製薬MRからマーケに異動して病む人は多い?

TwitterでMRの方が”本部に異動すると病む人が多い”ということをツイートされていて、確かにそういうケースを少なからず見てきたなと思った。もちろん組織風土や人間関係の問題と言ってしまえばそれまでなのだけど、自分が見てきた中にはMRとして優秀な能力を持っていたにも関わらずそうなってしまったケースもあるのでどういう背景があったのか考察してみたい。

1.       Stakeholderの大多数が社外 (医療関係者)から社内に変わる
まずはこれ。MRは多少の差異はあれど基本的には顧客となる医療関係者がメインのStakeholderで、次いで営業所の上司・同僚だと思う。一方でマーケに来るとその比率は逆転して、社内のStakeholder (上層部、営業、メディカルアフェアーズ、R&D、etc…)がメインになって顧客 (KOLなど)は少なくなる。こうなった時に何が大きな変化かというと、1つは自分でスケジュールのコントロールができなくなること。MRは顧客の訪問規制に合わせて自分でスケジュールを組んでいくと思うが、マーケでは会社のガバナンスや他部門の都合で様々なプロジェクトが進行することになり、スケジュールの自由度が圧倒的に下がる。加えて大きいのは、MRであれば関係の悪い顧客を避ける (一旦距離を置いて少しづつ修復をする)ということが可能になるが、マーケに来ると社内の人間になるので、苦手な人から遠ざかることはできない。これらの結果として精神的な負担が増している人は多く見てきた。

2.       意思決定に関わっておらず全体像が見えない中で膨大な量の業務をこなす
これは本人の問題ではなく組織の問題なのだけど、何度か見てきたケース。マーケでは戦略方針の決定や修正が一部のコアメンバーだけで行われ、その決定に従って他のメンバーが遂行 (イベントの企画、資材の作成、営業への説明など)を担うことが多々ある。その際にコアメンバーからの説明が十分にされず、何を戦略的意図としてやっている業務なのかわからずにひたすら業務に忙殺されることがある。そうなるとやりがいを見出すことが難しく、精神的負担が大きくなる。

3.       責任感が強く他部門からの意見をすべて真に受けてしまう
これも優秀なMRの方にありがちなケース。自分の業務に責任をきちんと持っているため、Stakeholderの声を完璧に取り入れようとする。これは医療関係者という顧客に対しては本当に大切だと思う。ただ、マーケとなると別だ。マーケはいわゆるハブ (中心)機能なので、いろいろな部門と協同していくことになる。そして組織において、それぞれの部門はそれぞれの都合と利害で動いているのが現実だ。なので、すべての声を取り入れていたら仕事が進まないことが大半だ。(そして上から追求される)。なので、マーケにおいては仕事を進めることを優先させて他部門の意見を時には聞き流す、却下することも必要だ。ただ責任感が強い優秀な人ほどそれが中々できず、結果的にビジネスも進まず追い詰められるケースがある。

4.       MKTに必要とされる能力を身に着けられない
最後は元も子もないけれど、求められる能力の変化に対応できないこと。英語によるコミュニケーション、売上予測の策定や理解・説明能力、大局的に市場を見て戦略を作る能力など。MRとして非常に優秀でも、これらの能力開発には苦慮される方も多く、そうなると中々成果が出せず精神的に追い込まれてしまう。このあたりは本来はマーケの採用面接で判断すべきところなのだが、面接だけで完璧に判断することが難しいのも事実だと思う。

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