読書メモ #6 『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成
父が図書館で借りてきたのがきっかけ。
予約が詰まっていたのもあり、2日間で読み終える必要があった。父からは就活の話だということだけ聞かされていて、「えー」とこぼすと、「まあ読んでみなよ」と。伝えすぎるとネタバレになる、と言わんばかりだった。
まず、設定が最高
最終面接に残った6人、グループディスカッションのルールが途中変更になる。舞台はずっとこのディスカッションを中心に回っているし、登場するのもこの6人以上に重要な人物は出てこない。比較的閉ざされた設定のなかでも読み進めたいと思わせてくれる作品だった。
基本的にはこのディスカッションの前後に軸がおかれているが、途中で何度も現在軸でのインタビューが挟まる。後日談が間に入ってくる構成はありがちかなとは思うけど、犯人が誰か考えるに当たってタイミングも順番も心地よいものだった。
サイコパスの描かれ方のリアルさもまた印象的だった。
九賀くんのインタビュー、最後のやり取りなんて二度見してしまった。封筒の中身が明かされた後でさえ、九賀くんは袴田くんなどと違って豹変することはなかったし、「なんだかんだ頼れる誠実な人」という印象だった。でもあの場面はほんと、怖すぎる。インタビューとはいえ、インタビュアーを明かすわけにはいかない構成だったので実際どのようなやり取りがされたのかは分からないが、あれには嶌さんも絶句したんじゃないかな。
犯人がわかるまでの二転三転、最初のうちはその度に驚き楽しんでいたが、後半は私には少しくどかった。物語の真ん中あたりで犯人が一旦決まったが、流石に違う人なんだろうなと勘ぐってしまったし、いざ真犯人が分かるところのピーク感が味わえなかった。山場がありすぎてどこで盛り上がればいいのか掴みきれずに終わってしまった感じ。
あと、伏線がわかりやすく顔を出していたのでいつ回収されるのかそわそわしながら読むことになったのも少し残念だった。
ただ、真犯人の動機が内定とは全くべつのところにあるというのはとても好きだ。もともと予想されていた動機とは違った、という展開はお決まりかもしれないが、就活が舞台なことやあの6人に別の顔があることをわざわざ明かしたことなどを踏まえると真犯人の動機は十分納得できるものだった。
もう一度最初から読んでも楽しめそう、結構ボリューミーだけど。
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