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創造に挑み、変革を導くグロービスが見据えるリーダーシップと聴く|聴き合う組織をつくる『YeLL』のnote

グロービスが誕生したのは、1992年。渋谷の貸し教室で開かれたマーケティング講座から、すべてが始まりました。「ヒト・カネ・チエ」の生態系を創り、社会に創造と変革を行なうとのビジョンを掲げ、人材育成・組織開発に取り組み続けています。グロービスはまさに、様々な企業の成長をサポートしてきた”組織開発のプロ”。業界を象徴する企業である同社が、オンライン1on1サービス「YeLL」を導入し、どのような可能性を感じているのか———株式会社グロービス 福田さんにお話を伺いました。

■プロフィール
株式会社グロービス
グロービス・コーポレート・ソリューション部門ディレクター
福田亮さん

慶応義塾大学経済学部卒業。コロンビア大学アドバンスド・マネジメント・プログラム(AMP)修了。総合化学会社での機能性素材の開発営業、クライアント企業との東南アジアにおける合弁事業の設立、新興企業の経営支援・人材育成に携わる会社設立・立ち上げに従事。
現在は法人研修部門ディレクターとして、組織経営革新に関わる、「ティール組織」「エンゲージメント」「ジョブ型人事制度」「コロナ後の新しいマネジメントスタイルの確立」など、昨今の多岐に渡るテーマを企業が実装していくために必要とされる経営層・マネジメント層の能力開発と実行を理論・自らの組織での実践経験を踏まえて支援している。

「being」を重視するマネジメントへの挑戦

———YeLLを導入したきっかけは何だったのでしょうか?

そもそも「YeLLでやってみようか」と考え始めたきっかけは、経験の浅いメンバーが増えてきたことでした。3年ほど前から採用を強化しているのですが、ベテランのメンバーとの間で「組織の在り方」「チーム内の認識」に少しギャップがあるような気がしていたんです。そこでまずは、組織内のエンゲージメントを可視化する『wevox』を導入しました。すると、上司・部下の関係性、特に「承認」に課題があることが見えてきたんです。

「チームによってマネジメントスタイルが違う」「上司が多様な意見を受け入れてくれない」。そんな声があると知り、私自身もどうすれば良いのか迷いが出てきました。そんな時に、エール株式会社の櫻井さんの講演会に偶然、参加したんですね。「doingよりもbeingを重視し、聴くことを大切にしている」という内容が、とても新鮮でした。「リーダーの人間的な部分を引き出すことで、組織はもっと良くなるのではないか」と感じたのを覚えています。

ただやはり「聴く価値」や「聴かれている側の変化」は、体験しないと実感できません。そこですぐに声をかけさせてもらいました。実は1on1自体は以前から行なっていて、「自分たちはできている。アクションにも結びつけられている」と思い込んでいたんです。ところが、エールが提供している1on1サービスはスタンスが違っていて、非常に興味を持ちました。

内側から起こる変化を待ち、可能性を信じる

———まずはどのような方々が体験されたのでしょうか?

リーダークラスに対して、優先的に導入しました。最初は「半日体験」として”聴く”を体験してもらい、さらに続けてみたいリーダーに希望者を募りました。最初の数回は、「話をするだけで、どんな意味があるんだろう?」と疑問に思ったリーダーもいたようです。結果、半数以上が「継続してYeLLをやってみたい」と希望しました。意外と自分は聴けていないと気づいたみたいでしたね。

「リーダーは完璧であるべき。しっかりしないと」と、当初は自己開示に強い抵抗を感じている方もいました。セッションを通じて自分の弱さをさらけ出すことに、どんな意味があるのか理解できず、怖いと感じていたのだと思います。

ただしばらくセッションを続けるうちに、ポジティブな反応が出てくるようになりました。「毎週30分、自分について話しているうちに頭の中が整理される」「仕事への認識や気持ちがリセットされる」との感想が寄せられ、驚きました。「部下とのやり取りに関する悩みをサポーターへ話しているうちに、自分の中で自然に答えが見つかり、整理できた」と報告を受けた時には、本当に「YeLLっていいなあ」と思いました。

導入した当初は、組織に対して劇的な変化があるだろうとは、正直考えていませんでした。それよりも「体験したリーダーの内面に変化が起こり、行動につながれば良いな」ぐらいの気持ちでした。

———リーダーの内的変化を信じて導入するのは、「人への投資」のように感じますね。

当社が大切にしている考え方に、「人は自ら変われる」という言葉があります。個人の自立性を尊重し、自ら考えて動く社員であってほしい。だからこそ、「本人にいかに気づきを与え、自ら変わっていけるか」を1人ひとりに問いたいと思っています。もちろん自分たちでも努力していましたが、やはり難しい部分もあるのが現実です。

例えば「上司と部下の関係が冷え込み、問題がありそうだ」との情報が、耳に入ってきたとします。するとどうしても「Aさんが悪い。Bさんのせいじゃない」「いやBさんが変わるべき」のような、個人のコミュニケーションスタイルを変えて解決する方向になってしまいがちです。組織として問題の本質を解決できずに、終わってしまうケースが多くなってしまいます。だからこそ、外部のプロにお任せすべきだと感じたんです。私自身にも、同じような失敗経験がありますから。

忙しいとなかなかじっくり、人と向き合う時間も取りにくいものです。人間ですから相性もありますし、1on1の相手がリーダーだと利害関係が発生して、本音を言いにくい場合も出てくるでしょう。外部人材を活用して組織がより良くなるなら、導入する価値は十分にあります。

リーダーが変われば、組織は大きく変わる

———実際に大きな変化があった方はいたのでしょうか?

具体的には、こんなコメントが寄せられています。

「これまで、感情よりも『ファクト・ロジック・行動』を重視する環境で育ってきました。言い訳や軟弱と思われる言葉や、「それで?」と返されるような話題について聴いてもらうこと自体、極めて珍しい経験でした。自分は聴いてもらうことに満たされていないんだな、と思いました。就職氷河期世代の日本社会で育った、私のような男性に共通することのように感じます」

こうした感想は非常に多かったです。リーダーたちは今回のYeLLを通して、「聴き合う組織」の大切さや、1on1の効用が語れるようになったはずです。日常のメンバーとのコミュニケーションの際に、聴くこと・質問することの大切さを今まで以上に意識できるようになったと話してくれたリーダーもいました。大きな収穫があったのではないでしょうか。

また「メンバーからのフィードバックを受ける機会を設けて欲しい」と相談をしてくれたリーダーもいました。私がファシリテーターになって対話会を開いたのですが、嬉しかったですね。セッション内で「部下に期待していない自分がいる。部下はどう思っているのだろう?」と話して得た気づきから、具体的な行動へと結びついた例でした。チーム内の関係性や認識について改めて話し合い、「このチームになれて良かった」とメンバー同士でコメントしあったそうです。

本来、リーダーは非常に仕事ができる人なんです。お客様へのこだわりもありますし、提供するソリューションにも大きなこだわりを持っています。そうした妥協できない姿勢は尊いものですが、誰もが同じレベルでパフォーマンスを発揮できるとは限りません。入社したばかりのメンバーならなおさらです。必ずしも、リーダーと同じになる必要はありませんよね。だからこそ、リーダーはどのように人と向き合っていけば良いのかを学ぶ必要があると感じています。

———時代の変化によって、リーダーに求められる要素も変わってきたのでしょうか?

そうですね。新型コロナウイルスの影響もあり、組織の在り方は急速に変わりつつあります。今や大手企業のほとんどはテレワークとなり、働き方の意味そのものを問い直す時代を迎えています。エールの篠田さんが以前、講演で紹介されていた『あなたの人生の意味』(デイヴィッド・ブルックス著)を思い出しますね。

「自分の利益を重視する”大きな私”」と「道徳的な価値観を重視する”小さな私”」という言葉が出てくるのですが、まさに今までは「大きな私」が台頭してきた時代でした。自分を大きく見せよう、成長しようという想いは大切な原動力ですし、グロービスも成長にこだわってきた会社です。ただ「大きな私」だけに目を向けてしまうと、他人の可能性を奪ってしまっているかもしれない。そんな時に「小さな自分」が謙虚な気持ちで、他者に手を差し伸べてバランスを取るのが、大切なのではないかなと。そのためには、信頼関係が重要なカギになってくると思うんです。

例えば「テレワークばかりだけど、上司はちゃんと見てくれているのかな?どう評価されているんだろう」と不安になる部下がいる。その一方で「部下はちゃんと仕事をしているのかな?さてどうやって評価しよう」と悩む上司がいる。ここに”信頼”という名の土壌があれば、組織は揺らがずにいられます。お互いを監視し、管理する必要もなく、気持ちよく働けるはずです。

今の時代に求められているのは、自己を開示し、メンバーと共に良い組織を作っていけるリーダーだと思います。「私ができます!」とメンバーが手をあげ、リーダーの役割をチーム内でシェアできるのが理想的です。そうした信頼関係を育てるためには、誰が何をしているのかが分かる透明性が重要になります。個々人が抱えている業務が見え、情報がオープンになっていれば、いつでも「手伝いますよ」と声がかけられます。そうしたきっかけを作れるかが、これからのリーダーに問われるのではないでしょうか。

聴き合える人、聴き合う組織が新しい時代を創る

———これからのエールに期待していることはありますか?

改めて思うのが、「聴くってあなどれないな」ということです。考えてみれば、お客様が抱えている課題を知り、提案をするためにはまず「聴く」ことから始まっています。まず聴かなければ、お客様へ刺さる提案もできません。良いソリューションや価値を生み出すには、どんな状況でも「聴く」ことが大切なんですよね。メンバーに対しても、それは同じです。聴くとは、知性があらわになる行為だと思います。知性が高くなければ相手の話をきちんと聴けず、新しいアイデアも生まれてこない気がします。

また、エールとはもっと積極的にコラボレーションしていきたいですね(笑)。人材育成や組織開発に貢献している当社ですが、会社経営が抱えている課題はそれだけではありません。1社だけでは実現できる内容に限界もあります。エールが持っているデータの可視化、サービスの強みやユニークさを掛け合わせて、新しい時代の組織づくりをカタチにしていきたいです。


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