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フェンタニル クライシス|鎮痛剤の危機

一昨年アメリカで大問題になっていた鎮痛剤「オピオイド」。中毒性は無く、瞬時に痛みを緩和する薬として、90年代頃からアメリカでは幅広く処方されていました。ところが”中毒性がない”とされていた薬に、かなり高い中毒性があり薬を止められない患者がヘロイン中毒に陥るケースが続出しました。2017年のオピオイド関連の死者はなんと47000人。国が安全だと認めた薬が”麻薬”だったという信じ難い事件が起きていました。

この「オピオイド」を積極的に販売していた製薬会社を巡る裁判が昨年始まり、事態は収まったかのように見えていましたが、昨日付けのニューヨークデイリーニュースでは「フェンタニル」のオーバードーズ(過剰摂取:通称O.D)で26時間以内に10人がオハイオ州で亡くなっていたことを報じていました。

「フェンタニル」はオピオイド系の薬で、通常はコカインとメタンフェタミンを混合して作られています。この薬は、ヘロインの50倍パワフルで、モルヒネの100倍の効果があるそうです。

アメリカ疾病予防管理センターによると、2017年からフェンタニルを含むオピオイド系の化合物の使用による死者は、28000人以上。オピオイドの封じ込めには成功していなかった事実が浮き彫りになり、処方箋があれば安全という考え方は危険だな、と心底思いました。

日本では、ドラッグは一部の特殊な人達(芸能人など)が、誘惑に負けて手を染めてしまうもので、全人口数から考えると大した社会問題ではないように見えてしまいますが、それでも中毒から抜け出せない人がいるのも事実です。また、日本でもモルヒネやフェンタニルなどのオピオイド系ドラッグは、術後の痛みや癌の痛みのケアとして使用されています。

アメリカのドラッグ中毒が深刻な地域では、ドラッグ中毒症状には刑罰ではなく、治療で対処するべきだ、という考え方が広まってきています。「治療できる」という希望を持つことで、O.Dによる死亡件数を減らす取り組みが始まっています。

この考え方が日本にも広まっていくことで、O.Dギリギリの絶望の淵にいる人たちに早くヘルプできる環境が整うといいな、と思うと同時に、自分にはO.Dなんて無関係、という自分の意識なんていうものは、その何十倍もの無意識に包まれていることを改めて考えました。


Bibliography:オハイオの同一地域で26時間以内に、薬のオーバードーズで10人死亡





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