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死別は自閉症の人にどのような影響を与えるのか?

(5,169文字/個人差はありますが、約8分~12分程で読めると思います)

こんばんは。よこはま発達グループの佐々木です。
今日は「ASDと死別」というテーマで書いていきたいと思います。
重いテーマですみませんが、大事なテーマでもあります。


死別の際に起きうる反応

年齢の制限なくおつきあいさせて頂いていると、相談のバリエーションも多岐に渡ります。例えば、少し重いテーマに感じるかもしれませんが、「死別」というのも一つです。

ASDの人にとって死別や、それに伴う悲しみがどのようなものなのか、あるいはそれらがどのような影響を及ぼすのかについての研究、情報、指針は限られています。
   
でも、実際にはそうしたご相談も決して少なくありません。死別は、人とだけを意味しません。大切にしていたペットとの死別もあるでしょう。
     
そうした時に、サポーターとしてどのような関わりが求められるのかについては、いつも考えさせられます。
   
死別はASDの人にどのような影響を与えるのでしょうか?
   
中には、「悲しいという感情がよくわからない。感情はあるけれども、どう処理していいのかわからなかった」という人もいたりします。

英国からの報告

英国自閉症協会では、自分にとって大切なものの死を悲しむとき、自閉症の人は次のような反応を示すことがあると解説をしています。

・イライラや落ち着きのなさが増える
・睡眠や食事のリズム、パターンの変化
・他人への依存度が高まる
・以前できていたことができなくなる
  
また、死別の際に自分の感情を表現することが難しいと感じることがあるとされ、次のような他の感情や反応を示す場合もあると記載されています。

・悲しむことをうまく表現できなかったり、悲しみが遅れてくる
・興奮や攻撃的な行動として表現される(混乱しているといってもいいのかもしれません)

どうでしょうか。


もしかすると、どうしてそのような表現になるのだろうか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

当事者の方からの報告

ASDの人とそうでない人とでは、異なる反応を示す可能性があることを示唆していると言えます。実際に、当事者でもあるカーラ・フィッシャーさんは、ASDの悲しみについて考えてほしいこととして、以下のようなことを述べています。

  1. 泣いたり、感情を露わにしたりする場合もあれば、そうでない場合もあります。あるいは、感情が現れるのが遅れたり、非常に極端になったりする場合もあります。

  2. 悲しみは、ASD症状の増加(感覚処理の問題の増加、シャットダウン、メルトダウン、社会的能力の低下など)を通じて現れる可能性が非常に高くなります。

  3. 何が問題なのかを明確に説明したり、感情について話すことができない場合があります。

  4. 物事を解決するために一人になりたいという欲求の増加(これは、自分の気持ちを共有することで気分が良くなるほとんどの定型発達の人とは反対です)。

 
そして、カーラさんは、以下のようなことが役立つかもしれないともしています。

  1. 体の物理的なケア(栄養、睡眠、運動)に気を配る。

  2. 一人の時間を大切にする。

  3. 自分のASD特性について学ぶ(そのことで対応できるようになることもある)

  4. 何かに没頭してして過ごす時間。

  5. 現実的に取り組める活動に参加する(他者を助けることでもいいかもしれない)。

  6. 回復のための現実的な目標/期待を設定する(悲しみの症状は1年以上続くこともあることを想定しておく)。

  7. 新しい興味のある分野や特別な興味を発見/探索する。ASD を持つ人の多くは、熱心な探検家です。時間をかけて探索したり散策したりしてください。新しい余暇活動を始めてみる。そうした学習は心を落ち着かせ、感情を処理するのに役立ちます。

  8. 自分の悲しみ方は他の人のものとは異なり、自分自身のやり方も有効であることを理解すること。

いかがでしょうか。
次の章からは、いくつか具体例を用いながらと思います。  

どう説明をしていくか

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