純銀ケリー【#忘れられない一本】
シャープペンシルを集め出してからしばらくした、2001年4月、青山にペンブティック「書斎館」がオープンすると聞き、早速訪れました。当時は筆記具専門店はあまりなく、カフェも併設されているので度々訪れるようになりました。現行品や限定品、ヴィンテージのシャープペンシルもあり、毎回店員さんに色々と見せて頂いていました。
その中で、オープン記念としてぺんてるのロングセラー商品「ケリー」の純銀バージョンが限定品として販売されていました。限定数は10本!そのため、お値段もとても高くなかなか購入に踏ん切りがつきませんでした。お店に訪れるたび本数を定員さんに聞いており、段々と減っていくに従い、ほしい気持ちが高まってきました。そして、最後の2本になった時、ちょうど30歳の誕生日を迎えたので、記念として購入しました。2003年の夏だったため、足かけ2年思い続けたことになります。
今考えると30歳が人生の節目だったと思います。誕生日の日に合わせ一人旅で南仏アルルを訪れ、自転車をレンタルし、ひまわり畑に向かい最高の時間を過ごした帰り道、自転車の自損事故(前輪の泥除けがタイヤに絡まり顎から石畳に落下)をして、海外で初めて救急車で運ばれました。最高と最悪の一日を経験し、この年になって初めて、この先の人生何があるかわからないなと実感しました。そういう思いから後悔しないようにと、このシャープペンシルの購入に踏み切りました。
購入時、限定番号が残っていたのが、確か”4”と”9”だったと思います。この番号だと悩む方も多いかもしれません。4は「死」を連想させ、9は「苦しむ」を連想される方もおられると思います。ここで私は9を選びました。その後の人生、嬉しいこともありましたが、苦しいこともいっぱい経験したと思います。このシャープペンシルのせいではないと思いますが、苦しいことが多かったかもしれません。
外箱の包み紙(限定番号:No.09)
限定番号が刻印されている
こんな人生の節目の時期に買ったこのシャープペンシルの芯の太さは0.5mmと、市販のケリーと同じ作りになっています。しかし、ボディや各部品は純銀または銀メッキが施されています。この純銀ケリーは、書斎館のオーナーとぺんてるが3年以上かけて金型から製造して、とても苦労されたとお聞きしました。そのため、内部までとても手の込んだ作りとなっています。ノックの感触も、少し重みがあって、重厚な感じがします。
筆記時の状態
分解したところ
先端チャックの部分
専用のケースも付いており、持ち運ぶこともできますが、なかなか持ち出すことは躊躇ってしまいます。今は購入した時と同じように箱に入れて保存しています。
専用ケース
外箱
このシャープペンシルを購入された方は、私の知っている人では他に3人いらっしゃいます。完売した後、欲しいという方が結構いたので、私が入っている萬年筆の会で一時期、このシャープペンシルを復刻できないかと案が挙がりました。しかし、書斎館のオーナーからこのシャープペンシルの商品開発のお話を聞き、ちょっと難しいことがわかり断念した経緯があります。そのため、ぺんてるさんの方で正規の限定品として復刻してくれないかな、という気持ちがあります。さらに願うなら、芯径が0.7mm、0.9mmか1.3mmの太芯で作っていただけないでしょうか?そんな願いを込めて、私の「#忘れられない一本」を紹介させて頂きました。
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