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意識高い系という価値観

「意識が高い」という本来の意味はポジティブなはずですが、ここ数年で皮肉を込めたネガティブな言葉に変わってしまったように思います。この「意識高い系」という英語はあるのかな?と思い色々調べて最終的にグッときたのが「hipster 」「ヒップスター」という言葉です。

「ヒップスター」とは、人とは違う個性を追求する若い世代の人たちの総称です。本来の意味は、皆んなとは違う服装をしたり、世の中がダサいとしている”常識”をカッコよくする為に世の中に貢献したい気持ちが高い人たちのことでした。この人達が”マンハッタンしかニューヨークじゃない”という価値観を変え、家賃の安かったブルックリンに個人経営のセンスが光るカフェや洋服屋、レコード店を創り出したのが今の”オシャレなブルックリン"の原型だったと言われています。

ところがスマートフォンが浸透しだした頃からFacebook などに自分の写真を上げて”自分は個性的なんだ”という自撮りをする人たちが増えました。それがエスカレートしだして、個性を表現して着ていたファッションや、個性的な考えだと思いシェアしていたトピックスが、いつの間にか”ヒップスター”って皆んな同じ服装で同じことを言っているよね…に変わってしまい、遂に個性などない”自称意識高い人”として”ヒップスター"という言葉は皮肉を込めて使われてようになりました。

ここまでは、日本の意識高い系とブルックリンのヒップスターは似ているな、と思うのですが、ここから先が諦めないアメリカの凄いところです。

ブルックリンのヒップスターは「個性的であることは難しいよね。でも、意識高くて何が悪いの?」と反論。ヒップスターのつながりを大切にし、プラスチックで環境破壊するの反対!使い捨てファッション反対!牛肉で環境破壊するの反対!性別で判断するの反対!とSNSなどで発信し続けていました。そして、2016年頃には”ヒップスター”という言葉すら、あまり聞かなくなりました。

そして気がつけば、彼らが新しいスタンダードになっていました。

今でも彼らは、意識高く取り組んでいます。

日本人にも馴染みのある方が多いと思うThe NORTH FACE というアウトドアショップのウィリアムバーグ店では「環境に配慮し店内では音楽をかけていない」と入店した人たち全員に伝えています。私はレコードやCDはゴミになる可能性があるので、環境破壊に繋がるのは理解できたのですが「音楽のストリーミングサービスも莫大な量のデータを冷却する為にCO2を大量に排出しているんだ」と云われハッとしました。

また、マンハッタンのど真ん中で毎週末行われるりマーケットでは、地元ブルックリンだけでなく、様々なベンダーの方から野菜や果物を直接購入できるようになっていて、農業の安全性について学べる機会があります。「オーガニックだと、それだけで安全という解釈は間違っている。今は種が遺伝子組換されているから種が安全かを確かめないといけない、日本も確かアメリカの種を使っているはずだ」と教えてもらい、”種子法撤廃"という悪魔のような日本の法律改正を知るきっかけになりました。

数年間“ヒップスター”と皮肉られていた言葉は、何か問題が起こった時に、人とつながって立ち向かえる力に変わっていました。1人1人が意識高く考え、地に足をつけながら、みんなとつながっていく。ニューヨークは様々な人種がいる特殊な場所ではありますが、そのような特別な場所に住んでいなくても「意識高い系」「ヒップスター」という価値観を築き、前向きな心を持つことはできるものだと思います。

「意識が高いのは良いことなんだ」という価値観を大切にして、希望ある未来に関わっていけたらいいな、と思っています。


Bibliography:ブルックリンのヒップスター達の終わり











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