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「アニメ」の語誌をちょっと補足

デイリーポータルZに広辞苑の第1版を読む記事が載っていて面白かった。

第1版は1955年刊行なのえ公害やスーパーマーケットがないとかいう内容だが,途中「アニメ」の呼び方に言及していた。

「動画」の語釈が「漫画映画の1コマ1コマの絵のこと」となっていたのに「漫画映画」の項目がなかったという。その中で,ネットで調べたこととして,アニメの呼ばれ方の歴史を次のように書いていた。

  • 1955年頃 漫画映画

  • 1960年〜 テレビ漫画

  • 1990年〜 アニメ

え,「アニメ」って僕が子供の頃の1980年代だって普通に呼んでいたと思ったけどなあ。でもたしかに夏休みとかに映画館でアニメをたくさん上映するのは「東映まんがまつり」だった。

そこでちゃちゃっとNDL Ngram Viewerで検索してみた。

単独だと「アニメ」に「アニメーション」が加わるので,助詞「の」を付けている。

読み取ると,戦前から「漫画映画」と呼ばれていたが,1960年頃から「アニメーション」の急増と交替が起こり,「漫画映画」が徐々に衰退,その一方で略語の「アニメ」が1970年代から伸びており,1980年に入り急激に上がった。

一方で「テレビ漫画」は1966年に伸びているかほとんどが一番下で,1960年代に呼ぶのがメジャーだったという感じではない。ただ,資料を雑誌に限定すると,1966年に「テレビ漫画」はトップに立っている。

ためしに1966年だけデジタルライブラリーで見てみたが,特に原因と呼べそうなものは見つからなかった。

掲載物のジャンルの偏りとかだろうか。ということで,朝日新聞を調べた。ただし本文は1985年以降なので縮約版(見出しとキーワード)を使っている。これで見ると,たしかに1960年代・70年代にかけて「テレビマンガ」が「漫画映画」を上回る。ちなみに表記は「テレビ/TV」「まんが/マンガ/漫画」の組み合わせを入れている。グラフは見やすくなるよう対数を使ったため0を1に変換している(全部1ずつ増やす手もあるか)。また,「アニメ」は「アニメーション」を除いた数である。

参考までに使われている記事をひとつお見せする。この記事には「TVマンガ」「アニメ」「アニメーション」の3つが出てくる。

ちなみにラジオ・テレビ欄を見ると,アニメの略称としても「まんが」が見られる。1977年生まれの私にはこれはまったく見覚えがない。

以上をまとめると,1950年代まで「漫画映画」が使われていて,それが「アニメ」に取って代わられた。ただし1960年代から70年代にかけて「テレビ漫画」も使われていた,といったあたりだろう。


余談。「漫画」の表記がイマイチ安定しておらず,「漫画」と「まんが」が交替しつつ「マンガ」も伸びていった感じがある。

この話は別の記事でも書いたのでよければご覧いただきたい。



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