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「どのくらい実際の不都合があるのか」という視点も

(8,217文字/個人差はありますが、約13分~20分程で読めると思います)

おはようございます!よこはま発達グループの佐々木です。今回のコラムも、皆さんからお寄せいただいたご質問にお返事をしていきたいと思います。今回はかなり長いので、お時間ある際にお読みいただければと思います!

Q:スケジュールとワークシステムの違いがよくわかりません

自閉症支援について学んでいくと、構造化の例として「スケジュール」や「ワークシステム」が出てくると思います。自分ではそれぞれについて理解しているつもりですが、周囲の方々にそれらの違いを説明するときに、うまく説明できないことがあります。スケジュールとワークシステムの違いについて、改めて教えて頂けるでしょうか。

A:パッと見は似ていても、伝えている中身が違う

ご質問ありがとうございます。確かに、これはよくお受けする質問の一つかもしれません。ワークシステムでカードのマッチングを活用することがありますが、それについても「スケジュールはカードでマッチングにしています」と説明をされている方は少なくないかもしれません。   

確かに混同しやすいのですが、それぞれについては以下のように整理しておくとわかりやすいかもしれません。

【スケジュールの意味と伝えていること】

これから何が起こるのかを知らせるもので、行き先を示すものでもあります。例えば、「先生と勉強」「遊び」というスケジュールだった場合には、最初に勉強があって、次が遊びなのだなと、これから生じる未来が予想できるようにするものです。

これを「勉強はこのエリア」「遊びはこのエリア」と活動ごとに場所を用意して、そしてそれぞれの場所にカードや実物をマッチングしながら移動する場合には、「この活動の場所はあそこですよ」と「行き先」を提示するものでもあります。

【ワークシステムの意味と伝えていること】

「何をするのか」「どのくらい取り組むのか」「どうなったら終わりなのか」「次にどうするのか」を示すものです。

例えば、スケジュールで「先生と勉強」となっていたとしても、それだけでは「どんな課題に、どのくらい取り組むのか」はわかりません。これらをわかるようにするのが、ワークシステムです。 

簡単にまとめると以下のようになります。

  • 「これからの予定はどうなっていますか?」という問いに答えるのがスケジュール。

  • 「何を、どのくらいすればいいですか?」「いつ終わりますか?」「次は何をすればいいですか?」という問いに答えるのがワークシステム。

言葉だけだと伝わりにくいと思うのですが…もう少しイメージがつきやすいようにするのであれば下記のような感じです。

1)勉強→スケジュール

  ⬜︎ ボールペン組み立て→ワークシステム

  ⬜︎ カードの分類→ワークシステム

2)遊び→スケジュール

そして、こうした考え方は、日常生活の色々な場面に応用がききます(例えば、着替えとか)。いかがでしょうか。ご参考まで。

Q:やる気がでないのが困る

いつもお世話になっております。就労現場で支援員をしています。「仕事をしなければいけないのはわかっているけれども、やる気がでないことがある。なんとかしたい」とご相談をお受けすることがあります。どのように考えたらいいでしょうか?

A:全てを解決した方がいいとも限らない

ご質問ありがとうございます。詳しい状況がわからないので、あくまで「ぼくだったらこんな道筋で考える」という程度になりますが、ご了承ください。

こうしたときに、まず確認をしていくのか、「やる気がでないことで、実際の不都合がどのくらいあるのかどうか」ということです。例えば、「やる気が出ないことで仕事ができない」は明らかに不都合だろうと思います。ですので、一緒に対策を考えていきます。一方で、「やる気は出ないけど、仕事はこなせている」であれば、不都合はありません。

似たようなことはよくあり、「うまく上司に報告できているかどうか不安になる」というご相談もお受けすることがありますが、それについても「うまく報告できたかどうか(自分の満足度が高いかどうか)よりも、不都合があるかどうか」を基準にしていくのかどうでしょうか?という話をさせて頂くことが、ぼくは多いです。

いずれの場合にもご不安なのはもっともなのですが、そこをグルグルと考えたり、不都合が生じていないのに対策を講じてもかえってうまくいかなくなったりしてしまうことがあります。

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