誰の視野にどう入るかで、生き延び方が変わってくる。(2020年5月16日(土))

私は今やお酒は飲まないのだが、昨晩はなぜかふらっと、久しぶりに酒場に入った。

和やかな静けさと言えばいいのだろうか。しんと静まり返って人の気配がないわけではもちろんないが、無理にテンションを上げて騒ぐ人もいない、そんな、朝の喫茶店に少しだけ近い…でも一日の始まりにはない、静かにその日をクロージングさせていこうとしている空気感を、私は求めていたのかもしれない。

斜め後ろの、私の視界の端に入るテーブルに、武術の心得のある方とその友人が2人、にこやかに会話を交わしていて、私はカウンター席でひとり、やはりお酒は飲めなかったかと思いながらそろそろとそのお酒を舐めつつ、3人の会話のお裾分けをいただいた。

「視界狭窄に陥っている相手は、簡単に倒されるんですよ」「知らない動き、見えない動きには、簡単にやられてしまうものなのですよ」。

手を使った軽い実演を交えつつ進む話に、思わず私は引き込まれる。その3人が「そろそろこのへんで」と店を出た後も、私はひとりその話を反芻し続けた。

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