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痰・水・湿邪・津液

人体の75%は水で出来ている。この水はH2Oを意味していて、液体の水とは限りません。科学の世界でもそうなんですが、中医学でも体内の水分は様々な形をとります。
一番よい形の水分は「津液」と呼ばれます。津液が十分あり巡っている事は、川がさらさら流れていくイメージです。大きな川になり、そのままざばーっと海に入っていく。川の水が足りなければ土地が潤いませんし、流れも途切れがちになります。何かの理由で川の流れが止まれば濁るし、下流に水が足りずに困ります。海に入った水はゆくゆく蒸発して雲になり雨になり、また川になります。川にならず土に浸み込み、大地を潤し育み癒す部分もありますね。そしてそれもいつか川になったりして海や空に戻る。この巡りも体内でも起きています。まずは津液の「よい巡り」を知りましょう。

津液は、食べ物から脾が取り出します。または飲んだ水分がそうなります
そして肺に持ち上げられ、肺の宣発機能でスプリンクラーのように散布されます。
津液の通り道は「三焦」と名付けられていて、「上中下・焦」と同じ名前ですが別物と考えられています。そして更に具合の悪いことに、この三焦は科学医学にないだけでなく、中医学においても「あるけど、どれか分からない」ものとされています。なんてこった。

肺によりまき散らされた津液は、いろんなところを潤したり冷ましたり癒したりしながら三焦に入って次の場所へ次の場所へと巡り、最後は腎にやってきます。これ、気の流れと似ています。臓腑の働きで見ると、気と津液は同じ流れをします。働きが違うし、形態が違うので、それぞれの場所での挙動は違いますし、最後の腎では腎気によって再利用するか尿として捨てるか、変化させられます。気は基本的には再利用するか使い切って消耗するか、であって、変化させて捨てることはありません(漏れる事はあります!)
腎で再利用することになった津液たちは、また肺から散布されて全身を巡るルートに乗ります。

このようにして体内をきれいに津液が巡ればいいのですが、色んな理由で津液の巡りは邪魔されます。すると津液は汚れたり形を変えたりします。その変化した状態を「水」「飲」「痰」「湿」と呼びます。ここでは痰と湿について書きます。
まず、「痰」というのは現在日本でもあります。が、それは喉元に溜まり咳をすると出てくるようなあの痰の事ですね。しかし、中医学の痰は、それだけではありません。基本の考えに戻ると、津液が巡らなくなって固まってきたものは全て、痰と呼びます。これは押さえておいて欲しい考え方です。なので、このnoteの中に「痰」と出てきたら、呼吸器の話とは限らず、津液の巡りが悪くなってどろっとした塊になってきたものがどこかにあるんだな、と思ってください。
そして「湿」というのは外邪として湿気のひどいのが入ってくる場合もありますが、津液の巡りが悪くて湿邪として体内に生まれる事もあります。これも結局は津液の巡りが悪くて生まれるものです。
痰も湿も津液が巡らなくなると生まれますよ、ということを理解してください。体内で生まれた時のイメージをしてもらいたいなと思います。
湿疹やめやに、頭がもやっと重たく痛い、体がだる重く疲れた感じがする、関節がじくじく痛む、足がむくむ、などなどの症状が出たりします。湿と痰で少し違いますが、大体こんな感じです。

では、湿や痰が生まれるのは、何故か。
1つには先述したように、外邪として入って来た湿邪がある場合。そしてその湿邪が、更に津液の巡りを妨げ悪化する場合です。
そして、津液のポンプ機能である脾、津液の散布をしたりキレイにしたりする肺、リサイクルの判断と作業をしている腎、それぞれが弱った時も、津液が津液でいられなくなり、痰や湿になります。
巡りを妨げられるパターンとしては、気の巡りが悪くなったり、三焦に瘀血や気の塊がのっかったりしても津液の通り道が塞がれ、津液が水飲痰になっていきます。筋肉を動かすとむくみが取れるのは、これと関連しているかもしれません。
外邪の湿邪をはらうには袪湿、脾を元気にするには健脾、肺の働きを高めるには補肺や宣肺、腎の働きの中でもリサイクルを高めるには補腎陽、をします。
そして、痰自体には、化痰と利水をします。化痰は痰を刻んだり緩めたりしてほぐし、水にします。それだけだとまだ、「水」として体内に残り悪さをするので、利水するのです。二段構えで対応しましょう。(これは瘀血や気滞の時も同じ考え方をします)
・袪湿:アルファルファ、空心菜、にんにくの芽、豆もやし、さくらんぼ、花椒、カルダモンなど
・健脾利水:ハム、すずき、はとむぎ
・健脾化痰:落花生、アーモンド
・健脾化湿:ふじ豆、空豆
・肺・腎・脾に元気を:すずき、山芋
・化痰:コールラビ、へちま、枇杷の葉、あおさ、海苔、くらげ、桂花など

夏場や、体質が熱証に傾いている人は、痰が更に熱痰になることもあります。この場合は、化痰や袪湿の中でも涼性のものを選んで使ったり、清熱や瀉火のものと合わせたりしないと、体の中であんかけのあんがどろどろアチアチの状態で溜まります。実はがんがこれだったりします。しかもどろどろではなく塊の痰ですね。化痰しても中々ほぐれなくなっていますし、熱も中々引いてくれません。だからそうなる前に。普通の痰や熱痰のうちに手を打てるといいのですね。
痰の病気は他にも重たいものが色々あります。
日本は海に囲まれていて、元々痰や湿が溜まりやすい人が多いです。甘い味を食べ過ぎたり、量の食べ過ぎやストレスで脾胃に負担をかけすぎたりすれば、それも痰湿を生み出すことになります。また、ストレスで肝が昂ってくれば、脾への相剋が行き過ぎ(相乗)て脾が弱ります。
内外共に、日本人は痰湿の危険にさらされています。少しでもリスクを軽くするために、自分でできる事は、一回の食事量を腹7分にする、甘い味のものを減らす、よく寝る、ということです。
睡眠と脾との関係はまだよく解明されていません(不床のうち脾虚の証があることは分かっています)が、痰湿を溜めない対策の一つとして睡眠も大事にしてくださいね。

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