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ヘイトを生み出す心理学

昨年末アメリカで「ユダヤ人を殺してやる!」という欲望に駆られ、怒りを抑えられなくなった白人ナショナリストが、突然拳銃3丁とライフルで武装し11人を殺害した、というヘイトを剥き出しにした痛ましい事件が起こりました。

私は”白人ナショナリスト”という言葉をこの時に初めて知ったのですが、白人至上主義者よりは、マイノリティに危害を加えないというソフトな意味合いがあるのだそうです。しかし、メリーランド大学の心理学研究者は「白人ナショナリストという名称ではあるが、ナチス、白人至上主義集団KKK、イスラム帝国のメンバー達の、ほんの些細な苛立ちを激しい怒りに変えるやり方が同じだ」と警鐘を鳴らしていました。

この心理学研究者は、人が過激派に変化する時、3つの特徴があるとも指摘しています。

1つは、人は価値ある人生を生きたいという欲望があり、”家族を持ったり、仕事をしたり、何らかしの達成”を社会を通じて得ることで、その欲望を満たしているそうです。ところが、過激派と呼ばれる人達は性別、宗教、差別に欲望を満たす重要性を感じるようです。

2つ目は、ナラティブです。ナラティブとは”ストーリー”や”出来事の説明”のことなのですが、”特別な見解や主張を支持する為に、注意深く選ばれた出来事、体験などを繋ぎ合せ、説明するストーリー”の意味合いがあり、アメリカでは聖書や宗教的文書もナラティブと表現します。自分達の尊敬や名誉を維持する為には戦わなければならない。その為なら暴力を許可するという”ナラティブ”を作り、過激派を正当化します。

そして3つ目は1番重要な要素で、ナラティブや暴力を有効化するコミュニティやネットワークがあることです。

先日テキサスのウォルマートで起こった白人によるヒスパニック系の銃殺事件でも、犯人は事前にインフィニティチャンネル、通称8チャンに銃殺予告を書き込んで支持をあおっていました。アメリカでは今、白人が持つべき尊厳や尊敬が、移民によって侵略されている、という歪んだ主張を象徴する事件が多発しています。

私はこの2つの銃乱射事件の記事を読んだ時、その根底にある感情が今の日本にとても似ているな、と思いました。

テレビを見ても、ネットニュースを読んでも、ふと目に入った電車のつり革広告にすら”韓国なんて要らない”という文字を見ることまであり、ヘイトの多さに絶句してしまうことがあります。

日本は清潔で、食べ物は美味しいし安全で平和で、日本に生まれて良かった!と思うことは本当沢山あります。

けれど、私が日本に生まれたのは偶然で、私が何か達成して日本生まれになった訳ではありません。なので、私にはナショナリズムという愛国心はありません。差別や偏見、平等について考えるとき、「あなたの来世が保証されています。ただし、母国も人種も性別も富も階級も選べません。この条件で自分が法や制度を作ってください」と言われたら、アメリカで起きている人種差別や、日本で起きている差別、更にはシリアにいる難民のことも自分の事として考えらるきっかけになるのではないでしょうか。

私たち大人が「自分が何をしても世の中は変わらない」と思わずに、自分自身が出来ることで動いていきたいなと思います。

私たちは無力じゃない。



Bibliography:人が過激派になる心理学

https://www.washingtonpost.com/science/2018/11/01/psychology-how-someone-becomes-radicalized/

 



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