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カサンドラになる過程

好きで結婚したことが呪縛になる


確かに私はモトオを好きになって結婚しました。

格好が良くて性格も良く、頭も良さそうなのに、恐ろしいほどドジで不器用。それまで女性とつきあったことがないというのも、初めは意外だったけれど、つきあってみると、そういう事かと納得出来るものがありました。

それでもいいと思えたのは、モトオが穏やかで優しい性格だったから。何より私のことが大好きで「やや子を喜ばすことが自分の幸せ。 今はできないこと(英語や料理)も、やや子のためなら頑張れる」と言って、一生懸命だったからです。

ぜんぶ嘘でしたけど。

彼からもらった結婚指輪の内側には「Do you trust me?」と刻まれていました。映画「アラジン」からのセリフを気に入って使ってたけど、考えてみたら「信用して」と何度も言ってくる人ほど何かある人はいないのかもしれません。

ずっと後になって分かったことは、彼は言ったことを覚えていないので、嘘を言ったという自覚すらないということ。いつも自分は悪くない前提なので、全て他の誰かが悪くなり、言うことも二転三転するのでした。発達障害の特性を知らずにそんなことをされ続けたら、怒らない人はいないし、知らずにつきあえば誰だっておかしくなってしまうのでした。

特性的なものが見られる小学生の中にもつい嘘をついてしまう子供が時々います。明らかに嘘なのですが、嘘をついている感覚がないようなのです。問題になることがあるので、気づいたら責めずに、嘘はいけないことをさらっと教えると一旦は聞いてくれますが、反省することはなく、ただキョトンとしています。周りがそのことを知っていればいいのですが、知らないとトラブルになるので、小さい頃から自覚させることはやはり大事なことなのです。


私の場合、発達障害という言葉も概念も全く知られていなかった時代でした。

私は彼が元々変わっていて、かなり不器用だという事も知った上で結婚したので、結婚して別人のように変わってしまったことも、そういう人だと見抜けなかった自分が悪かったのだと自分を責めていたのでした。

気づけばとんでもないことですが、その要因は、周りの反応にもありました。

モトオに対する違和感を周りに話すと、自分で選んだ夫への不平不満と取られ
「でも、好きで結婚したんでしょ?」と言われました。

つまり酷いことをされても、好きで結婚したらそれは自己責任というのです。明かに間違いだと今は思っています。

その時の私は文句を言う人がそもそも嫌いだったので、モトオを悪く思ってしまう自分が悪いんじゃないかとどんどん自分を責め、我慢するようになっていったのでした。


気づけば、自分を責めていた


「彼の言葉を信じて結婚した私は、なんてバカだったんだろう」
と、ずっと自分を責めました。それこそ別れた後つい最近まで、そうでしたから自分でも驚きます。

けれど、考えたらおかしな話です。

確かに私は彼を好きになって結婚しましたが、私が好きになった人が恐ろしいほど変わってしまっていたのですから、自分を責める必要なんてなかったのです。

都合よく人格を変える人がおかしいのです。


この話題にぴったりな曲があります。

Lauv の”Who"という曲。男女の立場が逆ですが、初めて聞いた時は自分の歌かと凍りつきました。特性が世界万国共通しているからなのでしょう。
歌詞はこんな感じ。

Who are you? You're not the girl I fell in love with, baby.
Who are you? Something has changed. You're not the same. I hate it.

というサビは、私が結婚して彼に対して思った私のセリフでした。Lauvがミュージックビデオで心情を演じる様子も「昔、こうやってテーブルに向かい合って座り『結婚してから別人なんだけど、どういうこと?』と責めるように何度も彼と話をしたことを思い出しました。
もしかしたら、この曲の彼女も発達なんじゃない?と突っ込みたくなりますが、そんな辛い経験をこんな素敵な曲にできるなんて流石だと思いました。お陰で私の気づきに繋がりましたから、歌って凄いです。

歌詞の内容は胸に突き刺さり過ぎますが、BTSのグクやジミンの透き通る歌声に癒されるので、これもありかと思う次第です。


因みに、発達の特性のある人と話し合う時は、このように向かい合って話すのはNG。初めから責めるように話すとか、このビデオのように感情を表して話すのもNGです。これくらいの心の入れようでも特性がある相手だとパニックにさせるだけで、こちらもエネルギーを消耗するだけですから止めた方がいいのです。

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