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子供の脳がもつポジティブな力の塊/スマホが子供の脳の発育を遅らせている

幼児期にスクリーン(テレビ、タブレット、スマートフォン)を使い過ぎた子供に、脳の発達が遅れる障害がでている、という、心のどこかで「だよね」と思ってしまう研究結果を読みました。

アメリカでは5歳になるまでは、スクリーンタイム(テレビ、タブレット、スマホの合計使用時間)は1日1時間以下を推奨しています。今回の実験は1日1時間以上のスクリーンタイムを、親と全くコミュニケーションを取らずに使用している3-5歳の子供を対象に行われました。彼等の脳をMRIでスキャンしたところ「言語力、読み書きの能力、認識力」を発達させる鍵となるエリアである大脳の白質部分の発達が通常より遅れていることが判りました。

この実験を行った医師、ジョン・ヒュートンは「人間の脳は5歳までに最も急速に発達するので、この研究結果はとても重要です。この時期の脳は柔軟で様々なことを吸収しています。そして、この時期の経験は脳に強い繋がりを持たせ、それらは生涯続きます」と述べています。

ヒュートン医師によると、大脳の白質部分はケーブルのような役割をしているそう。脳の様々なパーツを繋げる電話線みたいなもので、白質部分のおかげで脳内は会話し、それぞれのパーツが機能しているそうです。これらケーブル(白質部分)の発達が欠けると、脳の処理スピードが遅くなります。その一方で、読書をしたり、様々なことを体験したり、学んだり、楽器を練習したりすることは大脳の白質部分を形造り、脳組織を発達させる効果があることも、新たな研究結果として発表されています。

今回の実験は、キンダーに入園前の47人の子供を対象に行われましたが、その子供達の平均スクリーンタイムは1日2時間。1日5時間からスクリーンタイム推奨時間の1日1時間を少し超えている子供達を集め、その子供達の家庭内環境(ストレスや親のメンタルヘルス)は実験結果から排除したそうです。

また、ヒュートン医師は「勘違いしないでほしいが、スクリーンタイム自体が脳にダメージを与えている訳ではない。スクリーンタイムが、幼児達の脳のネットワークを強化できる様々な実体験を奪っている、という点に注目してほしい」とも語っています。

個人的に興味深いな、と思ったのが子供用教育アプリの危険性です。これらのアプリは子供の教育や脳の発達に関する専門家が作っているケースが少なく、実体験や子供同士で遊んで学べること以上にアプリから学べるは少ないと、危険信号を点滅させ始めているようです。その一方で、3-5歳の子供に良くプログラムされている教育番組「セサミストリート」などを見せるのは、認識力が高まり、言葉を学べ、社会性の発達に繋がるそう。

今年はセサミストリートが50周年を迎えたこともあり、アメリカではセサミストリート特集の記事が増えています。

セサミストリートといえば、エルモやビッグバード、クッキーモンスターなどアイコニックなキャラクターが沢山いますが、実はクッキーモンスターは私が子供の時ほど、クッキーを食べるのを止めたそうなんです。「毎日食べるもの」と「時々食べるもの」を子供に自ら学んで欲しいと、意図的にクッキーを食べる量を減らしたよう。

最新のエピソードではクッキーモンスター達が「3匹の子豚」になり家を建てようとします。クッキーモンスターはクッキーの箱で家を建てるのですが、風に飛ばされてしまい、やっぱり石の家がいいよね!で終わるのですが、クッキーモンスターはただクッキーを食べるのを止めただけでなく「クッキーを食べるより、外に出て素敵な石を見つけよう」というメッセージが込められていて、流石だなぁ、と思いました。

また、セサミストリートの制作会社は9.11以降「世界は変わり始めている。我々は、何か新しいことを始めなければならない」と考えていたそうで、「ガリバー」という名の新しいツバメのキャラクターを作成。ガリバーは自分が鳥だからという理由で、鳥達としか遊びません。ビッグバードの友達スナッフィーは鳥じゃないので絶対に遊ぼうとしないガリバーに、ビッグバードはこう説明します。

「ガリバーがスナッフィーと遊ばないなら、僕もガリバーと遊べないんだけど、みんなで一緒に何かやってみない?」

ニューヨークにある制作会社は、ニューヨークで起こった悲劇9.11テロ以降、「中東人だから」という理由で仲間外れにしたり、いじめられたりする子供がいることを知り「ガリバー」というキャラクターで4つのエピソードを作ったそうです。ビッグバードの言葉は、子供と親が一緒になって考え、人種差別による衝突を解決できる「具体的な言葉」になれば…という想いを込めたそう。

アメリカの中でも特にニューヨークは様々な人種が交わる特殊な場所ではあるけれども、そのような特殊な場所に住んでいなくても、幼い頃から「多様性」について、まず学ぶ楽しさを得て、それぞれが自分らしくいること、そして人と人とが繋がる素晴らしさを知ることは、これから先の人生を謳歌するのに必ず役に立つ。そう思うと、スクリーンから得られることは、案外大人も少ないんじゃないかな、と思ってしまいます。


Bibliography :セサミストリートのキャラクターはこうして革命をもたらした

Bibliography :MRIはスクリーンタイムが3-5歳児の脳の発達を遅れさせていることを示している








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