元には戻れない事実を受け入れてから始まる
今回は、こころの問題だけでなく、心身の大きな不調の話です。
このマガジン『こころの薬膳』の中にも書きましたが、うつ病になって治療をし、寛解して社会復帰をしたとして、発病前の通りには働かない方がいいです。なぜならば、発病前の働き方が自分のキャパを超えていたから発症した、のだろうからです。
自分の本当の許容範囲内で働いたり生活したりすれば、脳も体も大丈夫。だから、全てを60%くらいに。
ということです。
これ、実は、うつ病に限ったことではありません。
例えば、乳がんで乳房を切除します。こういった切除手術によって、中医学的には、体は『虚』に傾きます。『虚』というのはきょと読み、うつろを意味します。空っぽまでは行かないけど、本来あるべき状態に比べると『足りない』状態。
内視鏡で胃のポリープを取りました、くらいの切除量ならもしかするとすぐに戻るかもしれません。消化器は特に、少しくらい欠けても粘膜が元に復活することができますし。
しかし、乳がんや子宮がん、大きな範囲で胃や腸などを切り取るようなことがあれば、それはもう復活しません。『虚』です。
物質的に足りなくなるので、そこにばかり目が行きますが、気も足りなくなります。胃腸を切り取れば、消化機能が足りなくなる。乳房や子宮は性ホルモンの分泌に関わるようなところが足りなくなる。
そして、どちらも、体力も削られます。体力も中々復活しません。そして、月日が経つにつれ、年齢とともに体力は減っていくので、やはり発病・手術の前と同程度には戻らないのです。
何かを切り取る手術以外でも、ひどい炎症が起きたところは、やはり機能を失い『虚』の状態になることがあります。
結局、大きな病気やひどい症状が起きたら、「治った」ように見えても以前には戻れない。
では、どれくらい大きなものから、「戻れない」になるの?
これは人それぞれなんです。
今、新しい感染症が流行っています。これも、症状のひどさは人それぞれですよね。
カゼみたいな症状で済む人、ひどい肺炎になる人、心筋や血管系の症状も出る人など。
なので、病名で、この病気だと「戻れない」と言い切ることも、「戻れる」と言い切ることもできないのです。
どんな病気になっても、戻れないかもしれない。
なのに、病気になったら薬を飲めばいい、手術で治るようになってよかった、などと考えている人が多い気がします。今回の流行病ですら。
と、話がそれました。
大きな病気をしたら、それ以前にはもう戻れない。
それはうつ病に限らない。
この事実をまず受け入れるところから、本当の社会復帰は始まると思います。
受け入れるということは、その状態を楽しめること。
「前よりできない」と思うのではなく、「前より余裕がある状態を保つ」。
余裕があるのだから、「あれ、やってみよ」と思った時に、すぐに始めることも可能なはず。そしてやってみながら、それを続けつつも余裕が戻ってくるように、時間・金銭管理をする。
それだけ。
日々の暮らしを60%でやれているにに、「あれ、やってみよ」が浮かんでこないなら、まだ治療過程なのかもしれません。まだ、しっかり寝たり休養したりすることが必要です。
バリバリのキャリアウーマンみたいに言われていた30代、実はすでに60%だったんですが、最初はそんな自分が嫌でした。こんなもんでバリキャリとか言われたくない。もっとできる。
そんなふうに悔しい気持ちを抱えていました。
でも、今となっては笑い種です。
そんなことどうでもいい。
今、働き方としてはもう40%くらいになっています。あれやらなきゃなあと思うこともあるし、この動画をもう少しビジュアル的にきちんとできたらなあなどというのもありますが、これくらいでいいよと言ってくれる方々に、本質だけはきちんとお届けするつもりでやっています。
そして、空いた時間に、余裕の気持ちで、自分が笑顔になれることを少しずつやったり、家族のためになりそうなことをしたりしています。
それが楽しい。
うつ病になった20代終わり、乳がんを切り取った40代頭、全くもって「元に戻る」はずなんてないですが、今、とても楽しくて幸せだと言えます。
「足りない」のに充実しています。
元に戻れないことは、充実しないこととイコールではありません。
本来なら、元に戻れないのだから、病気にならないようにしっかり養生しましょう!そのための中医学です!みたいな話をしなくちゃいけないのかもしれませんが、すでに戻れない人はたくさんいるので、ひとまず今回はこういう記事を上げておきます。
戻れなくても、100%じゃなくても、人生は輝かすことができる。
自然の理に乗っかって生きていれば大丈夫。
あなたの本当の光を見つけてくださいね。人が言うやつじゃなくてね。
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