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「ドローダウン」をどう活かすか?

 「ドローダウン」サブタイトル「地球温暖化を逆転させる100の方法」(ポール・ホーケン編著)、ちょっとした辞典並みの分厚いこの本、知人から借りていました。昨年9月に気候危機オンラインデモに参加しませんかと声を掛けたら「この本のつながりでも同時にデモをやるんですよ」との返事と共にこの本を渡されました(笑)。
 興味はあるけど分厚過ぎて読む気が起きない(笑)、それに各方法について専門家が分析して今の取り組みから想定してどれだけ温室効果ガス削減に効果があるかを順位付けしているのですが、この「順位付け」というのがうさん臭くて(笑)、どうも気が進まない・・・
 もちろんこの本は大勢の方が真剣に取り組んだ成果であり、知人も日本語訳(ボランティア??)に関わったようで、そういう多くの方々の知を結集した成果を、僕も僕なりに活かしていきたいな・・・と、本を手に取りました。
 まずタイトルの「ドローダウン」ですが、温室効果ガスがピークに達し、減少し始める時点のことを指す、とのことです。温室効果ガスにはCO2だけではなく、CO2よりはるかに温室効果の大きいメタンやフロン、代替フロンなども含みます。そしてそれらは我々が排出削減するだけでなく、大地や海洋などに吸収されたり放出されたりする分もあるので、どこでドローダウンに達するのかを明確にはシミュレーションできないようです。そういうなかで、我々は排出の削減に取り組まねばならない、しかも今すぐに、と理解しました。
 本書の読み方として、最初のページから順番に読んでいくのも興味深いのですが、さすがに専門用語の洪水に目が眩みます(笑)。そこで、いきなり最後の方に飛んで、順位付けの一覧表を見ました。そこで僕なりに「これ興味ある」「えっこんな方法もあるの?」「こんな上位にあるの?」という「オドロキ」「!!」ポイントの高いものをピックアップ、それを索引代わりにそのページに飛んでチェックしてみました。
 その結果が以下です。みなさん、どう思いますか??
・1位の「冷媒」には驚いた!フロンがオゾン層を破壊すると問題になったのはずいぶん前、と思っていましたが、代替フロンにはCO2の数千倍というものすごい温室効果がある、という致命的な欠点があったのです。しかもそれが一番問題になるのは「廃棄」の時で90%を占めるというのです。原発とある意味一緒ですね、というとちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、「便利だからといって後始末に困るものを使うのはいかがなものか」というのは、便利な現代を生きる上で常に考えさせられるポイントですよね。
 そして、冷媒を使うのは、エアコン、冷蔵庫、スーパーのショーケース、カーエアコン、等々。減らすor回収する努力は大事だけど、一番は使わないこと。我が家はエアコンなしについては合格、カーエアコンや冷蔵庫なしの生活ができるか?でも冷蔵庫だってエアコンだって、ほんの50年かそこらの歴史しかない。それまでは無くても暮らしてきたんだから・・・。
・3位「食料廃棄削減」4位「植物性食品を中心とした食生活」。これは順当という気がするが、とかく再生可能エネルギーばかり注目を集めるけど、食の分野での温室効果ガス問題が大きいんですね。でも世間では電気自動車に乗って「環境に優しい」と言いながらハンバーガーをパクついてるわけで。
・6位「女児の教育機会」7位「家族計画」。これは盲点でしたが、でも言われてみると人口が増えれば地球環境へのインパクトが大きくなるのは当たり前。
・僕がかねてからやってみたい興味項目。30位「メタンダイジェスター」。「バイオガス」としても知られる。トイレの排せつ物を嫌気性発酵させ、メタンガスを調理用燃料として、発酵残渣を肥料として活用する方法です。排せつ物が燃料と肥料に変わるなんて夢のよう。下水に流して金かけて処理するなんてバカバカしいです。41位「太陽熱温水」太陽光を活用するなら発電ではなく「電気に変換しなくて済む方法」が良いと思ってます。電気はたしかに便利です。でも電気に変換するためにかけるコストが実は致命的なんじゃないか・・・と僕は思います。48位「小水力発電」。発電するなら水力。水路の流れとかを活用できないのかな~なんて思います。あとは発電ではなく「水車」や「バッタリー」で雑穀の殻取りや精白をやってみたいな、というのも昔からの夢です。54位「歩いて暮らせる街づくり」59位「自転車インフラ」75位「ライドシェア」。なかでもライドシェアに興味があります。自動車の所有台数を半分に減らせば劇的に環境負荷を減らせるし、なんたって渋滞のない社会はスッキリせいせい気持ちいい!と思うのですが、それができない今の社会・・・う~ん、できないってことはないと思うんだけど・・・。クルマを個人の所有物から公共のサービスへ、「コモン」へ、と切り替えていければ、と思います。ライドシェアは単に車や燃料の削減だけではなく、他者との関わりも変えていく、と著者は書いています。「道中での連帯感、つながり、相手への関心が生まれやすい。他者への想像力を働かせる機会になる」。

 本書は途中にエッセイやコラムをいくつも挟んでおり、それぞれ読み応えのあるものばかりです。全部をじっくりは読めませんでしたが、ひとつ印象に残ったエッセイがありました。それはマイケル・ポーラン氏の「Why Bother?」(わざわざこんなことして意味ある?)。ポーラン氏は前段で環境に優しいことを一生懸命やって、でもそれが何の意味があるのか空しくなってしまうという話を書きます。そして後半で「家庭菜園の話をしよう。私がおススメしたい行動は・・・」と書き始めます。自分で畑を耕すなんてちっぽけな行為が何の役に立つの?と思うかも知れませんが、そんなことありません。自分の心の中、意識を変えていくことが大事なのです。「依存と分断、消費するだけの思考を変えていく」「野菜を作ることが本来のソーラーテクノロジーで成り立っている・・・って忘れていたことに気づく」そして「炭素を減らすことはもちろん、他の解決策も生む行動だと分かるだろう」「さらに価値があるのは思考の習慣を変えること。自分の体はまだ何かの役に立つ、と分かる」ことで無力感から脱け出せるだろう、と説いています。近所の人と野菜のおすそ分けをしたり農具の貸し借りをしたりっていう人のつながりも復活できます。
 そう、個人でできる「環境に優しい行為」なんてたかが知れている。だけど行為を通して意識を変えていく、これは本人にしかできないこと。人からいくら言われたってダメ、自発的なことだと思います。ここが一番のポイントじゃないか?と思いつつ、自分にできることを少しずつ取り組んでいこう、そう思ってます。   さあ、本返さなくっちゃ。

(※「」で括った部分は本書に書いてあったことを基にしていますが厳密な引用ではなく、中略や編集、個人的な解釈も入っているのでご了承願います。)

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