や反射光にして柔らかくできたり、点光源から面光源にすることで広範囲に柔らかい光を作れたりと、光をコントロールすることができるようになります。光をどのように作るかは非常に奥深く、とてもこの記事内では書ききれません(例のごとく筆者が正確に書ける自信もありません)が、照明を学びたい方はCineFrameさんのYouTubeチャンネルを見ることをおすすめします。

映像の照明について、体系的に分かりやすく説明されていらっしゃるので、特に最初の8本の動画「CINE FRAME BASICS」は全て見ると良いです。その後は、実践と学習を繰り返して地道にスキルアップしていくのが吉です。


また、本記事の最後に最近ガファー(照明技師のことです)として一皮むけた(本人談)YFLの渡辺くんに、「良い光の作り方」というテーマでインタビューした内容を掲載しますので、そちらもご参考いただければ幸いです。

さて、少し話は逸れましたが、その中でYFLおすすめの機材としては、やはり軽量で汎用性の高いものになります。筆者個人としてはアンブレラが持ち運びもしやすく普段使いにはおすすめですが、YFLの現場で最も活躍しているのは紗幕です。紗幕は軽量で持ち運びもしやすいですし、広げて使えば大きな面光源に、重ねて使えば柔らかい光に、など非常に汎用性が高いです。価格も安いのでチームで複数所有しておくとかなり便利かと思います。現場では背景紙スタンドにクリップでつけて使うことが多いです。

また、YFLでデカレフと呼んでいる、150×200cmのサイズの楕円背景パネルも非常に出番が多いです。

これはレフ板として使う他にも、光を切る用途にも使えます。撮影の現場では案外光を作るよりも、いかに余計な光をシャットアウトするかに苦労します。窓からの自然光や、照明の漏れなどをこのデカレフを使うと手軽に防ぐことができるため非常におすすめです。

同様に120x180cmのソフトディフューザー(YFL通称デカディフュ)も、太陽光を和らげたり、透過光を作ることが手軽にできるためおすすめです。

デカディフュ。デカいです。外ロケでの直射日光をやわらげたり、ライトの手前に置いたり、使い勝手が非常に良いです。

また、Aosnow の三角レフは持ち手がついてることに加え、持ち手部分にネジ穴もついているため、人手が足りない時にも固定して使えて便利です。ただ現在Amazonでは販売が止まっており、ときたま復活するようなんですが、そこが不明なのが難点です...

その他モディファイヤーや照明関連機材はあったら便利ですが必須ではないので、プロジェクトに合わせて使ったり使わなかったりという状況です。モディファイヤーも嵩張るものが多いため、持っていける荷物量、現場での効率を加味したうえで選定するのが良いと思います。

インタビュー 「良い光の作り方」

それでは最後に、YFLの渡辺くんに「良い光の作り方」というテーマでインタビューした内容を掲載します。照明を考える際に何から考えればいいのか、何に気を付ければいいのか、初心者のうちは指針が立てづらく悩みがちだと思います。このインタビューはそんな方に適した内容になっているかと思います。これから照明を頑張りたいという方の参考に少しでもなれば幸いです。

最近独立した渡辺くん。様々な現場に顔を出し、色んな技術を吸収して急成長しています。

ー ガファーとして一皮むけたとのことですが、どんな感覚を掴んだのですか?

これまで人物が綺麗に映るライティングをするという事は意識していたのですが、それに加えて、映像を見た人が気付かない自然なライティングができるようになったというのが掴んだ感覚です。
MV、映画、広告など映像の種類によって必要とされるライティングは違いますが、特に映画は臨場感を出すためにもこの自然なライティングというのが大切だと思います。環境に馴染む自然なライティングという前提のうえで、人物が綺麗に映り、撮影がしやすいセッティングを組めるようになってきたと感じます。

ー たしかに映画を見てる時に照明の存在を意識することはあまりないですよね。本当にそこにある自然な光の中で演技をしているように感じますが、そこが照明技師の腕の見せ所なのかもしれません。では、そうした照明を作る際に、まず最初に考えることはなんでしょうか?

どのような映像を作ろうとしているのか、企画の理解から始めます。映画であれば、どんなジャンルで、どのようなストーリー・シチュエーションがあるのかを監督と確認していきます。そうして企画を理解したうえでトンマナを決めていき、監督と映画全体のムードを共有するためにイメージボードを作ります。そこから照明の具体的なセッティングを考えていくという形ですね。

イメージボードを作ったり資料作成も丁寧な渡辺くん。頭の中の映像のイメージを共有することは案外難しいので、こうした資料の作成はとても大切です。

ー 最初に監督とイメージを共有するの大事ですよね。それではよりミクロな視点になりますが、具体的な照明セッティングをしていく中ではどのようなことを気を付けていますか?

柔らかい光と固い光を上手く混在させることを大切にしています。
天井バウンスなどで作る柔らかい光は全体に回っていくので、フラットな光となり肌を綺麗に見せたりすることができます。ですがその反面、こうした柔らかい光だけだとコントラストの低い眠たい絵になってしまいがちです。それに対して固い光は、光の方向性、質感が出ますし、発色も良くなります。柔らかい光でベースを作ったうえで、固い光で見せたい箇所にコントラストをつけて目立たせるといったように、この2つの種類の光をバランスよく使うと良い絵を作れると思います。
自然光だけでとても良い写真が撮れる時がありますが、それも太陽光の反射による柔らかい光と、直接光による固い光のバランスが良いためです。逆に言えば、自然光で撮影する場合は、こうした柔らかい光と固い光のバランスが良い場所を探すという視点を持つと良いロケーションを見つけやすいと思います。

窓からの直射光による固い光と、反射光による柔らかい光が混在しているシチュエーション

ー 柔らかい光と固い光のバランスというのは照明セッティングを考える際に役に立ちそうですね。より具体的に渡辺くんの直近の事例を解説してもらえますか?

YFLの事例ではないですが、NOTCH Episode2 "Perspective"の照明を担当しましたので、こちらの映画のシーンを解説します。

この映画はジャパニーズホラーで、シーンは「図書室で自習中に後ろから誰かに見られている」というところです。そのため、コントラストをつけたパキッとした感じよりは、じめっとした不気味さを感じるライティングを心がけました。

シーン① ※YouTubeからのスクリーンショットのため、クロップが発生して画角が少し異なっております。

撮影した時間帯は夜でライトを打たないと真っ暗という状況でしたので、まずは天井バウンスで全体の柔らかい光を作っています。そこから人物を見せるために本棚の裏に天井バウンスでライトを置いていますが、反射光でもまだ固かったため本棚の上にディフューザーを挟んで間接光にしてさらに柔らかくしています。その結果、全体に柔らかい光が回りつつも、人物の表情を見せることができています。

シーン②

次のシーンでは連続性を保つために、照明のセッティングは大きく変えていません。これは最初にお話しした自然なライティングに通じる考えですね。撮影効率もよくなるため、大きく変えずに済むセッティングにするというのも事前に検討しておくと良いポイントです。また、このシーンでは画面奥の扉の向こうにAL-MCを仕込み、壁を緑色に照らしています。AL-MCの光量でもこれぐらい十分に効かせることができますし、こうしたひと工夫でぐっと印象的な絵にすることができます。

ー なるほど。たしかに不気味な雰囲気が出ていますね。緑色の照明も不自然な感じはなくシーンに馴染んでいます。作品自体も拝見しましたが、日本ホラー独特なじめっとした怖さがあり、とても良い作品でした。それでは最後に、これから照明を頑張りたい方に向けてメッセージをお願いします!

紗幕はいいぞ!紗幕を買え!

ー ありがとうございました!

おわりに

照明機材編は以上です。照明は奥深くなかなか最初は上手くいかないと思いますが、こちらの記事が少しでも参考になれば幸いです。
次回の記事では音声収録機材とその他の機材をご紹介します。音声収録もなかなかに奥が深いですが、音が良いと映画のクオリティがグッと良くなるので、こちらも入門者の参考になれば嬉しいなと思っています。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう!




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