猫日和 77 ぽん太の蠟燭

画像1 私は分かっていたのだと思う。ぽん太の命の蠟燭の長さを。幼い彼を抱くと理由もなくかすかな悲しみが広がるのだった。 ぽん太は雄で、脚も胴もスラリと長く、持ち上げると長〜く伸びた。その時突然、その格好のまま、この子がいなくなったらどうしよう、という思いが胸をよぎった。 病弱であったわけではない。ある日、急に元気がなくなって、医者に行ったら、内臓の奇形で手術が必要と言う。預けて、半日、直ぐに来てほしいと電話があり、走って行ったら、もう意識はなかった。ぽん太も捨て猫。うちの子になってくれて有難う。
画像2 トロンボーンのケースの横で昼寝。後ろに薬箱もある。 「ぽん太」という名前は、うちに来た時、お腹がポンポコリンだからポンタだ、とまだ小さかった娘が呼びはじめ、それが定着した。確かに子猫のお腹はしっとりして暖かくポンポコリン。野方の猫おばさんと言われる人が、2匹も3匹も4匹も同じでしょう?あなたのところで、ついでにまとめて面倒みてよ、と有無を言わさず置いて行った。その彼女は10年前あっという間に癌で亡くなった。だから、あの世で、こちらから行く猫を迎えて、まとめて面倒みてよ、と託している。
画像3 暖かいお腹に顔を埋め、また肉球を頬に当て、「猫って、コーンの匂いがするね」と娘が言った。

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