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20代をコンサルで過ごして学んだプロフェッショナル・マインド

目的




今月で新卒入社で入ってから20代の間、やり続けてきた経営コンサルという仕事を辞めてベンチャーキャピタルに転職する。

現在担当しているプロジェクトの僕の役割もほぼ終わり、せっかく時間があるので、コンサルティングファームで学んだことを書きたいと思う。

この記事では、これからコンサルティングファームに就職/転職しようかなと考えている、もしくはすでに入社したがまだコンサルタントとしての働き方に慣れていない20代の学生/若手社会人をメイン読者として設定して記載する。コンサルティング業界で働くうえで個人的に私が大事だと思ったことをまとめ、コンサルタントとして働くうえでのイメージの具体化と、ヒントとなればいいなと思う。

またそれ以外の読者はこんなことを考えながら働いている人もいるのだなとか、ここはコンサルじゃなくても一緒だなということを思っていただければと思う。

なにを書くのか?




コンサルティングで学んだことの中でも、マインドについて書きたいと思う。

仕事=他者への価値提供=マインド×スキル×ナレッジ

仕事というのはまず上の右辺3変数が組み合わせることによって、自分以外の人に価値を提供することである。それぞれの変数であるマインド、スキル、ナレッジを高めることが、仕事で成果を上げるうえで必須だ。

コンサルティングの仕事に関しては、スキルが巷ではよく取り上げられている。問題解決やロジカルシンキング、パワポスキル、エクセルスキル、データ分析スキルなど、経営コンサルタントのスキルが注目され、書籍もたくさん出ている。

スキルというのは、言語化しやすく、また誰もが納得のいきやすいものであるためだろう。
しかしながら、僕が思うには経営コンサルとしてスキルと同等にマインドも重要だと思う。特に他業界から転職してきた新人コンサルタントの人はこのマインド面でも同じように苦労し辞めていく人を多く見てきた。
三菱商事出身だろうが、野村證券でNo1だった人だろうが多くの人が早くしてコンサルに転職したけれど、周りに付いていけず消えていった。
マインドは暗黙知となっていることが多く言語化することが難しい。
そこで20代を経営コンサルとして駆け抜けてきた自分が若手目線で、マインドについてできるだけ言語化するよう心掛け書いていくことに意味があると思いここに記そうと思う。
余裕があれば、またスキルについても記載したいと思うが世の中にコンサルが書いたスキル本は溢れているので、必要もないだろう。

最後にナレッジについてであるが、知識はもちろん重要であるが、他のマインドやスキルと比較して、仕事において知識の比重は低いと思う。
理由は2つあって、1つは情報化社会によって大抵の知識にアクセスしやすくなっていること。特に外資系コンサルなどにいるコンサルタントは簡単に世界中にビジネス事例などのナレッジに一瞬でアクセスすることが出来る。
2つ目に、マインドとスキルがあれば知識は自ずと上がっていくためである。マインドは他のスキルやナレッジのベースとなっており、特にナレッジはマインドとスキルが高く、業務を続けていけば自然と上がる変数であるため、ここで記載する比重としては低いと判断した。

次から私がコンサルタントとして学んだことを記載していきたいと思う。

なお、ここで言っている経営コンサルは外資系プロフェッショナルファームをメインとするコンサルティングファームで働くコンサル職の人のことを指している。
なにがコンサルなのかよくわからない自称コンサルタントもいっぱいいるので、それらとは念のため区別する意味合いで言及しておく。

コンサルティングファームで学んだこと①バリュー




僕は新卒で外資系のファームに入社したのだが、コンサルティングファームでは今までの人生で聞いたことのない単語がよくつかわれていた。

その一つが、

バリュー

だ。
この言葉は、プロフェッショナルとして働くコンサルは常に全員意識している。
そしてコンサルタントのマインドが非常に大きく表れた言葉だと思う。

バリューとは要するに価値のことだが、経営コンサルタントが普段この言葉を使うときの意味は次を意味している

"バリュー"=
"あなたがクライアントにもたらしている時間当たり価値"-
"クライアントがあなたに払っている時間当たりコスト"

つまり、クライアントがかけるコストに見合った分だけ働いてんのか?ということを聞いている。
これがもちろん0以下ではいないほうがいい。このバリューをどれだけ大きくできるかがコンサルという仕事の意味である

最近はパワハラにつながりかねないということであまりベテランコンサルが若手にこの単語を使うことも少なくなってきているらしい。
僕が新卒で入社した2016年あたりはまだよく使われていた。
「バリューないから、抜けてもらうか。あいつ」
「バリューあんの?この資料」
といった具合で使われる。基本的にはバリューが出ていることが基本なので、バリューが出るか心配のときにマイナスの意味合いで使われることが多かった。
かつてほどは会話の中で使われなくなってきてはいるものの、時間単位でお金を請求する外部プロフェッショナルとして現在もこの意識は大きく暗黙知として受け継がれ意識されている。
例えばコンサルティングファームでは、事業会社でありがちな必要かどうかわからない会議は起こりえない。
そんな会議を行ってしまっては即バリューが無い烙印、つまりコンサル失格とされてしまう。
会議の目的、ゴール、そのためのアジェンダ、決まったアクションということが明確になって利益がコストを上回っていることが前提としてなければ会議が生まれることはない。

コンサルが全員、常に意識しているこのバリューという言葉であるが、やはり暗黙知的な部分があり、意味合いが伝わりずらい。
そのため、僕の実例を元に記載したい。

一人のコンサルタントのバリューを上げるためには、時間当たり生産を上げるか、労働時間自体を上げるしかないが、若手コンサルタントは総じて時間当たりの生産を上げることと時間自体を上げることと組み合わせて自らのバリューを上げる必要がある。
経験不足のため、スタートの生産性が低いからだ。

以下のような場合はあなたなら、どうするだろうか。
僕がまだ1年目の23歳のころの実際のエピソードだ。自分事にして読んでみていただきたい。

18時、明日のIT担当者との打ち合わせに向けて会議資料を作成が完了したと思ったら、マネージャーが別の打ち合わせから帰ってきて、あなたに話しかける。

「明日9時からの打ち合わせで、Aの分析結果について知らせる必要が出たから、明日の朝までに終わらせておいて。」

内容としては、複数のフォルダに別れている資料から一つのデータベースに集約し、そこから複数軸で分析をかける必要がありそうだ。
明日の朝9時までということは15時間ある。
まずデータベースの構築のためにかかる時間だけで今までの経験上、手でやった場合15時間かかる。そうなると分析は間に合わない。分析についてはやったことのない分析のため6時間はかかると思われる。

合わせて21時間かかるから、普通に考えて仕事を一睡も取らずにできたとしても明日の15時が最短だ。
この時、どう答えるだろうか。
「そんな作業量出来ません。」
こう答えればプロ失格。コンサルタントではない。
即、バリューのない人間となってしまってコンサルタントとしては終わりに近づく。
3年目以降でこんなことを言ってしまえば終わりだろう。
上司の方が時間単価が高いので、できるだけ思考はこちらで整理してから、オプションを提示してリスクを判断してゴーサインをもらう。
「これまでの方法で作業をすると、明日15時までかかると予測されます。なので対応オプションとしては3つ考えられると思っています。まず1つ目に会議時間を明日の15時以降にできないか。2つ目に他のチームからリソースを借りることはできないか。3つ目としては作業について他の方法でできないか探り間に合うか1時間以内に報告し、可能であればそれを実行しようと思います。いかがでしょうか。」

「1、2点目は不可能。3点目で進めて30分以内に報告してください。難しければ私の方で対応を考えるから」

ここで本当にマネージャーに考えさせてしまっては、バリューのない人間になってしまう。
マネージャーの時間は私のコストと価格が違うので、その時間を使わせることはバリューのない人間としてプロ失格である。もちろん1年目でも関係ない。クライアントはプロとしてあなたの頭脳に、クライアント企業の社員の何倍もお金を払っているからだ。
また先輩が教えてくれると思っている人もたまに見たが、プロ失格である。
経営コンサルタントは一人のプロフェッショナルであり、誰かに教育してもらう存在ではない。自ら価値をクライアントに提供する存在である。教育は休日や教育を受ける期間をプロジェクト外で取り付け自分で主体的に行うものだ。
仕事中に誰かに教えてもらうのを待っているようなコンサルタントは、プロジェクトから外されて、実質クビになっているのを見てきた。

さてあなたならどうするか?
僕は自席に戻ると、同期何人かにチャットをして、このタスクについて知見を持っている最適な人を見つける。
「久しぶり!忙しいところ、ごめん。困っていて5分だけ意見を聞かせてもらえないか?」
同期が答える
「OKだ」

データ分析に詳しい同期が言うには、エクセルVBAとRを組み合わせればデータ分析基盤が出来て大量のデータ分析を実施できそうなことが分かった。
また、できる人がやれば2,3時間で完了できることも分かった。
しかしながら、僕はその時、プログラミングなどやったことがなかった。

さてどうするか?
プログラミングをやったことがないということで明日の朝までに完了できないと考えてしまうのもコンサル失格だ。
プロフェッショナルは結果にコミットして初めてバリューを生み出すことになる。
「ここまで考えましたが無理でした」ではバリューは0だ。

ここで上司に報告した。
「明日の朝までに完了見込みが立ちました。VBAとRを使ってデータ分析基盤を構築し、明日の朝までにプレゼンできる状態にします。リスクとしてはプログラミングをやったことがないので、時間的に間に合うかという点です。データアナリストであれば2,3時間で終わる作業なので、追い付くためのバッファとして14時間半あるのでやらせてください。」
上司が答える。
「わかった、とりあえずやってみてください。また報告してください。」

という感じですすんだ。
経営コンサルタントはリスク管理のプロでもある割に、意外と若手コンサルは無茶なことをさせてもらえる。
ベテランコンサルタントは修羅場を多くかいくぐってきているのでどこまでが本当にまずいのか、どこまではOKなのか見分けられるのだろう。
ここもコンサルとして上に上がっていくうえで重要なスキルだ。
若手としては、とにかくやってみるというスタンスである。
僕が3年目のころ、まだ英語も喋れない25歳とかで億円単位のグロバールプロジェクトのリーダーを任されるなど、コンサルは経験の有り無しに関わらず、とにかくできると見込みがある思われた場合はやらせてもらえる。

そして、できないとか考える前に行動しなければならない。
誰でもできることならクライアントが自身でやっているのだ。それをやってみせるのが経営コンサルタントでありプロフェッショナルのバリューでもある。

話を戻すが、この時はプログラミングの本を仕入れるために、VBAとRの本を本屋に小走りに買いに行った。
18時30分、VBAの本を2時間、Rの本を2時間半、合わせて4時間半で速読する。
「なるほど、だいたいのことは分かった。23時か。あと、10時間。」
グーグルで使えそうなコードを検索し、集めて、足りない部分を自分で考えてコーディングする。テストして修正して、5時間で終わって上司にメールで報告完了。
周りを見渡すと、同期が近くの椅子で寝ている。
「4時か、明日の会議まで俺も5時間も寝られるな。。。」

こういった感じで仕事が毎日進んでいった。
コンサルティングファームではない事業会社で教育を受けた人から見たら、「ブラック企業だ!」
「誰も教えてくれないのに、やったことのない仕事を押し付けるなんて厳しい!」
という声も上がりそうだが、全員がバリューを出すことがプロフェッショナルとして当然だという意識があるので、なにも当時は疑問に思わなかった。

しかしながら、事業会社から来た、優秀とされている元総合商社マンやガッツがあるといわれていた元証券マンはことごとく鬱になって消えていった。コンサルのマインド、バリューにコミットするプロフェッショナルマインドはなかなか他の業界とは違うものがあるからだろう。

この実体験の話からも分かる通り、バリューというマインドがあれば、プログラミング言語というナレッジやプログラミングスキルなどは自然と身についていく。

他にも多くの重要なマインドを学んだが、長くなってしまうのでここでは一旦
バリュー
というコンサルが使う単語を使って一つのマインドを説明させていただいた。

反応や、自分の時間を見て他のコンサルで学んだマインドについても書くかもしれない。

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