療育の本筋とは?ー何をめざすのか。
この記事は、2,683文字です。個人差はありますが、4分〜5分ほどでお読み頂けます。
よこはま発達相談室の佐々木です。4月2日は世界自閉症啓発デーであり、4月2日〜8日までが発達障害啓発週間になっています。この1週間はそれに関連するシリーズでお届けしています。今回は「療育の本筋とは?」がテーマです。
療育や支援の目的は?
さっき宇野先生の話にあった療育の本筋ってなんだろうとか、支援者ってなんのためにいるんだろうとか、支援ってなんのためにあるんだろうかというのはとても大事なことだと思っています。普段お聞きすることはなかったのですが、内山先生、いかがですか?支援は何をめざしてやっているんだろうとか、療育の目的って改めてお伺いしていいですか?
歴史からいくと、自閉症臨床を始めた頃は、いかにどうやってスキルを伸ばすとか、普通に近づけるとか、正直スキルアップがメインでしたよね。今思えば心苦しいけれども偏食の矯正をしようともしていたし、身辺自立とかトレーニングとか。それは必要なことで、大事なことではあるけれども、スキルをどんどんアップしても、だからハッピーとは限らないです。
さっき、大人の発達障害の話があったけれども、知的に高い大人の人が臨床に現れてきたことに話をしていると、IQが高いからハッピーというわけでもないし、スキルが高いからハッピーというわけでもない。凸凹が普通になったからハッピーというわけでもないし、凸凹があっても、IQが低くてもハッピーな人はいる。
だから、何がハッピーであるかに支援の対象が変わってきたと思うんです。小さい子の場合には親子がハッピーであることが大切だし、大人であれば本人がハッピーであることが大事だし。家族のハッピー、本人のハッピーが大事。自閉症協会でも、Happy Autismといって、それが一つの協会の理念なんですね。普通に近づけるよりは、ハッピーであることを重視する。TEACCHでは昔から言っていたけど、ぼく自身は30年前から、TEACCHに行ってからも(普通に)近づけようという意識がどうしてもあったんだけれども、だんだん変わってきて自閉症のままでハッピーになるというのが今は中心になってきていますね。それがサポートだと思う。
IQや自閉症特性はQOLに関係する?
少し前の研究でも幸福度と特性やIQとの関係を調べていらっしゃったように思いますけど。
そうですね。QOL(生活の質)とIQとか、QOLと自閉症特性は関係がなかった。QOLは一般の人の生活の質の尺度しかなかったんです。なので、友達がいたらQOLが高かったりする。本当に自閉症の人にとってのハッピーとは何かをこれから考えないといけなくて、実はそれ、文部科研が通ったので(研究を)やるんですけど。海外だと自閉症の人の特有のQOLとか、自閉症の人の主観的な幸福度がどうなのかなどを大事にしているので、そうしたことを中心にして調査をしていきたいなと思っています。
スキルアップから、その人にとってのハッピーやウェルビーイングに変わってきた時に大事なことだなと思うのは、周りから見た時に幸せそうだとか、周りから見た時にこれができていないのはよくないとか、そういうことではないですよね。あくまでご本人の視点に立ったり、そのご家族にとってハッピーであればそれでいいわけですよね。だから、出かけるのがハッピーならそれでいいし、自宅で何かをしている方がハッピーな人はそれでもいいし。一般的な社会的な価値観に照らし合わせてということではなくて、あくまで自閉症の方々特有の、その方にとってハッピーかどうかというのが大事なんじゃないかなと思うんですよね。
個々のハッピーを尊重して
自閉症であってもなくても皆そうなんだよ。個人のハッピーが大事なんだけど、自閉症のハッピーは、みんな(自閉症でない人)とのハッピーと多少違うことがあるから。例えば、休み時間になんで遊ばないんだとなってしまうけど、本を読んでいる方がハッピーな人もいる。自閉症であってもなくても、個々の価値観を尊重する世界が大事だから、そういう時代になってきたのはすごくいいこと。
ぼくら3人でも、何に対してハッピーを感じるのは違うんじゃないかなと思います(笑)
だいぶ違いますよ!佐々木先生とは違う(笑)
宇野先生、ここまでの中で最も同意してますけど(笑)内山先生は何をしている時がハッピーですか?
それは佐賀の自閉症協会の大会でも言ったけど、パンタグラフを見てるのがハッピーなんだよね(笑)あんまり共感してくれないんだけど。でも、共感してくれる人は少ないけど多少はいる(笑)
患者さんたちでもおられますよね。パンタグラフのことをいきいきと話してくれたりしまよね。
連結が好きとかもね。
あとは音が好きとかも。
音にこだわる人もいるよね。ぼく、音はそんなでもないんだけど(笑)
そこも大きなカテゴリーでいくと「鉄道」というのがあって、その中でもパンタグラフが好きな人もいれば、音を聞いている時がハッピーという人もいて、それでいいんだろうなと思っていて。色々な価値観を迎合しなければいけないわけではなくて、自分がハッピーならそれでいいんじゃないかなって。宇野先生は何をしている時がハッピーですか?
ぼく昔から趣味がなくてですね、それが数少ない悩みなんですけど。でも、やっぱり臨床が好きでですね。真面目な答えになっちゃいますけど。
好感度をあげようとしてる(笑)
いや、まぁ(笑)。仕事がうまくいくとか、臨床していてうまくいった時にはすごく幸せだし、その時のため毎日頑張っているんだなって気がしてしまうし。その辺はみんな一緒ですかね。
ぼくも嬉しいなと思ったり、ホッとしたりします。少しでも、ご本人やご家族の中で、もちろんあらゆることが解決ということではなくても、1日の中でちょっとホッとできるとか、穏やかに過ごせるとか、ほんの少しでも増えたのであれば、ぼくら自身にも責任もありますからホッとしたり、一緒に喜んだり。そういう瞬間は、本当によかったなと思う瞬間ではありますよね。
続きは、また明日以降配信いたします!
明日は、「柔軟な発想を持つには」をテーマにお話をしていきたいと思います。
ご関心ある方はご視聴ください。
よこはま発達相談室
佐々木康栄
また、佐々木の方ではいくつかのSNSでも発信しておりますので、ご関心ある方はアクセスしていただけますと幸いです。どうぞ宜しくお願い致します。
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