それさく文庫書影

「某には策があり申す 島左近の野望」(ハルキ文庫)はこんな話

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 はい、というわけで、ぼちぼち書店さんの店頭にも並び始める「某には策があり申す 島左近の野望」(ハルキ文庫)です。皆様、用意はいいかな?

 けれど、そもそも本書がどんな話か分からない方もいらっしゃることでしょうから、簡単にお話の紹介ができればと思います。

①主人公は島左近

 当たり前に聞こえるかもしれませんが、これ超大事です。
 島左近というと、戦国時代末期、関ケ原の戦いの際に石田三成の下につき大活躍したとされる猛将で、これまで数々の軍記ものや小説、映画や漫画、ゲームなどでも語られてきた超有名人です。ところが、史料を追ってみると案外実像のつかめない人物でもあります。ある意味それは当然で、彼の前半生は大和の国衆であり、後半生になって(もっといえば関ヶ原の合戦の参戦によって)ようやく歴史上明確な輪郭を表す人物です。もっとも、最近になって佐竹氏の取次を果たしていたらしいという史料も出てきたそうなので、もう少し彼の実像ははっきりしてきたようでありますが、それでも前半生は不明なところが多いという人物です。
 そんな謎の多い人物をこれまでの創作物では「義の人」として理解させてきたのですが、本書はちょっと味付けが異なります。戦国の世にしか生きられぬ「山犬」として描いているのです。実はここが本書最大の売りであり、新規性といえましょう。

②関ケ原の合戦を書いている

 実は本書の半分余りは関ケ原の合戦に費やしています。
 島左近を描くからにはそうせざるを得ないのですが、実はわたし、本作において関ヶ原の新説を一部用いています。
 関ケ原の合戦は実は短時間で終わり、小早川秀秋の裏切りは合戦開始とほぼ同時であったという学説が提出されています。もちろんわたしは作家なのでこの説の真偽についてものを申し上げることができる立場ではありませんが、面白いものを模索する作家としては「実に面白い!」となったわけです。とはいえ、本作において必要な面白さを追求するためにこの説にすべて乗っかるわけにはいかず、従来説と新説の間を取ったというのが正直なところです。でも、関ケ原の戦いのお約束でもある徳川家康による「問鉄砲」などは採用してません。

③他作品とのつながりがある

 実は本書、「曽呂利」(実業之日本社文庫)と「三人孫市」(中央公論新社・現在文庫作業中)と同一世界線で、三作が三作を補完しあう関係になっています。もちろん、各小説はお互いに独立したお話ですが、他の作品に目を通していただけると猶のこと世界が広がると思います。

④新装画・解説もついてるよ

 今回、文庫化に当たり装画も変更となりました。
 お願いしたのはここのところ歴史小説の装画でも着実にご活躍の手を伸ばされているagoera先生。お忙しい中ご快諾いただき誠にありがとうございました。島左近と石田三成の並びが印象的な一冊となりました。
 また、解説は評論家の細谷正充先生。なんと、「小説家になろう」にいたというわたしの経歴にまで触れてくださっております。何より、最初の一文にわたしは思わず噴いてしまいました。このネタをぶっこんで来られるとは……(ニコ動世代なので非常にうれしいです)。

 といった売りがたくさんある文庫版「某には策があり申す 島左近の野望」、何卒よろしくお願い申し上げます!

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