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これからの支援を考えてみよう

(6,550文字/個人差はありますが、約9分~14分程で読めると思います)

こんにちは!よこはま発達グループの佐々木です。Facebook版では坂井先生(香川大学)との対談を配信しています。来月は又村あおい先生(全国手をつなぐ育成会連合会常務理事兼事務局長)との対談を配信予定ですので楽しみにお待ちいただければと思いますが、今回は対談を終えて感じたことをまとめてみたいと思います。note版の方も「こんな話をしているんだな」と思ってもらえれば嬉しいです。    

我が国における最近の動向

昨年9月に国連の権利委員会から日本政府へ勧告(総括所見)が出されたことは、「なんかそういうのを聞いたことがある」という方は少なくないかもしれません。ざっくりいうと、障害者権利条約に基づいた日本の施策について国連から、多くを改善するように勧告を受けた(90項目以上)ということです。

とはいえ、詳しくはよくわからないという方もまた多いと思いますので、まずはそれらのポイントについて、障害福祉施策などの法律制度についてのスペシャリストである、又村先生に伺いしました。

国連からの勧告は大きな影響がある一方で、多くの人には縁遠い感じがしており、まだまだ正しく理解はしておられないので、どのような勧告があったのか、それがどのような影響があるのかを説明する1年だったようです。

例えば下記のようなテーマです。

  • 今まで努力義務だった合理的配慮が義務化

  • 入所ではなく地域での生活を

  • 障害者年金の支給額の見直し

  • 成年後見制度の見直し

就労面に関しては福祉的就労について否定的な勧告がされており、同一労働、同一賃金を目指す方が望ましいのではという意見や、教育についても、すべての障害児が地域の普通学校、普通級への通学を保障するというインクルーシブ教育の見直しも指摘を受けています。

ちなみに、今回の国連からの総括所見に法的効力があるわけではないので、変わること・変わらないことがあるかもしれません。その辺りについて又村先生に伺うと、「変わり方や変わるスピードはまちまちだけど、今後の施策は変わると思う」とのことでした。

情報は自然には手に入らないけど、武器になる

障害福祉施策については、用語も難しく、自分から情報にアクセスしないと手に入らないし、また変わっていくものですから、理解することは容易ではありません。だけれども、こうした法的な部分を知っておくことで随分と変わることもあります。

例えば、「合理的配慮」はその一つです。今までは「特別扱いはできません」とされることも多かったのですが、合理的配慮ということが法的に整備されてからは、「特別扱いはできない」と一蹴されることはなくなりました。なんでも対応してくれるわけではありませんが、まずは話し合いの場が設けられ、具体的な折り合いをつけていきやすくなったように思います。

そして、これまでは「努力義務」だった合理的配慮が、「義務化される」というのは、どれだけの人が把握しているでしょうか。皆さんの周りはどうですか?

ぼくの実感としては、「そもそも合理的配慮自体、どれだけ正しく理解されているのだろうか?」と思うこともあり、実際の生活場面において当たり前になるのは、もう少し時間がかかるのではないかと感じています。

合理的配慮は、「なんでも対応します」というものではありません。

「(期待されていることの)本質を変えない範囲で、かつ障害特性に応じた、過度な負担にならずに現実的にできる工夫」と言い換えても良いかなと思います。  

例えば、小論文というテーマで考えてみます。

ここでの評価基準は「論理的思考」であるならば、漢字を使っても使わなくても評価自体は変わらないはずです。ですから、書字に困難がある方の場合に、タブレットやPCなどを使って作成するのは障害特性に応じた合理的配慮になり得ます。一方、評価基準が「習得した漢字を書くことができるか」である場合には、タブレットやPCでの入力は評価基準の本質を満たしませんから合理的配慮として難しいわけです。

こうした点について把握ができていないと、現実的で適切なポイントが見つけられずに、結果としてものごとが何も進まないとなりがちです。ですから、まず大事なことは、難しいけれども制度面についても情報を持っておくことだと思います。より詳しく知りたいという方は、又村先生がじっくり解説してくださっている動画を紹介しますので、ご覧ください。

▼障がい者権利条約対日審査総括所見について・1

https://www.youtube.com/watch?v=x0ngnaFYFGs

キーワードは”持続可能”

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