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「息ができない」ブラックコミュニティ、その生命の鼓動

5月26日ミネソタ州、ミネアポリス。手錠を付けられた無抵抗の黒人男性が亡くなりました。彼は1人の警察官の膝によって、地面に顔を押し付けられていました。黒人男性は何度も「I can’t breathe 」「息ができない」と訴えていて、周囲には他に3名警察官がいたにも関わらず、彼は命を落としました。

この事件の一部始終を携帯で記録した市民により、すぐさま動画は全米に拡散されました。

動画が拡散された後、ミネアポリス市長は「事件に関わった4人の警察官を解雇した」と発表。黒人男性犠牲者はジョージ・フロイドだと特定されました。

フロイドが亡くなった翌日、彼の兄弟がCNNのインタビューに応じ「警察官は殺人罪で逮捕されるべきだ」と訴え、その夜からミネアポリスの街は一変しました。

「フロイドは警察官によって殺害されたんだ。なぜ警察官は逮捕されないんだ?!フロイドに公平な裁判を!!」とミネアポリス市民が抗議活動を開始。この活動は、#justiceforgerogefloyd (フロイドに公平な裁判を)というムーブメントとなり、一晩で全米に飛び火しました。

Bibliography:「息ができない」黒人男性が死亡後、ミネアポリスの警察官4人が解雇 

ミネアポリスに次いで、いち早くフロイドの抗議活動に賛同する声を挙げたのはニューヨーク州でした。フロイドが警察官により殺害される瞬間の動画が拡散されるにつれて、ニューヨーカー達の頭には、2014年に起きた痛ましい殺害事件が蘇ったのです。

2014年ニューヨーク。黒人男性エリック・ガーナーが罪を犯していないにも関わらず、警察官に取り押さえられる際に首を締められました。その後ガーナーは、警察の留置所で亡くなりました。ガーナーの事件も、携帯で記録していた市民により拡散されました。そして彼の最後の言葉も「I can’t breathe 」「息ができない」でした。

ガーナー殺害事件後、「I can’t breathe 」という言葉は、アメリカ各地で黒人に対し日々行われる、警察官による違法行為に抗議するスローガンになりました。

だからこそ、ミネアポリスから再び「I can’t breathe 」という声が聞こえてきたとき、ニューヨーカーはミネアポリスの抗議活動を支持するとし、全米でいち早く抗議活動に参加したのです。彼らは忘れていなかった。仲間のニューヨーカーであるエリック・ガーナーが警察官によって殺害されたことを。

震源地ミネアポリスでは、一部の抗議活動参加者が過激化し、暴動や放火、スーパーの略奪を行なっています。ビルが燃え上がる映像や写真は、人の目を引きつける力が強く、どうしても報道がそこにフォーカスされてしまいますが、市民の90%以上はマスクを付けソーシャルディスタンスしながら暴動や暴力を振るうのではなく、人種の壁を越えて手を取り合い#blacklivesmatter #黒人の命も重要だ  という「声を挙げる」抗議活動を行なっています。

私は、日本に住んでいると、どうしても略奪や放火行為を理解するように働く日本メディアの報道が少ないな…と感じてしまうのですが、もちろん、略奪や放火行為が良い行動だとは思いません。 

しかし私は、生まれてから死ぬまで「黒人」であるがために向けられるヘイトや、その溜まりにたまった屈辱や鬱憤を晴らずにはいられない気持ちは、理解するべきだと思うのです。

例えば、現在世界中で猛威を振るっているコロナウィルス。全米で黒人のコロナ感染による死亡率が高いのは、偶然ではありません。人種差別により黒人に貧困層やエッセンシャルワーカーが多いことは、間違いなく原因ではあるのですが、アメリカ疫病センター(通称CDC)が国として国民に義務付けている「マスク着用」に黒人男性は抵抗がある、と「New York Time」は報道しています。

Bibliography:黒人男性にって、マスクは人種による取り締まり差別を招く恐れがある

ブルックリンに住む33歳の黒人男性アレン。彼はフットボールで鍛え上げた約100キロの肉体を持つ男性ですが、「マスクを付けていると不安な気持ちになる」といいます。これはアレンだけでなく、全米の黒人男性が少なからず同意見だそう。

アメリカの長いこれまで歴史の中で、黒人男性がマスクを付けて店に入ると強盗と間違えられたり、運が悪ければ射殺されることもあり、彼らは警察官から「黒人だ」という「人種」により取り締まりを差別されたり、嫌がらせを受けることを懸念しているのです。

更には、CDCがマスク着用を義務付けを行う以前の今年3月、イリノイ州。医療用マスクを着用した黒人男性2人がWalmart(スーパーマーケット)で買い物をしていると、警察官から「マスクを付けていることは、安全性に問題がある」として、店から追い出される事件がありました。男性2人は、自分たちの携帯で警察官の違法な取り締まりを記録。この動画はYouTube で26万回以上再生されています。

つまり、コロナウィルスから身を守る為のマスク着用が、黒人男性にとっては自殺行為になりかねないのです。

こんなに理不尽なことが起きていても「黒人だ」という理由で、公の場で不満をぶちまけたり、苦情を訴えることが許されないのです。どんなに、紳士的に振る舞っても警察官によって、違法に逮捕されたり射殺されるかもしれない…その溜まりたまった恐怖やストレスを理解するべきだ、と私は思います。

今現在も#justiceforgerogefloyd のムーブメントは続いていて、全米各地を巻き込む抗議活動に発展しています。

抗議活動の「I can’t breathe 」とコールする声が、初夏の空に溶けて消えていく動画やニュースを見るたびに、胸が熱くなり、フロイドのことを考えると、なんだか泣けてくるのですが、どうかフロイドたちの死が忘れさられることなく、ブラックコミュニティにって恵ゆたかな素晴らしい未来に繋がることを、願ってやみません。

そして、遠く離れた日本に住む私たちが、この根深い問題を知ることで、不利な立場にある人たちの顔に、ほんの少しの光でも照らすことができれば…と思います。

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