【小説感想】時給三〇〇円の死神**藤まる

完全なる勘、ジャケ買いではなくタイトル買い?
本屋で見つけて、面白いタイトルだなと興味を持って裏表紙のあらすじを読んで買ってみた本。

突然話したこともないクラスの中心的存在の女の子が現れて「死神」のアルバイトに誘われます。
時給は本のタイトル通り300円。残業代も休日手当もなくて、どんだけ働いても1日4時間分の1,200円しか貰えないと言うその仕事内容は、未練を残しこの世に残っている「死者」あの世へと見送ること。
未練がなんなのかを聞き、それを晴らす手伝いをしてあの世へと旅立つのを見送るそのバイトとは奇妙ではじめは半信半疑の主人公。
しかし、そのバイトを続けるうちに主人公の心理は大きく変わっていきます。

主人公目線で描かれる小説です。
主人公の心の声も描かれてる感じで、とてもライトでサクサク読めました。
主人公が高校生と言うのも、今の私には遠い昔だから雰囲気が懐かしい感じで、私ははじめ、そんな部分からちょっとなめてかかってたんだと思います。
まさかこんなにこの物語で泣きそうになるとは思ってもみませんでした。

改めて、人の命は尊いなと。
そして、どんな人生を歩んでもきっと、後悔なくこの世を旅立つことなんて出来ないんだろうなって。

その上、この物語に登場する「死者」は皆、残した未練を突きつけられ、苦しみのなかこの世に残っています。
その心とどう折り合いをつけるのか。
そして、この世に残される側の想いは。

近しい人を亡くした事のある人にとっては、何か考えさせられる部分のあるお話だと思います。
前に進むその一歩、それが描かれているこの作品。
少しの悲しみが私には残りましたが、未来に小さな光も見える、そんな作品です。

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