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発達障害とは?

2,372文字です。個人差はありますが、4分〜6分ほどでお読みいただけます。

よこはま発達相談室の佐々木です。ちょっと前に、Twitterに以下のことを書きました。2022年〜2023年は基本的な知識を整理して書いていければと思っています(ただ、各記事長く書くと継続できなさそうなので、できるだけコンパクトにと思います)。今回は「発達障害とは?」です。

発達障害という言葉は広く知られるようになりました。他方で、その時々で若干異なる意味合いで用いられることがあります。例えば、我が国における発達障害者支援法では、発達障害の中には知的障害は含まれていませんが、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、新たに神経発達症群というカテゴリーがつくられ、その中では知的障害も支援対象に含まれています(もちろん、日本では知的障害者福祉法という法律があることも関係していますが)。

発達障害に共通すること

DSM-5では「神経発達症」となっており、これは発達障害の方々は神経学的に多様である(つまり、神経学的な違いがある)という意味である。そのため、親御さんの育て方やご本人のやる気や努力不足などの問題では決してないということである。大前提として、ここの認識がずれてしまっていると、本当は困っておりなんらかのサポートが必要にもかかわらずに、支援ではなくて叱咤・叱責の対象になってしまいます。

診断の意義

発達障害の場合には、現時点では薬によって治るというような狭い意味での医学的治療はみつかっていません。したがって、診断の意味は乏しいと捉えられてしまうことがあります。ですが、実際にはとても大きな意義があると我々は考えています。例えば、診断があることで発達特性に基づいた支援の方向性が明らかになります。その結果、お子さんであればどのように療育していくのがよいのか、大人の方であればどのように生きていくとよいのかを考える上で重要な手がかりになるのではないでしょうか。つまり、診断はその後の支援方略をプランする際の根拠になるのです。

また、「合理的配慮」という言葉や考え方は見聞きすることが増えました。これは、その根拠となる障害者権利条約によると、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されています。こうした必要な調整を検討していく場合にも、やはり診断が必要なるのではないでしょうか。なお、合理的配慮については過去にまとめました。

そして、発達障害の方々の特性からくる困難は他の障害よりわかりにくく、社会生活上での困難は小さくありません。現在、医療費等の経済面における助成や社会福祉サービスを受ける際には診断名が必要になります。つまり、公的サービスや福祉サービスを受けるための入場券として診断名が重要になると言えるでしょう。

発達障害とその支援

発達障害には、知的能力症(ID)、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)、発達性強調運動症(DCD)などが含まれます。ASDについてはこれまでまとめてきました。

それ以外についても、また詳しくは別の機会にと思いますが、概説させていただくと、ADHDは不注意、ケアレスミスが多いなどが特徴になります。あるいは衝動性が高い(パッと手が手でしまう、パッと行動してしまうなど)などです。SLDは、
読み書きや計算などの領域で問題が生じており、それらが知的な発達水準からは説明がつかないほどに困難が大きいのが特徴です。DCDは運動の問題で、極端な
手先の不器用さ、協調運動(縄跳びやキャッチボールのように、複数の身体を同時に動かす運動)の不得手さがあります。知的障害を合併する方もいれば、そうでない場合もあります。

発達障害の方々を支援していく際には、こうしたことを行動や認知(ものごとの捉え方や感じ方)特性から包括的に確認・整理していく必要があります。

そして、上述したように育て方や努力不足のために、今まで以上に頑張ることを求めるのではなく、それぞれの発達特性に配慮した支援することが、支援の原則です(例えば、ASDの方に対して視覚支援を活用するなど)。

そのためには、まずは我々が発達障害について知ることがスタートであり、重要ではないでしょうか。

まとめ

今回は「発達障害とは?」というテーマで書かせていただきました。簡単にまとめると以下の内容です。

  • 発達障害の方々は神経学的に多様である

  • 親御さんの育て方やご本人のやる気や努力不足などの問題では決してない

  • したがって、必要なことは叱咤・叱責ではなく個々の発達特性に基づいた支援

  • 支援プランの根拠、公的・福祉サービスを受ける際には診断が必要であり、診断の意義は大きい

  • 発達障害の方々を支援していく際には、行動や認知(ものごとの捉え方や感じ方)特性から包括的に確認・整理していく必要がある

それでは本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

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