「辛いものを控えてください」と漢方屋さんに言われた人の話

割引あり

 20年前に比べて漢方薬を使う方、増えましたね。(私が『20年前』と比べることが多いのは、たぶん、その頃に薬剤師になり薬膳師にもなったので、記憶がしやすいため)
 お医者さんやドラッグストアにもあるエキス剤だけでなく、漢方薬局さんでいわゆる「刻み」の漢方を選んでもらう方もいらっしゃる。
 亘lab.と前身のやわるしすは、どちらも「薬局」ではないため、法律上「漢方薬」を出してはいけないことになっています。代わりに「薬膳茶」をお出ししたり、薬膳的アドバイス(実際の食材はスーパーや通販で自力購入してもらう)をしたりしています。
 一方で、亘lab.は中医学だけでなくその他の「陰陽論に基づいた学問」を教えるコースも開催しています。そちらの生徒さんの中には、亘lab.ではなく、別の漢方薬局さんでみてもらっている方もいらっしゃいます。地理的問題だったり、慣れだったり、いろいろあるので、お好きなところで見てもらったらいいよねというスタンスです。(だから、易や暦の講座に来ても薬膳茶を買えとかそういう流れにはなりません。ご安心ください)
 亘lab.の運営するオンラインサロン「亘CLUB」のメンバーのうち、1割程度は体のことは別のところで見てもらっているかなと認識しています。健康に関する集まりではないグループで、1割の方が東洋医学を使っているなんていうのは、20年前には考えられなかったと思います。

 それくらい一般に認知されてきた漢方ですが。
 漢方薬を使っている方の話の中に出てくるセンテンスで気になるものがいくつかあるのですが、今回はその一つを取り上げてみたいと思います。

「辛いものを控えるように言われている」

 誰にって、主治医とも言うべき漢方屋さんに言われたのですよね。
 そういう時、大体、「あー、そうね」と内心思っています。もしうちに相談に来られたら、私も多分そう言うと思うんです。

辛いものを控えた方がいいということはどういうことか

 辛いものを食べると体はどうなるのか、を知ることで、このアドバイスの意味が見えてきますよね。まずはそこを書いておきます。
 その前に、中医学では「味」というもの自体もチカラを持っているという考え方をします。食材がそれぞれチカラを持っていて、そのチカラを使うのが薬膳ですが
、食材ではなく「味」自体の持つチカラ。
 例えば、
「甘味」は「補う。調和させる」
「酸味」は「ぎゅっとさせる」
  ※詳しくは『たべもののちから①四性五味帰経』をご覧ください。

 そして「辛味」は「発散、行気」といい、体の中のものの動きを内側から表面に向かわせたり、気の巡りをよくしたりするチカラを持ちます。
 内側から表面に向かわせる働きの代表例は「発汗」です。辛いもの、唐辛子なんかを食べると汗が出ますよね。それと同時に、毛穴に向かってぶわっと動く感じを感じられる人もいるかも知れません。その感覚、実は間違ってないし、幻でもないです。
 この2つのチカラ・はたらきと同時に、「熱を生み出す・乾燥させる」はたらきも、辛味は持ちます。

 その上で、「辛いものを控える方がいい」ということは、どういうことか。上述のチカラを取り込んではいけない体調・体質だということですね。

発散・行気しちゃいけない人とは

 気が足りない人はこれに当たります。気というエネルギー物質は、体内に適量あって適度なスピードで巡っていることが健康の条件です。これが足りないのに巡りだけ頑張らせると、ガソリンが足りないのに無理やりエンジンを回せとするようなもの。危ないですね。
 ただし、このパターンは、同時に補気をしてあげればうまくいく場合もあります。なので、それだったら漢方屋さんがそういう薬を出してくれるでしょう。

熱を生み出しちゃいけない人とは

 体の中に無駄な熱がある人です。
 中医学に出てくる「熱」というのは、理解しにくい方が多い概念のようですが、体の中に熱っぽいものがあるのだなとイメージしてもらうのが一番早い気がしています。実際、それ以上でもそれ以下でもないので。体温計で測る熱とは全く違うし、炎症とイコールかと言われればそうでもないですし。一応、リンク先に「暑・熱」として書いているので、よろしければご覧ください。『病気になる仕組み③五邪六淫
 で、「熱」がある人というのは、その「熱」のせいで体調不良になっているわけなので、辛味を摂ることで「熱」を増やさないようにしてください、ということです。

 その人の病気の元になっているモノや現象があり、辛味はそれらを作り出すチカラを持つから控えて、ということ。わかりやすいですよね。

 でも、「辛いものを控えてください」と言われたのに辛いものを食べると症状が軽くなる気がする、という方がいらっしゃるんです。これは何故なのか。
 これは熱を持っている場合のうちの、ある特定の種類の人に起きるジレンマです。思い込みなどではなく、実際に症状は軽くなってしまうし、理論上軽くなるのもあり得ることなのです。でもそれはいっときのことで、辛いものを食べ続けたりたくさん食べれば、せっかく漢方薬を使っていても元の木阿弥になりますし、状態が前より悪くなる可能性もあります。
 では、何故そういうことが起きるのかについて書いていきますね。
 これは、どこに熱があるのか、によるのです。

特殊な熱。でもたくさんの方がこのパターン

 体の中に「熱」があるという状態に、何故なってしまうのか。ざっと書き出すとこんな感じです。

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