どうしても完結を見とどけたい作品
みなさんは、「アレが完結するまでは死ねない……!」という漫画、映画、小説、アニメ、ゲームなどなどのコンテンツはあるだろうか。何があっても完結まで見守りたいほど続巻が楽しみな作品だ。
私がこの質問をするに至ったきっかけは、先日ひいろさんが丁寧に感想を書いていらっしゃった映画、「メタモルフォーゼの縁側」である。
主演は芦田愛菜さん、宮本信子さんがつとめている。
アマプラで無料配信されていると教えていただいたので、私も見てみた。
ひいろさんがすでに素敵な紹介をされているので詳しくは書かないが、一言にまとめると、BL漫画をきっかけに友達になった女子高生とおばあさんが、一緒に春コミで本を出すまでのお話だ。
BL漫画がテーマの友情物語なんてあまり聞かない。珍しい。なおBLについてはこちらでも書いたので、もし興味があれば読んでいただけるとありがたい。
この映画に関しては派手な展開は無いけれど、丁寧な描写を重ねていく良さがあった。演技から登場人物の気持ちを想像するのが楽しい。
主人公うららの幼馴染、紡。紡は英莉という美少女と付き合っている。別にはっきり描写されるわけではないけれど、紡は潜在的にうららが好きだし、うららも紡が好きで、英莉はそれを分かっているからうららに引け目を感じてるんだなーという複雑な三角関係が見て取れて面白かった。
また、宮本信子さんの上品な演技が素晴らしい。うららからの連絡に、目に見えてウキウキし始める様子など可愛らしくてしょうがない。私もこんなおばあさんになりたいと思ってしまう。
縁側で雪さん(宮本信子さん)が過去を今に重ねるシーンでは、すっと視線を外に向けただけで、昔の自分を思いだしているんだなと分かるぐらい演技力が光っている。
映画に描かれている以上の深みを感じさせる描写から、おそらく原作があるのだろうと思った。探してみると、やっぱり、鶴谷 香央理さんの漫画を原作とした映画らしい。
少し読んでみて、漫画と比べると芦田プロが美少女過ぎるかなー、宮本さんが美老女すぎるかなーという感じもしたけれど、映画でしか出せない映像世界、日本家屋の美しさは良い。
ところで、「メタモルフォーゼ」というタイトルの意味はなんだろうか。
おそらくBLをきっかけに仲良くなった老女と少女の人生が、縁側を舞台に重なり、交錯するということ。もしくはうららという少女が、蝶がさなぎから変態するように変化していく、ということを示すのかもしれない。
作中で雪さんが推しBL漫画の巻末を見て刊行ペースを確認し、完結にあと5年はかかるであろうことから「あと5年は死ねないわ……!」と口にするシーンがある。急にうらやましくなった。
子供の頃は「あれが完結するまで死ねない」「あれを読んでから死ぬんだ」と思う作品がたくさんあったが、今はあまり、ない。
推しの小説家……モンゴメリやドストエフスキーはもう亡くなっており、私がいかに長生きしても永遠に続巻が出ることはない。大好きなハリーポッターシリーズも完結した。
強いて言うなら神坂一先生のスレイヤーズの第三部の新作が楽しみだが、もう数年出てないからな……。でも、神坂先生は心臓を悪くされるという未曽有の一大事があったので、もうお元気なだけで奇跡である。私の望みとしては、ただただ、私より長生きしてほしい、それに尽きる。
他に推しの作家はいない。
もしかして我が人生に一片の悔いなし? 未練ゼロ?
大人になるほど予測のつくことばかりになって、結果的に死ぬほど待ち遠しいということも無くなってしまった。だから価値観が日本人と異なる海外の小説やゲームの方が好きなのだが、それも限りがあるからなあ……。
皆さんには何か「これのために生きてる……!」というコンテンツがあることを願う。
とまあ、冒頭でも聞いてみたものの、もう皆さんの答えは分かっている。
そう。
私のエッセイだろう。
ここまでこのエッセイを読んでくれる皆さんにとっては、私のエッセイか日曜フリートークが生きがいに違いない。多分。きっと。うん。
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