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「意味のない時間」と「意味のある時間」ーその他ご質問へのお返事ー

(6,815文字/個人差はありますが、約12分~17分程で読めると思います)

こんにちは!今日が連休最終日ですが、皆様、それぞれ有意義に過ごされましたでしょうか?

ぼくは実家に戻ったりしながら、のんびりと過ごしていました。明日からまた頑張りたいと思います。さて、今回は皆さんから頂いたご質問についてお返事をしていきたいと思います。

Q1;意味のある時間とは?

いつもさまざまなコラムや動画配信をありがとうございます。よく佐々木先生は「意味のある時間が大切」と話しておられ、その通りだなと感じます。ただ、周囲の方々にそれを伝えていくにあたって、改めて、「意味のある時間」について教えてもらえたいです。

A1;まずは前提として、それぞれの違いを理解しておくこと

ご質問ありがとうございます。「意味のある時間が大切」ということは、よく支援現場や講演会などでお話をさせてもらっています。ですが、かなり抽象的な表現をしているので、わかりにくい表現になってしまっているかもしれません。  

端的にいえば、「周囲にとってではなくて、”その方にとって”有意義な時間を増やしていきましょう」ということです。

こうしたことを考えるにあたって、ぼくは内山先生や同じ職場で働く先生方に以下のようなことを教えてもらってきました。

  • ASDの方々は一般の子どもが好きなこと(集団、社交、遊びなど)を好きとは限らない

  • ASDの方々は一般の子どもが苦手なこと(勉強、孤独、反復など)が苦痛とは限らない  

例えば、集団で過ごすことは多くの人にとって楽しいことがあるけれども、ASDの方にとってはそうでもなかったり、楽しさよりも疲れの方が大きかったりします。そのため、休み時間にはみんなで遊ぶよりも、一人で読書している方が楽しめたり、リフレッシュになることがあります。

周りからは「一人で退屈そう」「孤独そう」と見えても、ご本人にとっては「必要以上に疲れない」「気遣いをしなくていい」「好きな活動ができる」など有意義な時間かもしれません。  

もちろんこうしたことがASD全員に当てはまるわけではありませんし、そうしたことを伝えたいわけではありません。大事なことは、それぞれの違いを知り、違いを尊重するということです。一人で読書をして楽しめている子どもに対して、「本なんか読まないで、みんなでサッカーをしようよ!体を動かすのはいいことだから」というのは、提案はしていいかもしれませんが、強要するものではありません。それがたとえ善意からくるものであったとしてもです。

こうした違いを理解していないと、「有意義な時間を提供したい」と思って提案したものが、かえって苦痛を感じさせたり、「無意味な時間」を提供してしまうことにも繋がりかねません。

「意味がある」の定義をしていこう

ぼくらが自分にとって「意味がない」と思う時には、どのような時でしょうか。このコラムを読んでくださっている方々は「発達障害に関心がある、学びたいと思っている。そして日本語を母国語にする方々」です。

では、そうした皆さんに対して下記のような対応をしたとします。

  1. 発達障害に関して日本語で書いたコラムをイタリア語に翻訳してから提供する

  2. 日本語で野球に関するコラムを書いて提供する

  3. イタリア語で、しかも野球に関するコラムを提供する  

どうでしょうか?

少なくとも、皆さんのニーズには合っていないのではないでしょうか。どんなにぼくが野球について調べ、丁寧に書いたとしても、(1)~(3)の形でコラムを提供することは「ニーズに合っていない以上は意味がない」と感じる方がほとんどだと思います。

でも、イタリア語を母国語にするかつ発達障害に関心のある人であれば(1)は悪くないかもしれません。野球大好き!という日本語を母国語にする人であれば(2)は割といいかもしれません。イタリア語を母国語にして、かつ野球大好き!という人には(3)はぴったりかもしれません。

つまり、「意味がない」のは、「内容がわからない」「内容に関心(モチベーションや知りたい必要性)がない」となると思います。   

だとするならば、「意味がある」はその反対ですから、ぼくが考える「意味がある」の定義としては、下記のようになります。

  1. わかること

  2. 興味関心があること(ご本人にとってのモチベーションや必要性があること)     

定義が決まれば、そのためにすることの方向性が決まってきます。意味のない時間を提供しないために(=意味のある時間を提供するために)は、

  • いかに「その方にとってわかる時間や内容」を用意するか(=わかりやすい環境設定をするか;構造化するか)

  • その方が何に興味やモチベーションをもつのかを知り、そうしたことをいかに活動に組み込んでいけるか(例えば、散歩にモチベーションはなくても、買い物が好きであれば、歩いて買い物にいくことで結果として散歩になるというように、活動にどう意味を作るか)

こうしたことがポイントになってくると思います。

TEACCHでも、英国自閉症協会でも、「構造化」をキーワードに入れている所以は、こんなところにあるかもしれませんし、ASDの方の認知特性(ものごとの捉え方のこと。TEACCHでは学習スタイルという言葉で表現されています)を知ることは、ASDの方々にとって「意味のない時間を減らし」「意味ある時間を増やす」ことにつながるのではないかと思います。

だからこそ、「構造化」や「認知特性」を学ぶことが大切なのです。

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