さかなの子 感想

さかなくんの半生を女優のんさんが演じている映画を見ました。アマプラです。放映当時に観にいくか迷って、結局足を運ばなかった思い出があります。
映画が年々値上がりする中、観た先に、失敗することを避ける傾向が強くなっています。
また、配信が普及しているのことから、映画館にいくハードルが上がっているのもあります。

映画は結局、面白かったです。
CGの感じがレプリカのようで、現実に引き戻される感じが残ったので、映画館には行かなかったですが、それで良かったのかもな、とも思いました。

勉強ができなくても、魚に夢中なばかりでも、母親が無性の愛で主人公が大人(大人というのは、成人するだけではなくて映画の中で母が「ちゃんとした仕事なのね」と、人に求められるようになって、それでお金をいただくまで、それを本人も喜びとして受け取っている状態に在ることを大人としました)になるまで、許容している姿がすごいな、と思いました。
父親や、付き合わされている長男の感覚が現実だよな、とも思いました。父親が魚おじさんの家に遊びにいくことを心配でだめだ、というのも気持ちはわかると感じました。

「お母さんに遠慮せんで、ええよ」と母と二人暮らしの主人公が、高校を卒業した後に母元から離れること、それで好きなことをもっと深めるために外に出ていくことを後押ししてくれる言葉です。見放すわけではなくって、けれど支配しようとはしていなくって、距離感の描き方が理想的でした。

思わず、羨ましいな、という気持ちで見てしまいました。
「勉強して立派になりなさい」「社会で感謝される大人になりなさい」と言われることが多かった中で、自分に子供がいたとして、そういう世間や、一般で括られるものの見方ではなくって、この母のような応援ができるのか、素敵だな、と思いました。

それから、さかなくんのことは全然知らなかったのですが、勝手に大学まで出ているどこかの頭のいい人なのだろうな、と思っていたので、そうではなかったことが驚きでした。

インテリが流行したり、大卒が当然のようなものの見方をすることが自分の中でもそういう見方、はっきり言うと偏見があることに気付かされた映画でもありました。

一人別の行動をすることが不安だから大学にいく、やいろんな環境に飛び込んでみて、失敗することを経験することを恐れてばかりで、模索することから向き合わないこと、親の期待に応えること、を程度の割合はあるとしても、素直さをどこかに置いてきてしまったな、と思いました。

また、さまざまな俳優さんが出演されていましたが、演技がエンタメとしてポップさがあって、すごく良かったです。
小学生の時の、木の棒を持って歩く同級生の男の子の演技が自然で上手だな〜と思いました。

ありのまま素直で、だけど嫌な面が小さくて、けれどさかなくんと言われれば、そう思えてしまえることがすごいと思いました。

受け入れられない父と長男は、さかなくんの世界からは心理的にも、距離が離れて描かれます。
そういう見方を提示してくれたことも、良かったです。
悪く言ったりするのではなく、ただ当たり前に遠ざける選択を取ることも、方法の一つなんだな、と思いました。
見方が切り替わる瞬間が体験できると、見える世界が変わるので、そういう瞬間を体験できるように過ごしていこう、と決めて生活しているのですが、さかなの子の映画はそういう切り替えスイッチのようなものが散りばめられていて、それでもってまとまりがあって、いい映画でした。

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