読書メモ #16 『波打ち際の蛍』 島本理生
『すべて真夜中の恋人たち』を思い出させるような雰囲気で、ただ、読み終えたあとの気持ちとしてはこちらの方が安心した。
冒頭の相談室でのやり取りだけで蛍が好きになった。今の私にも必要な要素を持った男のひと。
2人の距離が縮まって私も蛍の内側を少しずつ知っていって、蛍が元恋人と普通に出掛けてしまう人だと知ってがっかりしたし、危なかっしい女の子がタイプだと知ってなんてつまらないんだとも思った。でもそれは私が蛍に持っていて欲しいと思っていた要素を、彼が持っていなかったに過ぎなくて、誰が悪いかと言うと私なのだ。本を読んで自分を責めるのは如何なものかという感じだけど、他人の欠けている(と感じる)部分を、自分自身の欠けている部分に鏡合わせするみたいに、したい。それができないから私は人間関係が、特に恋愛関係が下手なんだろうと思った。
元恋人に受けたDVに苦しむ彼女に過剰に感情移入したせいか(私にその経験はない)、おそらく初めて本で泣いた。
恋愛小説ではあるが、恋愛以外の要素とのバランスが私にはちょうどよかった。
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