ダイエット健食のUS-FTC規制事例

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先行する「美容&健食製品のUS規制」の記事でも取り上げたが、日本の消費者庁に相当するアメリカの「連邦取引委員会(通称FTC)」が、2018年以降に取り扱ったダイエット健食の規制について、この記事では具体的な3つの事例を紹介したい。

1.Health Research Laboratories社、「BioTherapex」事件

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メーン州に拠点を持つHealth Research Laboratories社は、ビタミン&ミネ
ラル類にブロメライン、クレアチンモノハイドレートを配合する自社サ
プリ「BioTherapex」(2012年発売)が、肝機能を改善して脂肪燃焼効果
を向上させることにより、「短期間に顕著なダイエット効果をもたらす」

との広告キャンペーンをアメリカ&カナダ国内で大々的に展開した。同製
品は1瓶(用量1ヶ月分相当)が$39.95で販売され、「関節痛から背中の
痛み、さらに短期間(2日間)での体重減少に効果があり」
と、その広告
上で訴求していた。

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これに対しFTCとメーン州は、BioTherapexの広告が何ら科学的根拠に
基づかない虚偽の内容を数多く含むとし、両広告の出稿を差止めると共
に、消費者側の損失補填として、被害件数16,596件に対する$750,000の
返金と総額$3,700,000におよぶ制裁金の支払いを命じた。

FTCによると、同社は科学雑誌に似せたDM用小冊子に偽の医師やユー
ザー写真を掲載し、実際には実施すらされていない1,200人規模の臨床試
験結果を掲載していた
という。さらに同社は、「リスクフリーお試しキャ
ンペーン」を実施していたが、顧客のデビットカードを使って自動的に
定期購入へ移行させる仕組みについての説明や情報開示が不充分
だったと
して、電子資金取引法(EFT Act)とFTCのテレマーケティング販売規則
(TSR)への抵触も指摘された。

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2. National Urological Group社他、「Thermalean / Lipodrene」事件

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2004年の「エフェドラ(麻黄)規制」で、既に販売差し止めや被害者への
返金処分を受けていたNational Urological Group社、Hi-Tech
Pharmaceuticals社、National Institute for Clinical Weight Loss社の販売会社計3社が取り扱うダイエットサプリ2種、「Thermalean」と「Lipodrene」は、その後エフェドラを含まない新処方に変更し、同製品広告上で、「すばやく脂肪減少」「脂肪を燃やす」「体重の19%におよぶ実質的な減量効果を臨床試験で検証済み」等の表現を掲載していた。

これに対しFTCは、それら一連の広告による主張が何ら科学的根拠や事実
に基づかない虚偽であると認め、別に不当表示を指摘されたED系サプリ「Spontane-ES」と併せた計3品で、被害者総数143,636件に対する
$8,500,000の返金を含む総額$15,800,000の制裁金支払いを命じた。
なお、同命令は2008年に発効し、被害者への返金は小切手を本人宛て郵
送する形で、2012年より開始されている。

FTCによると、3社は同一個人によって実質的に運営されており、以前から詐欺的な「まがい物商法」を常習し、さらに不当な広告表示を何度も繰り返す悪質性が断罪されている。

3.NutriMost社、「The NutriMost System」事件

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ペンシルバニア州に拠点を置くNutriMost社は、カイロプラクターRay
Wisniewski氏考案のダイエットプログラム、「the NutriMost Ultimate
Fat Loss System(ニュートリモスト究極の減脂法)」のフランチャイズ
販売を、カイロプラクティック系クリニック約160店舗を対象に、2014
年から2016年にかけて行った。
  
同プログラムの広告は、「ホルモンが狭い『究極の脂肪減少ゾーン』に
留まるのをサポート」
「たった40日間で20~40ポンドの減量に成功」
などのクレーム※を掲載していたが、FTCはこれらを何ら科学的根拠に
基づかない不当な広告表示と裁定し、同広告の差し止めと被害者総数
3,483件に対する計$1,950,000の返金を含む、総額$32,000,000の制裁金
支払いを命じた。

※他の目に余る不当表示の例として、「バーチャルな脂肪溶解」「脂肪
 落ちにくい場所にピンポイント効果」
「つらい運動や食事制限は不
 要」
などの表現も指摘された。

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FTCによると、同広告に登場する推奨者や体験者がいずれもNutriMost
社あるいはフランチャイズ先との利害関係者である事実を隠蔽
したり、
また製品の購入者に対して「ネガティブなコメントはペナルティ請求の対
象になる」というあからさまな脅しをかける行為
も特に悪質とされた。

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