スープストックでは目と目が合ったら女子力バトルが始まる
Soup Stock Tokyoは見たこともないオシャレなメニューが並んでいるお店で、味が想像できない私はなんとなく敬遠していた。
でも当時勤めていたオフィス周囲の飲食店街は、とにかく量こそ正義! という感じでランチの時に困る。コメダコーヒー。量が多い。定食屋。量が多い。焼肉屋。量が多い。宅配弁当。量が多い。
なお、お弁当を作ってくるという発想はない。私が手作り弁当を持ってくるのは、好きな男性が職場にいるときだけである。無駄なコストはかけない。
で、最後にたどり着いたのがスープストックだった。スープストックは妥当な選択肢である。量が少ないのは正義だ。スープだけならそんなに高くもない。野菜も摂れる。
ただ、入りづらいのには閉口した。なんでだろう? 白っぽい内装の店内、客は若い女性が多い。落ち着いていて、オシャレ。そんなイメージなのに、ソワソワしてしまう。パソコンを広げてカレーを食べているビジネスマンなどを見つけると、ホッとして横に座る。
多分、ソワソワするのは、ここが「かわいい女の子」の居場所だからだ。女性として優れている人たち。良くも悪くも、女性として十分にコミュニケーションしてきた人たち。
私とは違う。私の周りにいるのは主にエンジニア気質の、言っちゃ悪いが、少しオタクっぽい男性達である。そういう人たちと、気合の入った戦闘態勢の女性たちとは全然方向性が違う。男性の中にいると、あまり競争しなくてすむ。彼らは女性に慣れていないが、私は男性に慣れている。結果としてだいたい私の方が強い。
でもこのスープストックという女性たちの砦のような場所に入ると、女性としてフィールドに立たないといけない。それなのに私の戦闘力は多く見積もって、5。戦闘力…たったの5か…ゴミめ…。
「服どこで買ってる〜?」この一言で勝負は決まるであろう。服をどこで買ってるかなど覚えておらぬ。なんとか年相応にオシャレに見えれば良く、ブランドに拘りが無いのである。バカにされないためには、まあ、ZARAとか言っとくか。
エステに行って、「化粧水どこの使ってますか〜?」これも答えられない。化粧水をつけるときはメガネを外しているのでパッケージも何も見えないからだ。確かに買ったのは私だが、保湿できれば何でもいいと思って買っているものを覚えている訳がない。お前はなんでエステに来た?
まあ、実際スープストックに集まる女性たちと目が合ったからといって、「女子力勝負よ!」オフィスレディのミエコがしょうぶを しかけてきた! ドゥッドゥッドゥッドゥッドゥ~♪ などとポケモンよろしく勝負が始まるわけもない。そんなの怖い。
あ、でも、そういえば昔、母がディオールのチークをよこしてきて、「これを化粧室で見せびらかすのよ」と言ってきたことがあった。多分女性の多い職場では本当に化粧室で女子力バトルが始まるのであろう。
でも、その女子力バトルで勝つと一体何が起きるのだろうか? だってどこのブランドのチークつけてるかって、人から見ても分からなくない? ワンチャン、リップとかなら、「あの発色、落ちづらさ、××の新色ね……!」と分かることはあると思う。でも、チークってさ……モゴモゴ。
話が逸れたが、とにかく、スープストックで食事するのは居心地が悪いと思いつつ、量的にはベストなので仕方なく行くという感じだった。
もっとこう…ないのかな? 陰キャ女子専用店みたいなブランディングの店。こっちは、薄暗い店内で適当に野菜が入ったサンドイッチ二切れぐらい出してくれればいいのである。スープでもいいけど。あ、それドトールだ。ドトールがいいじゃん。
そんな感じなので、昨今話題のスープストックで無料離乳食を提供するという試みについては、やってみたらいいんじゃないかと思う。ビジネス的には子供が離乳食を必要とする年齢のお母さんの絶対数は少ないだろうから、短期的に採算が取れるとも思えない。企業からの「お母さんの味方です」というメッセージ、新たなブランディング戦略だ。でもこのような戦略を取るということ自体、根底に利他的な姿勢が感じ取れ、好ましい。対応する店舗スタッフさんの負荷が上がりそうなのが心配だが、私は基本的にその挑戦を支持する。
とはいえ、他のお店だと入りづらいという女性にとって、たしかにスープストックは憩いの場だったかもしれない。子供が居てうるさくなったら、憩いの場ではなくなる。他に行き場がない。その気持ちも分からなくはない。
まあでも果たして心配したほど居心地が悪くなるかは、ちょっと様子を見ても良いのではないか。お母さんと子供とかわいい女の子が一緒に食事を摂る場所というのも、なかなか平和的で思ったより良い環境である可能性もある。
もし本当に居心地の悪いお店になるなら、ビジネスチャンスと捉え、元のスープストックのようなコンセプトの新しいお店が代わりに出てくる可能性もある。気落ちするのも分かるが、気長に様子を見てはどうか。最後にはドトールもある。ドトールはコーヒーも美味しい、良い店である。
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