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医者からも「ムスメさんは、かなり普通ですよ」と言われるASD娘の偏歴①

不登校気味になった中学から高校を卒業するまで、私は学校のカウンセラーや担任の先生たちと密にやりとりを交わしてきました。自分の状態が分かっていない、又は説明できないムスメとの橋渡し役をしてきたのですが、大学からは自分一人でやるんだよ、と言い聞かせてきました。医者からも散々普通だと言われ、本人も大丈夫だと言うので、そろそろ引っ込んでもいい時期とも思っていました。もちろん大学には、入学してすぐ発達障害であることを伝え、大学側からもカウンセラーやスクールアシストがあるので、必要に応じて使って欲しいという案内もいただいていました。

親の私から見ると、全然そうは思えないけど、周りからあまりにも普通だ普通だと言われ続けると、私も手を貸し過ぎているんじゃないかと悩みましたが、それは小学校でやっている特別支援の仕事でも同じでした。結局、発達特性のある子供にどこまで手を貸し、どこから努力して頑張らせるかという見極めは、サポートする側の共通の悩みなのだと思います。

ムスメの特性に関しては、親の私でもいまだによく分からないことだらけで、家での言動は相変わらず酷かったりすることが多いけれど、大学に入ってからは、カウンセリングやスクールアシストも使わなくて大丈夫と言ったり、バイトも始めたりしていたので、そこはモトオと一緒で、外ではなんとかやっていける人なのかもしれない、と思ったりしていました。

発達障害グレーゾーン(知的のない発達障害)の人たち、特に女子は、問題が表に出ないよう隠したり、そういう時は平気で嘘をついたりするので分かりません。
なので、今の私は彼女の言うことは半分くらい、眉唾物だと思って聞くようにしています。

普通でいることへの徹底ぶり

ムスメは「人と違うこと」をとても嫌うので、人目につくようなことは絶対にしないと決めているそうです。「目立ったらおしまい!」と言って徹底しています。

「出来るだけ存在を消すことに、日々努力している」とも言い、その徹底ぶりは呆れる程。つまり、必死で普通を装っているので、普通に見えないわけがないのです。ムスメには過剰適応傾向があり、「それでは疲れてしまうから、周りに頼ったり、相談すること」をアドバイスしますが、本人は無意識なので難しいようです。

家でのムスメは小声でボソボソ話すので、よく何を言っているのか聞き取れないのですが、彼女はこれを自分の話し方のせいだとは考えず、私の耳が悪いと考えます。驚くことに、これは元夫も全く同じで、小学校で特性のある子供の中にもこう考える子供がたくさんいました。つまり、自分がやっている事を客観視出来ないことが原因なのですが、うちの人たちの七不思議は、これを外だと自覚なく変えているところでした。

ムスメがバイト先の人と電話で話しているのを聞いた時は驚きました。明るく大きい声で滑舌も良く、まるで別人でした。子供なら親の知らない一面を持つのは普通と思いますが、サイコレベルなので、「誰これ?問題」は、やはり特性絡みなのだと思います。

大学には入学してすぐ、体調のことなどを書く書類があったので、診断を受けていることなどを書いて提出していました。

すると、しばらくして大学のカウンセリングルームの先生からムスメの携帯に直接電話があり、繋がることを私は内心喜んだのですが、ムスメは「行かなくても大丈夫、今は困ってない」と言って、顔を見せに行くことすらさえ断わったのです。「じゃあ、何か困ったことが出来たら、すぐ行ってね」ということで、大学では支援と繋がる事なく月日が過ぎていきました。


睡眠と発達の専門クリニックで


心配していた履修登録も発達障害があると難しいと聞いていたのですが、ちゃんとできているようでした。1年が終わったところでも、単位も数単位落としたけど大丈夫と言うので、感心して褒めたくらいでした。

ただ、1年の夏休みは、今までにも増して、家から出る事なく、スマホにかじりついていたか、寝ていたかだったので、やはり心配になり、発達障害と睡眠の専門クリニックに連れて行ったのですが、そこで「ムスメさんは、かなり普通ですよ」と言われてしまい、またしても宙ぶらりんな状態になりました。

専門といってもいろいろな先生がいるので仕方ないのですが、(睡眠の専門医に繋げた話はこちら)こちらの困り具合が伝わらず『またか』とがっかりしたのは事実です。

けれど、私も私でいつまでも彼女のサポートばかりしていられなくなり、『医者が言うのなら』となってしまったのです。ムスメは外面がいいので、医者の言うことなら素直に聞くだろうとも考え、手を離すいい機会と捉えたのでした。

大学生活、本人ひとりに任せたら


それから10ヶ月。私は小学校での支援の仕事を減らし、新しい仕事をいくつも掛け持ち、忙しくしていました。

そんな折、二人ともコロナに罹ってしまったのですが、治った辺りから、最近悪夢ばかり見るとムスメが言い出し、何か様子がおかしいのでした。そして、春学期が終わり、明日から夏休みという日の夜、思わぬ事実が発覚したのです。

「春学期はどうだった? 成績はいつ出るの? 明日から夏休みだけど、どうするの?」と変わり映えしない、いつも聞いているようなことをいつものように何気なく聞いただけのつもりでした。なのに、なぜかムスメが怒り出したのです。

彼女が怒るということは、「何かある」ということでした。


ムスメの「大丈夫」に足をすくわれる


「学校がどうだったか聞いてるだけなのに、なんで怒ってるの? 
まさか、学校行ってないんじゃないよね?」

「・・・」

そう、それは、まさかの大当たりだったのです。

それまで激昂していたムスメが突然黙ったので、今度は私が動揺する番でした。

こんなに動揺したのは、モラハラを繰り返す元夫と必死に会話をしようとしていた頃以来でした。

ムスメは、口頭で言われたことがすぐ理解できないのに、分からないとすぐ言えない為、授業についていけなくなっていたようでした。学校には行っていたものの、カフェなどで時間を潰していたそうです。バレた時でさえ、過小評価というか、それは2年になってからだとか、それも後ですぐバレたのですが、また嘘をついていたのでした。

発達障害があると、同じ間違いを何度もしてしまうことがよくあります。ムスメが私立中学に入った時も同じようなことがありました。1年の1学期は良かったのに、2学期以降授業についていけなくなり、不登校気味になりました。その時は、相談した学校側にも問題があって、結局辞める道しかありませんでしたが、状況はその時と似ていました。

不適応と嘘

ムスメは、出来ないことへの劣等感が強いので、それを隠すために嘘をついてしまいます。嘘だけは絶対にいけないと小さい頃から、事あるごとに言ってきましたが、(つまり小さい頃からよく嘘をつく子だった訳ですが、そこは親ですからそう決めつけたくありませんでした)不都合な真実を隠したい彼女の性は、そう簡単には直らないのでした。

親は子供の言葉を信じる生き物なので、見事に何度も騙されてきました。そして、子供がついた嘘をベースに解決策を考えますから、間違いなく誤った方向にいく訳です。そして事実を知った時、また振り回される。難しい問題です。

気に入って入った大学で、授業は大変だけど大丈夫、と騙されていたことへのショック、悲しみと怒り。これから一体どうしたらいいのかという戸惑い。元夫とムスメの特性から何度となくこういう気持ちを味わされてきましたが、こう何回もあると、もう溜息しかでませんでした。

虚言癖のある特性のある子供は時々、小学校にもいて、子供の嘘なので大人にはなんとなく嘘だと分かるのですが(大人でも普段関わっていない人だと騙されますが…)子供同士だと信じてしまうので、後々問題になったりすることがあったりします。

嘘をつくと困るのは、誰でもない自分だと、今度こそ学んでくれたらいいのですが、痛い目にあっても繰り返すのが特性だったりするので、家族は本当に大変なのですが、家族も距離を取ることは大切で、本人にはもっと自分の問題に向き合ってもらわねばいけないと考えさせられています。


怒濤の進路の話は続きます。




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