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フジロック開催は正解だったのか

コロナ禍と言われるようになって早1年半が経とうとしている。

現状に目を向けると、第5波と呼ばれる感染拡大の波が襲ってきており感染者数は増えるばかりだ。また、デルタ株と呼ばれる短時間で進化したウイルスも私たちの脅威となり多くの人を苦しめている。

8月30日現在、21の都道府県に緊急事態宣言が、12の県にまん延防止等重点措置が発令されている。

コロナ禍で迎えた2回目の夏。

毎年多くの夏フェスが全国各地で開催され多くの人を動員しているが、昨年から状況は一変してしまった。

密な空間に音を響かせ、人々がそれを共有することにライブの醍醐味がある。不特定多数の人が集まって密になり、汗なり飛沫なり飛んでいるのだから感染リスクは当然高くなる。

そんな中、フジロック開催を巡り賛否両論が巻き起こった。

今年の音楽フェス問題(と勝手に私は呼んでいる)は茨城県ひたちなか市で開催されるはずだった”ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2021”が記憶に新しい。

開催1ヶ月前に突然の中止報告。これは茨城県医師会等による中止要請から判断されたものだった。『1ヶ月前という、ほぼスキーム変更が困難なタイミングでの要請であった為』できることがほぼ無く、中止という判断に至った経過が総合プロデューサーである渋谷陽一のコメントとして発表された。

私はこの発表を聞いて、賢明な判断だと思った。これだけ感染拡大しているのだから仕方がないと。しかし、よくよく記事を読み考えると中止に追い込んだのはコロナだけではないと感じた。そこには人間の狡猾さが見え隠れしており、何だか無性に悔しくて、悲しくなった。

次々に発表される夏フェス中止。ライジングサン、モンバス、ラブシャなど多くの大型フェスが中止に追い込まれた。

そんな状況下において、フジロックは開催に舵を切った。

状況とすれば開催地である新潟県は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地点とはなっておらず、イベント等の制限はかけられていない。

フジロック主催側も感染防止対策ガイドラインを定め、万全の体制で準備している。

ガイドラインには消毒の徹底、検温実施、飲酒の禁止などさまざまな対策が記載されている。ライブならではの措置としては大声での歓声の禁止やモッシュ・ダイブの禁止など考えられる対策を徹底している印象だ。

しかし、感染防止をしっかりしていますよとアピールしても世間の意見はさまざまだった。

Twitterなど覗いてみると、音楽好きな方からは開催への喜びの声が、専門家や医療従事者(と思われる人)からは否定的な意見が見受けられた。

また地元である湯沢町でも開催の是非は意見が分かれていた。

湯沢町の町長は開催に際し、複雑な胸の内を語っていた。湯沢町は観光業で経済が回っている側面があり、フジロックやスキー客を向かいいれる経済効果は計り知れない。

町の未来を守るためにも開催に賭けた町長の想いはまさに断腸の思いであったに違いない。

また町民からは、宿泊業に携わる人からは肯定的な意見が、一般住民からは否定的な意見が多かった印象だ。高齢者が多い地域であることも憂慮した意見も見られた。

出演するミュージシャンも複雑な想いを抱いていたようだ。

開催直前になって出演辞退する参加者が何名か見られ、ギリギリのタイミングまで悩んだことが伺える。

確かに、自分が演奏したステージが感染源になってしまう、誰かの幸せを奪い辛い思いをさせてしまうと考えたら躊躇いの気持ちが湧くのは当然だ。

出演に関し、悩み、それでも参加表明したアーティストもたくさんいた。

一例としてSIRUPのコメントツイートを掲載したい。

音楽が生業だからこそ、カルチャーを守る。彼の強い信念が伝わってくるコメントだ。

また、私が敬愛するASIAN KUNG-FU GENERATIONのゴッチこと後藤正文も自身のnoteに複雑な思いを載せている。

彼は政権批判を頻繁に行なっているから、過去のツイートと今回のnoteを関連付けられ、かなりの批判を浴びた。

なぜ、純粋に音楽に向き合っている人間が、ひとりの市井に生きる人間が叩かれなければならないのかという怒りはいつか述べることにして今回は一旦置いておく。

このように出演者も悩んでいたのだ。出ることを決めた人も、やめた人も。

ここで私一個人としての意見を言わせてもらうと、フジロック開催には心から賛成できない。

これは私が地方の医療従事者の端くれとして思うところがあるからだ。

現状、デルタ株の蔓延により第5波が全国各地を襲っている状態であり、感染者数・重傷者数は右肩上がりだ。

現場レベルの話をすると、救急受け入れ先が発熱・咳などのキーワードだけで格段に見つからなくなる。病院では院前PCR。炎天下での完全防備での活動。体力、気力、精神的にどこの現場も疲弊している。

正直、昨年からのコロナ禍において今が一番怖い。誰が感染してもおかしくない状況。市中感染が相当進んでいるのだろう。

みなさんが思っている以上にコロナウイルスは身近にいる。感染者もたくさんいる。もしかしたらあなたの近所にも自宅療養者がいるかもしれない。

私は仕事中、N95と呼ばれる防護力の高いマスクを装着する。ある日、ゴムの締め付けを無意識にキツくする自分に気がついた。感染が怖いのだ。ほとんど体が無意識のうちにそうしていた。

医療現場は日々泣いている。そんな中で、感染爆発している関東圏から多くの人が流れ込むこのイベント開催はいかがなものか。

感染対策とのことだが、残念ながらウイルスを100%防ぐことはできない。参加者に抗原検査キットを配布したようだが残念ながら何の意味もない。そもそも検査の意味を理解していない、安心を煽るためのただのパフォーマンスだ。

ワクチン2回打ったし大丈夫という意見も見られた。何が大丈夫なのか。あなたは罹らないかもしれないが周りの人にうつす可能性は大いにあるのだ。

少し感情的になったがこれはあくまで私の意見だ。間違いがあるかもしれないのでご指摘があれば真摯に受け止めたい。

では、実際のフジロックはどうだったのか。

私は音楽ファンとしてYouTube配信を楽しんだ。さんざん否定的な意見を述べておきながら配信は見るのかというご意見はごもっともだ。私もそう思う。でも、音楽は何も悪くないしあそこにいる人たちが悪者だとも思えない。

ライブ配信だと観客はまばら(従来の4割に抑えたとのこと)に見えた。ただし、ステージ前はいわゆる密のように見えたし若干の歓声も聞こえた。指笛のような音も聞こえてきた。

ほとんどの観客がガイドラインを遵守していたのだろうが、一部に守らない人がいたように感じられた。

フジロックは3日間の日程を終え、感染対策の結果が待たれる段階だ。

ここでフジロックが開催を断念していたらどうなっていたのか考えてみたい。

一番はお金の問題。

昨年中止となったフジロックは今回開催したことにより最大で1億5千万円の補償を受け取ることが報道されている。

今年も中止であれば恐らく文化庁などの交付金が支払われたのだろうが、私も専門家ではないため実際にどれくらい支払われるのか分からなかった。ただ、イベント費用やキャンセル料が満額支払われることはないのだろう。

今回の開催だってチケットの払い戻しに対応していたのだからイベント費用を100%ペイ出来たのだろうか。

実を言うと私はフジロックに参加したことがない。しかし来年こそは参加したいと思っている。だから今回の件で財政難となりフジロック自体がなくなったら泣くに泣けない。

カルチャーの死は人生の死だと勝手に思っている。

そうならないためには、ウイルスを徹底的に排除することだ。

残念ながらこの国の感染対策は上手くいっているとは言えない。本来舵を取るべき政府が機能を失っている。

なぜロックダウンしない?法律の問題?日本は現実的に出来ない?

今やらないと間違いなくこの国は大変なことになる。総裁選、政党運営上やるのは構わないが私の思いはエセタイマーズと一緒だ。

政府は感染対策をもっと徹底的にやってほしい。ワクチンが足りないのなら待つしかないのだから。

補償問題にも取り組まなければならない。飲食も観光も交通もカルチャーも、どこの業界も限界なんだ。補償が足りないんだ。ロックダウンしても売り上げと同等の補償をしてほしい。

長々駄文を書き連ねてきたが、最後にこれだけは言っておきたい。

一番悪いのは誰でもない、コロナウイルスだ。

〇〇警察なんて言葉があちこちで聞かれるけれど、歪みあったり、妬んだりしても誰もなんの得もしない。そんな社会はもううんざりだ。

誰かが誰かを思いやる。そんな優しい社会でありたい。

パンデミックに打ち勝って、また心からライブを楽しめる日を想いながら。





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