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許すことに肯定的な人

テキサス州。白人女性警官のアンバー・ガイジャーが自分の部屋と勘違いして黒人男性のアパートの部屋に入り、アイスクリームを食べながらソファの上で寛いでいた男性を不審者として撃ち殺す、という痛ましい事件が起こりました。

どう考えても女性警官のアンバーが悪いのに、加害者が「白人」で被害者が「黒人」だからという理由で、アンバーに無罪判決が出そうになっていて、こんな理不尽なことがまだ起こっているなんて…と遺族の気持ちを考えるとやり切れませでした。

その女性警官アンバーの公判で、被害者の兄弟が「I love you as a person,and I don’t wish anything bad on you.I don’t know if this is possible,but can I give her a hug please 」

「アンバーのことを人として愛していますし、あなたに悪いことが起こるのを望んでいません。可能かどうか分からないけれど、彼女にハグをしてもいいですか?」

と裁判官に申し出たのです。裁判官は涙を拭いながらハグを許可し、ハグされたアンバーも涙を流していました。この映像は瞬く間に世界中に拡散されました。映像を見た瞬間、涙した私もインスタグラムでシェアしたのですが、「考えさせられた」「涙が出た」というリプライが多く「人を許す」ってどういう意味なのか私自身、とても考えさせられました。

(この動画がリンクされた記事を、1番下に貼っています)

アンバーはSNSに黒人差別的な内容をポストしたり、逮捕された直後も冷静だったことから、アンバーが謝罪しても、それを信じるな!という空気の中、彼女は懲役10年の有罪判決になりました。これは求刑の28年を大きく下回るだけでなく、テキサス州での殺人事件の平均懲役が40年ということを踏まえても、余りにも軽すぎるショッキングな判決でした。

この判決結果を見た被害者の地元ダラスの人達は、「彼女は許しに値しない」と反発。犠牲者の母親は「懲役何年で自分が納得できるのか分からないけど、自分の息子に不当な行為が行われたことは分かります。彼は今日、この瞬間も生きるに値する人物であったことは間違いありません」とコメントしました。

しかし、事件はこれで終わりではありませんでした。アンバーの有罪判決を決定的にした、鍵となる証言者ジョシュア・ブラウンが殺されたのです。彼もまた、黒人でした。アンバーが”警察官”だった為に、多くの人が証言を拒む中、勇気を振り絞り、唯一証言台に立ったのがジョシュアでした。

ジョシュアが殺害されたのは、ドラッグ売買のもつれだ、と地元警察が発表。しかし、ドラッグをくすねていたとされるジョシュアの部屋は荒さた形跡がなく、何も盗まれていないことが分かりました。アメリカでは黒人が突然殺害されると、ドラッグ売買のもつれで処理されることは多々あるのに、白人が殺害されると滅多に”ドラッグ売買のもつれ”は殺害理由になりません。

彼は何故、誰に殺されたのか真相は知る由もなさそうに思えましたが「ジョシュアは処刑されたんだ、彼に正義を!!」#Justice4JoshuaBrownというムーブメントが起こり、この動きは今尚続いています。

アメリカの黒人と白人を分断する社会問題や差別は、いつも黒人が犠牲になり「許すこと」で何とか分断や争いを食い止めています。被害者が「許すこと」を強いられる世界の中で、「許せない」という態度を示した被害者が黒人だと、「なぜ許せないんだ?」と責め立てられることもあるようです。

「Life is unfair 」「人生は不平等だ」

「人生は不平等」という言葉を幼い子供も口にするアメリカで、人種差別や社会問題で常に犠牲を強いられる黒人。そんな中でも時々、他人(白人)が得しているのを妬まず、自分を犠牲にしてアンバーにハグを求めるような聖人が現れる。そして聖人のような行動を取れない人達が、黒人だという理由で不当に責め立てられるのです。こういう問題は本当に難しい。

あの動画に涙した自分は間違えていたのだろうか。ずっと考えている。


Bibliography:アンバー・ガイジャー、男性の自宅で男性を殺害した元警察、懲役10年

Bibliography:ジョシュア・ブラウン、アンバー・ガイジャーの殺害事件証言者、ドラッグ売買のもつれで殺害される

Bibliography:許しで息子を失った事実は消せない。アンバー・ガイジャーに殺害された犠牲者家族の証言







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