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弱者の生存戦略#2 弱小球団を建て直す野村克也(プロ野球)

前回の話の続きです。

現役27年、名解説者を経て、野村氏が現場に戻ったのは1990年のシーズンから。ヤクルトスワローズの監督としてでした。

その後、在籍9年でセリーグ制覇4回。日本一は3回。
監督しても素晴らしい成績です。

2022年の日本シリーズもヤクルトがセリーグの代表でしたね。2021年は日本一ですし、ヤクルトは昔から強いチームだと思われるかもしれません。

しかし、野村監督が就任するまでは、まったく上位に食い込めない弱小球団でした。

下図は、野村監督就任前後の、ヤクルトの順位です。1980年に2位になった後、6位が4回。5位が2回。弱小球団でした。

野村監督は1990年シーズンから監督就任

これだけ弱いと、チームにも負け癖がついています。勝つチームの雰囲気になっていないのです。会社でも、似たようなことがあると思います。成績が出ないチームって、責任を擦り付け合ったり、自分でやるべきことをやらない。ルールが守られない。そもそも、どこを目指しているのか、みんな違う意見を持っている。

そこに野村監督が持ち込んだのは、データ活用です。
感覚で野球をするのではなく、過去の実績から相手の動きを予測することで、プレーの質を高めるということです。

前回も書いた通り、野村氏のキャリアスタートは2軍選手。頑張っても目が出ず、キャッチャーから1塁手に配置転換されていました。バッティングで頭角を現し、少しずつチャンスをものにしたのですが、彼のバッティングは、ピッチャーのクセや配球データを使った、徹底的な分析により磨かれていったのです。

当時はデータなんて活用する人、いなかったんですよね。
野球の歴史を紐解くと、実はとても面白いのですが・・・、そもそも野球は、江戸幕府の崩壊とともに失われた「武道」の代わりに取り入れられたのです。

精神を整え、魂を磨く。忍耐が当たり前。

そういう競技ですから、データでプレーを解析するという発想はそもそも出てこない。野村氏は、生き残りをかけて、データの活用を必死に身につけました。

データ活用で、自分のバッティングが良くなる。次に、キャッチャーとしての野村氏のリードの質が上がる。当時の南海のピッチャーは、他球団にトレードされるときに、勝ち星が5つ減ると言われていました(実力以上に、野村氏のリードで勝ち星が増えている、ということ)。

ヤクルトの監督になった野村氏は、センス任せの選手のプレーにデータ活用を持ち込み、選手に手応えを感じさせて、弱小だった球団を日本一にしたのです。

データなんて何の役にも立たないよ、という選手も多いです。野村氏が現役の時も、監督になってからも、たくさんいました。

違うんですよ。

データが役に立たないのではない。データを活用できない選手がほとんど、ということなのです。せっかく手元に、宝の山のような情報が眠っているとしたら、もったいないと思いませんか?

センスや才能って、事前に評価できません。
甲子園で活躍した選手が、プロで活躍できない例がたくさんありますよね?それだけ、センスの伸びを予見するのは難しいということです。

一方、データの活用ができることの強みは、再現性が高いということです。誰がやっても改善効果を期待できるっていうことです。

プロの選手であれば、基本的な素質はあります。次にどの球がどのコースに来るか、絞れるようになれば、準備できますよね?そうしたら、成績が上がるのは当然です。

会社経営でも、能力の高い人材を面接で見極めるのは、本当に難しいです。明らかに優秀な人もいますけど、その場合は向こうに選択権がある場合がほとんどです。なので、現実的には、「活躍できるかな・・・」と迷う人材を採用せざるを得ないのです。

もし、データの活用で、普通の人材に2割アップ、3割アップの活躍をしてもらえたら、自社の将来も明るくなると思いませんか?

そのためには、記録をしっかり取るところから始めます。

営業の面談記録。社員の投下人数とアウトプットの関係。うまくいっている社員の仕事のやり方を紙に落として、他の人に真似させてみる。売上推移を既存客・新規客で分けてみてみる。客単価の推移は・・・?

記録やデータを元に、「こうしたらもっと良くなるかも」「このやり方はみんなで真似しよう」と、改善を重ねていくのです

ベストセラーになった、「ストーリーとしての競争戦略」。著者の楠木教授は、競争戦略は2種類しかないと主張します。ひとつは、差別的ポジションを意図的に取ること。もうひとつは、オペレーションを徹底的に磨き上げること。そして、差別的ポジションはよほどセンスがないと取ることができず、安易にやろうとするとうまく行かないことが事例付きで説明されています。

だから、ほとんどの会社は、オペレーションで差をつけるしかないのです。他社でもできることを、積み上げて、改善する。「誰でもできる」ことを継続することは、ほとんどの人にはできません。

高価なITツールは必要ありません。一番大事な活動について、記録をつけてみるということを考えてみてはどうでしょうか?

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。
今回の記事が、何かの参考になれば幸いです。
それではまた。

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