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私たちが1兆7000億円で得たもの

「旅先は単なる場所ではなく、新たな物の見方である」ヘンリー・ミラー

私はこの言葉が大好きです。素晴らしい景色や美味しい食べ物、ステイ先での体験など、旅の思い出は様々ですが、その体験が気づかせてくれる人の温かさ、世界の大きさ、自分の小ささ。それこそが、旅の本当の魅力だと思います。

私は何日も掛けて、旅行の計画を立てるのが苦手なので、いつも突然思い立って旅行に出かけていました。

普段は家で本を読んだり、何かを作っているのが好きなのですが、1度出掛けると、あぁやっぱり旅は楽しいなと、世界の隅から隅まで探検したくなります。

ところが、今年はコロナの感染拡大で世界中が旅行どころではなくなってしまいました。

そんな中、Airbnbが8月中に上場申請する、というニュースを読みました。

アメリカではロックダウンが始まったニューヨークなどの都市部の企業が、オンライン業務に切り替えたのをきっかけに、「これは都会を離れて暮らすチャンスだ」と、多くの人が家族と共に過疎地にある一軒家のAirbnbに避難し始めました。ホテルなどと違い、一軒まるごと借りる民泊システムのAirbnbは、家族以外の人と接触するリスクが低く、「感染症対策しながら旅行ができる」という希望を生み出したのです。

コロナが世界中にアウトブレイクする前の今年3月、Airbnbは上場を申請する予定でした。ところが、世界中の大都市がロックダウンし一気に旅行需要が減り、Airbnb のキャンセル総額は10億ドルに…上場どころではなくなったのですが、ここでAirbnbのCEOブライアン・チェスキーは一気に勝負に出ていました。従業員2000人をレイオフし、2億ドルの調達に成功。ホテル並のラグジュアリーで従業員と宿泊客の接触が多いエアビーを廃止し、個人が家を貸す本来のサービスに注力しました。

そして、過疎地に避難する人に一軒家のエアビーが人気になり、更にはWFH(在宅勤務)需要が高まり、自宅近くにオフィス代わにエアビーを借りる人が続出。1ヶ月単位での滞在を増やすことに成功したAirbnb は、ついに8月中に上場申請した見方が出ています。

Bibliography:ブライアン・チェスキー:この9週間はエアビーの歴史上、最悪にストレスフルだった

つまり、世界中の行き場を失ったお金はAirbnbなどの将来性あるテック系に流れているのです。

これは日本にとって出遅れているテック系ビジネスや、日本経済の軸である観光業にとって大きなチャンスなんじゃないかな…、とふと思いました。

私は会社員をしていた時にベッドオフィスがフランスにあったこともあり、フランス経済と日本経済は良い意味でも悪い意味でも似ているな…と感じたことが多々ありました。国内経済自体に活力はないものの、食べ物がとにかく美味しく、大多数の人がそれなりの生活をおくれていて、海外からの観光客は喜んでやって来る。

フランスは酪農大国なので第一次産業は、未だにフランス経済の主軸のようですが、日本経済は第一次産業もアパレルなどの製造業もサービス業も毎年必ず前年比を割る中、観光業無しにして、一体何を軸に経済を回すというのかが、私には理解できません。コロナパンデミックを切り抜けた後、私たちの国は経済なんて残っていないほど深刻な状況になっているのではないだろうか?と思わずにはいられません。

いうまでもなく、私は全ての人の命は経済より大切だと思います。そして、2回目の感染者が世界中で確認される中ワクチンが完成すれば解決するというような、楽観的には考えることが出来ない感染症だとも思います。

ただ私が思うのは、コロナという感染症は未知で、常に情報がアップデートされているにも関わらず、「家庭内感染が多いこと、子供の無症状感染者が増えていること、子供の方が大人より感染力が強いこと、学校がクラスターになっていること」などの新しい情報が強調されていないように感じています。

Bibliography:子供が大人よりコロナを密かに広めている新たな証拠

自粛期間中はマスクやトイレットペーパー、アルコール消毒があっという間に売り切れになり、人々の不安はどんどん募り、常に街は騒ついていました。しかし、今は電車や居酒屋、学校が人で溢れかえる中、なぜ「旅行」だけがしにくいままなのでしょうか。

日本では「Go to travel 」なる日本の観光業界だけでなく、日本経済にとって取り組む価値のある政策が打ち出され、その予算は1兆7000億円。観光業界の市場規模は年間20兆円を超えているといわれる中、この予算ではすぐに底が尽きるのでは…?と思ったり、”Go to “じゃなくて「Go travel 」なんだけどな…と思ったり、中抜きや癒着などなど数えればきりがないほどキナ臭い部分もあるのですが、それでも「旅行」すること”だけ”がコロナ感染を拡大させている、というミスリーディングが大きく変わる可能性があるこの政策には期待していました。

ところが、私の期待は打ち砕かれました。

「自分は楽観的だ」と語っていたAirbnb のCEOが最悪のシナリオとして考えていることは「これは18ヶ月続く。更に悪いことに、今が最悪なのか常に分からないことだ。GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazon)バリの体力がないと、レイオフなしにこのパンデミックは乗り切れない」と。「俺たちは現金をとにかくかき集めて、サービス自体を変えるんだ」と話していました。

私たちは、1兆7000億円という現金をかき集めて、今までと同じように旅行することを買いたかったのでしょうか?私は、感染対策しながら旅行できる新しいサービスを1兆7000億円で買うのだ、思っていました。

国民の多くが反対している中「経済で死ぬ命がある」とはっきり言い切った知事もいたので、「Go to travel 」の開始には有無を言わせない雰囲気があったように思います。

そして、1兆7000億円の予算が消化されていく中「旅行」に付いたネガティブなイメージは払拭されないまま、地方が活性化した数字は示されず、けれどそうこう言っている間にも感染は拡大し急増し始めています。

私たちは、1兆7000億円で一体何を手にしたのでしょうか?

ここから先は個人的に思う事で、特定の企業や個人を誹謗中傷することが目的ではなく、また不特定多数の目に付くのを避けるために有料とさせていただきました。

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